M&A
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2020/12/24

法務DD・財務DDは「専門家」が実施、ビジネスDDは「未経験者」が実施するのはなぜ?

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法務DD・財務DDは「専門家」が実施、ビジネスDDは「未経験者」が実施するのはなぜ?
 M&AでビジネスDDが近年重要視されています。  理由は、買収後に想定外の問題が発生し、M&Aで多くの買い手企業が満足していないからです。  その原因は、ビジネスDDが未実施、あるいは低品質であることが大きな要因のためです。  M&Aでのデューデリジェンス(以下,DD)は、主に法務DD、財務DDの他、ビジネスDDがあります。  「法務DD」は、法的権利の有効性の評価や、係争事件の有無、偶発債務等の潜在的法務リスクの有無のチェックを行うことですが、これは弁護士が実施します。  「財務DD」は、売掛金や在庫、土地・建物等の資産を再評価し、簿価ベースの決算書を実態ベースに修正し、潜在的な財務リスクの有無のチェックを行うことで、会計士・税理士が行います。  このように法務DDや財務DDは各々の「専門家」が実施しているのです。  一方で「ビジネスDD」というのは、事業の「中身」をチェックするものです。具体的には、経営や組織、営業・販売や製造など、各機能で問題がないか、強みがどこにあるかを確認し、事業面のリスクや成長の可能性を探ります。  ただしビジネスDDは、他のDDのように経営の専門家が実施している訳ではありません。  ほとんどのケースで実施されていないのが現状で、実施されていても、経営やビジネスDDのノウハウを持っていない未経験者(買い手側の一般社員など)が行っています。  そのため、ビジネスDDを実施したところで、事業の個々の問題が未抽出で、買収後のPMIで事業の中身のリスクを回避できていません。  また、会社の強みも曖昧なため、PMIで成長戦略を打ち出すことも難しい状況です。  つまり、売手企業の事業の中身(業務内容の詳細な現状・問題点・強み)を理解せずに購入しているのです。  そのため、買収後に様々な問題が発覚したり、シナジー効果が発揮できない状況が起きてしまうのです。  私たちは、普段買物をする時に「中身」を理解した上で購入します。  例えばプライベートでは、日用品や文具では使い勝手などの機能性、衣服ではデザインや色合い、そして試着をして着心地などを確認します。  また、家電などの電子機器では、その機能性や操作性、大きさやデザインなどについて検討します。  さらに、住宅などの高価なものは、自身や家族の生活スタイルや、将来設計まで踏まえて検討します。  ビジネスでも同様で、部品や材料、商品の仕入についても、様々な選択肢から中身を吟味して決定しています。  このように、プライベートでもビジネスでも、中身を吟味して購入の是非を決定するのは当然のことなのであり、中身をよく理解せずに購入することは通常あり得ません。  しかしM&Aの世界では、日常生活で当然に行っていることを実施できていません。  法務DDや財務DDという、法的リスクや財務・税務的リスクを回避するための調査を行っていながら、肝心な事業の「中身」のリスクの調査を実施していないのです。  企業というのは、同じ業種で同種の製品を作っていても、経営や業務の中身はまったく異なります。  例えば、経営や組織体制、戦略や戦術、管理体制、業務フロー、社員のスキル、商品自体の特徴も、各企業によってそれぞれ違っています。  特に中小企業は、体制やしくみが曖昧で、個々の業務や作業が属人的になる傾向があります。  そのため、同種の製品でも事業の中身は異なり、様々な問題を抱えるケースが多いのが現状です。  さらにそれらの問題は顕在化していないため、社長や社員でさえも自社の問題点を理解していないケースが多いのです。  したがって、ビジネスDDで、専門家が各機能や各業務についてしっかりと問題点を抽出しておかなければ、買収後のPMIもうまく実施できません。  また、売り手企業を、統合せず引き続き単独で事業を運営する場合でも、新社長は業務の中身を詳細に理解できないため、社員との信頼関係が構築できず、うまくコントロールができないのです。  このように、買収後に効果を上げるためには、売り手企業の個別の現状を把握し、問題点や強みを洗い出した上で、それらを踏まえて新たに経営を実施していくことが重要なのです。
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