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株式交換とは?メリット・デメリットや種類・手続きについてわかりやすく解説!

2023年03月03日

株式交換はM&Aの手法の1つで、売り手企業の全株式と買い手企業の株式などを交換することで親会社・子会社の関係を作り出すことを指します。株式交換は仕組みや進め方が複雑なため、しっかりと内容を認識した上で進めることが大切です。

まだ株式交換についてきちんと知らないという方に向けて基本的な考え方から順を追って詳しく説明します。また、実際の株式交換で行われる手続き、メリットとデメリット、過去の事例についても解説します。

 

株式交換とは

そもそも株式交換とはどのようなもので、どのような流れで行うのでしょうか。
ここでは、株式交換や三角株式交換の仕組み、簡易株式交換と略式株式交換の違い、混同しやすい株式譲渡や株式移転との違い、さらに新株予約権の扱いや親会社株式の割当などについて解説します。まずは、株式交換の基本について理解しましょう。

 

株式交換の仕組み

株式交換では、売り手企業(ここではA社)と買い手企業(ここではB社)が存在します。株式交換が行われると、B社はA社の株式を買い取ってA社の株主となるとともに、A社も対価としてB社の株式を一部取得します。この時、B社はA社の株式を全て取得するため、B社はA社に対する100%の支配権を持つことになります。売り手企業は株式を売却して子会社化されるだけではなく、買い手企業の株式の一部を得られることが一般的な企業買収と異なる部分です。

 

三角株式交換の仕組み

三角株式交換とは、売り手側の対価となる株式を買い手企業の株式ではなく、買い手企業の親会社のものとする手法です。

例えば、買い手企業の親会社に「Cホールディングス」という会社がある場合、「Cホールディングス」の株式を対価とするのが三角株式交換です。買い手と売り手に加えて、買い手の親会社が当事者に加わり三角の関係になるため、三角株式交換と呼ぶのです。

三角株式交換は以下の流れで行います。

・買い手企業が売り手企業の株式を買い取る

・買い手企業は自社の親会社の株式を買収の対価として譲渡する

・売り手企業は買い手企業の親会社株主になる

 

簡易株式交換と略式株式交換に分けられる

株式交換は、企業グループの再編を通して組織全体の経営効率を上げる目的で行われることが多いです。ここでは、簡易株式交換と略式株式交換の2パターンについて解説していきます。

まずは簡易株式交換についてです。

通常の株式交換では、買い手企業と売り手企業双方の株主関係が変化するため、株主総会の特別決議が必要です。しかし、売り手企業が対価として受け取る株式が、買い手企業の純資産の5分の1を下回る場合、株主総会の決議を省略することができます

しかし、以下の条件に該当する場合は簡易株式交換は適用されず、株主総会の決議が必要です。簡易株式交換に該当しないケースは以下の通りです。

・対象となる株式に譲渡制限がかかっている場合

・株式交換によって差損が生じる場合

・発行済株式の6分の1より多数の株主が株式交換に反対する場合

 

一方、略式株式交換とは、一定の条件に合致する場合は簡易的に株式交換を実施できる仕組みです。具体的には、株主総会での決議を省略して手続きを進めることができます。一定の条件とは、「買い手企業と売り手企業に親会社と子会社の関係が存在すること」、「買い手企業が子会社の株式の90%以上を保有していること」です。ただし例外もあり、株式交換対象の株式が譲渡制限株式である場合では、株主総会の決議を得る必要があります。

 

株式交換と株式譲渡の違い

株式交換と株式譲渡は似ている言葉ですが、目的や現金支出の有無に違いがあります。

株式交換の目的は、売り手を完全に子会社化することです。一方、株式譲渡では、経営権の移転を前提としているものの、必ずしも子会社化するとは限りません。

また、株式交換では、売り手が保有する株式会社を買い手に譲渡し、その対価として買い手が自社株の一部を提供します。一方、株式譲渡では、買い手は対価として現金を支払います。このように、現金支出の有無も異なる点が特徴です。

株式交換と株式移転の違い

株式交換と似た仕組みに株式移転があります。株式交換では既存の会社間で株式が交換されるのに対し、株式移転は新たに設立された会社が売り手企業の株式を買い取ります。売り手企業は買い手企業の株式ではなく、新設会社の株式を得ます。この結果、売り手企業は新設された会社の完全子会社となります。株式移転は持株会社(グループ企業を束ねる統括会社)を設立することを目的として活用されるケースが多いです。

 

売り手企業が発行している新株予約権の扱い

株式交換によって買い手企業の完全子会社となると、売り手企業が発行している新株予約権はどうなるのでしょうか。株式交換後の新株予約権の扱いには、2つの選択肢があります。

1つめは、買い手企業が買い取ることです。買い手企業がそのまま新株予約権を引き継いでしまうと、新株予約権を行使した際に、親子関係が崩れてしまいます。それを防ぐために、買い手企業が公正な価格で買い取るケースが多いです。

2つめは、新株予約権(ストックオプション)を消滅させ、新株予約権買取請求権を行使することです。新株予約権買取請求権とは、新株予約権の発行会社に対して、保有する新株予約権を公正な価格で買い取ることを請求できる権利のことを指します。

ストックオプションを消滅させるだけでは、保有者が不利益を被ってしまいます。新株予約権買取請求権を行使することで、保有者に利益をもたらしつつ、買い手は親子関係を維持することが可能です。

 

子会社の自己株式への親会社株式の割当

株式交換では、一般的には子会社(売り手)の自己株式が消滅します。自己株式も、株式交換の対象に含まれるためです。これを自己株式の消却と呼び、自己株式を外部に放出して金銭の払い込みを受けるのではなく、内部で消滅させます。

自己株式の消却では、当事者は子会社です。株式交換契約書に株式を消却する旨を記載し、双方の合意のうえで、消却を行います。

 

 

株式交換の手続き

ここまで株式交換の仕組みや種類について紹介してきました。

株式交換にあたって必要な手続きは、以下のとおりです。

 

【株式交換の流れ】

1. 当事者間での基本合意

2. 取締役会での決議・株式交換契約の締結

3. 適時開示(上場企業のみ必要)

4. 公正取引委員会への事前届出(一定の場合に必要)

5. 金融商品取引法上の手続き(一定の場合に必要)

6. 事前開示書類の作成・備置

7. 株主や債権者への対応

8. 株主交換の効力発生・変更登記

9. 事後開示書類の作成・備置

10. 株式交換無効の訴えへの対応

 

ここでは、それぞれの手続きについて詳しく解説します。

当事者間での基本合意

株式交換の大前提は、買い手と売り手の両当事者で合意ができていることです。そのため、まずは両者で経営統合に向けた意思確認を行います。また、対価となる株式を売り手企業に対してどれだけ交付するのかを決定します。

 

取締役会での決議・株式交換契約の締結

株式交換を行うには、売却側と買収側の双方が取締役会会議を開いて合意したうえで、株式交換契約を締結することが必要です。契約には、双方の商号と所在地、対価の種類・算定方法・割り当て方、株式交換の効力発生日が記載されていなければなりません。

 

適時開示(上場企業のみ必要)

株式交換は会社の組織体系を大きく変えるイベントです。そのため、上場企業では株主としての投資家判断に影響を与える組織再編行為とみなされます。そのため、上場企業では取締役会で決定した時点で、適時開示する必要があります。

 

公正取引委員会への事前届出(一定の場合に必要)

株式取得、株式交換、株式移転のいずれかにより企業買収を行う際には、独占禁止法に基づき公正取引委員会に事前届け出を行い、審査を受けるケースがあります。下記に示している独占禁止法第10条の条件を売り手と買い手が満たしている場合は、審査を受けます。

 

(1)買い手の属している企業結合集団(親会社とその子会社から成る集団)の国内売上高の合計額が200億円を超える場合

(2)売り手企業及びその子会社の国内売上高の合計額が50億円を超える場合

 

金融商品取引法上の手続き(一定の場合に必要)

金融商品取引法は株式の発行や交付に関して一定の条件において詳細を開示する義務を定めています。例えば、子会社の株主が多数存在する場合は開示義務の要件に該当します。この時、財務局に対して有価証券届出書の提出が必要です。

 

事前開示書類の作成・備置

株式交換契約を結ぶためには、株主総会での決議、債権者保護手続等の対応が必要になります。そのためには、株式交換契約の内容や契約条件、相手企業の定款や財務状況をわかりやすく示した資料を作成し、株主や債権者の理解を得ることが必要です。株主交換では会社に関わる利害関係者から同意を得る必要があるため、彼らが株主交換の是非を判断するための情報を提供しなければなりません。

 

株主や債権者への対応

株式交換では、自社の関係者のみならず株主や債権者も合意した上で手続きを進めることが重要です。ここでは、株主や債権者への具体的な内容について解説します。

 

株券・新株予約権証券提出に関する公告(売り手企業が発行している場合に必要)

売り手企業が株券を発行している場合、保有者に株券を提出してもらうため、公告を行う必要があります。新株予約権が証券として発行されており、株式交換によって買い手に引き継がれる場合も同様です。

株券・新株予約権証券を提出しなかった者に対して、買い手は対価の交付を原則拒否できるため、公告・通知する必要があります。

公告は、売り手企業が実施し、株式交換の効力発生予定日より1ヶ月以上前に行わなければなりません。

 

株主総会の開催と承認

株主に対しては、株式総会の特別決議で株式交換の是非について説明し、承認を得る必要があります。株式交換は会社の組織運営に関わる重要なテーマなので、株主総会において株主の意向を確認する必要があるのです。ただし、前述のとおり簡易株式交換や略式株式交換に該当する場合は株主総会の開催を省略することができます。

 

反対株主の買取請求への対応

株式交換に同意しない株主は、売り手・買い手を問わず株式の買取を請求できます。これを株式買取請求権と呼びます。株式買取には期限があり、株式交換の効力発生日20日前からその1日前までです。請求が成立した場合は、効力発生後60日以内に定められた価格で株式を買い取らなければなりません。

 

新株予約権買取請求への対応(売り手企業のみ、一定の場合に必要)

株式交換で、売り手の新株予約権者に対して、買い手の新株予約権を交付する場合、一定のケースでは当該新株予約権者に新株予約権買取請求が認められています。

該当するのは、売り手が新株予約権を発行する際に株式交換実施時の措置について定めていなかった場合や、発行時に定めた条件と別の条件で措置を講じる場合です。

新株予約権買取請求では、売り手に対して、所有する新株予約権を適正な価格で買い取るよう請求できます。

新株予約権買取請求に関する手続きは、反対株主株式買取請求と同様です。買取請求の機会を与えるために、売り手は新株予約権者に株式交換を実施する旨を、株式交換効力発生日の20日前までに、公告・通知する必要があります。そして、株式交換の効力が発生する日の20日前から前日までの間、新株予約権者は買取を請求できます。

なお、新株予約権付社債の場合は、社債の買取も合わせて請求しなければなりません。

 

株式交換差止請求への対応

株式交換が法令や定款に違反している、あるいは株主が不当に不利益を被ると考えられる場合、株主は株式交換をストップするよう、株式を保有している企業に請求できます。

差止請求が認められるケースは、具体的に以下のとおりです。

 

  • 株式交換の契約内容が違法である
  • 備置書類が備置されていない・不実記載がみられる
  • 株式交換契約承認決議に瑕疵がみられる
  • 株式・新株予約権買取請求が不履行
  • 債権者異議手続が不履行
  • 簡易株式交換・略式株式交換の要件を満たしていない
  • 対価の算出方法や金額、割り当て方法などが著しく不当であると考えられる

 

ただし、簡易株式交換の場合、買い手企業の株主に差止請求権は認められていないため、注意が必要です。

差止請求を行った株主は、請求先の企業と争うことになります。会社を債務者とし、株式交換差止請求権を被保全権利とする仮処分が行われる仕組みです。

 

株式交換の効力発生・変更登記

契約書に記載された効力発生日を経て株式交換が完了すると、売り手企業の株式は買い手企業に移転します。一方で、売り手企業は株式交換の対価として買い手企業の株式を受け取ります。買い手企業においては、株主移転を通して発行済株式総数、資本金、新株予約権の数などの変更が生じるため、変更登記が必要です。

 

事後開示書類の作成・備置

株式交換が成立した後は、売り手企業と買い手企業の共同で株式移転に関する事後開示書類を作成し、利害関係者に提示する必要があります。開示内容には以下の項目が含まれていなければなりません。

事後開示書類への記載内容は以下のとおりです。

 

  • 買い手企業が取得した売り手企業の株式数
  • 株式交換の効力発生日
  • 各種手続きの経過(債権者保護手続、反対株主株式買取請求手続、新株予約権買取請求手続、株式交換差止請求手続)

 

株式交換無効の訴えへの対応

株式交換の手続きや内容に疑義がある場合は、株式交換を無効とする訴えを起こすことが可能です。ただし、訴えを起こすことができるのは、株式交換の当時会社の社員、株主、反対した債権者などに限られます。また、訴えを提起できる期間も株式交換の効力発生日から6か月以内とされています。

 

株式交換のメリット

まずは、株式交換のメリットについて解説します。

 

  • 買収資金を必要としない
  • スムーズな経営統合を行うことができる
  • 少数株主を強制的に排除できる
  • 売り手側が買い手側の株式(議決権)を得ることができる

 

以下では、それぞれのメリットについて解説します。

買収資金を必要としない

通常の企業買収では、買い手企業は多額の資金を用意して買収に臨む必要があります。しかし、株式交換では、買収の対価として自社の株式を譲渡するため資金面での負担がありません。そのため、通常の企業買収に比べてコストがかからないというメリットがあるでしょう。また、買収資金の確保のために借入をする必要がないため、財務面での安定性が保たれることも利点です。

 

スムーズな経営統合を行うことができる

株式交換では売り手企業の法人格を残しつつ、子会社化するため早急な組織再編を避けることができます。

例えば、買収した会社が独自性の強い技術を持っていたとしても、企業風土が大幅に変わったことにより技術者が退職してしまっては本末転倒です。株式交換のスキームを採用することで、買収される側の企業としては既存の組織体系を大きく変えず、従来の持ち味を生かしたまま経営統合を進めることができます。

 

少数株主を強制的に排除できる

株式交換は株主総会での特別決議承認を経ることで進められますので、一部の株主が反対したとしても、強制的に手続きを進めることができます。また、反対した株主からの株式買取請求に応じれば、最終的にはすべての株式が買収側の企業に移ります。一方、株式譲渡では、手続きを進めるために株主全員の賛成が必要であり、場合によっては反対者を排除するための手続き(スクイーズアウト)をとる必要が出てくるためスムーズに進められない可能性があります。

 

売り手側が買い手側の株式(議決権)を得ることができる

通常の企業買収では、売り手企業は完全に買い手企業の管理下になるため、明確な上下関係ができます。しかし、株式交換では売り手企業も買い手企業の一部株式を保持するため、一定程度は親会社の経営に関与することが可能です。株式交換によって、親会社と子会社の双方がよい形で影響を与えあうことができれば、株式を相互で保持することのメリットが生まれるでしょう。

 

株式交換のデメリット

株式交換を検討している場合にはデメリットについても知ったうえで進めるようにしましょう。

株式交換のデメリットは、以下のとおりです。

 

    • 1株あたりの利益が減少し、株価が下落するリスクがある
    • 買い手企業の株主構成が変わる
    • M&Aの手続きが複雑になる可能性がある
    • 不要な資産や簿外債務を引き継ぐ

ここでは、株式交換のデメリットについて解説していきます。

 

1株あたりの利益が減少し、株価が下落するリスクがある

新株を発行して株式交換を行う場合、各株主の持分比率が下がります。さらに、株主総会での影響力が下がる、配当金が減額されるなど既存株主にとっては好ましくない影響が出るでしょう。上場企業の場合は、株主にとっての悪影響が嫌気され株価が値下がりすることも懸念されます。

しかし、配当金の増額やM&Aのシナジー効果が見込まれる場合は、株価の値下がり原因とならない可能性もあります。

 

買い手企業の株主構成が変わる

株式交換によって売り手企業が買い手企業の株主となるため、既存の株主構成が変動します。従来の株主であれば、株主総会で賛成が得られた事項であっても、新たな株主が加わることで一筋縄にはいかなくなる可能性があります。場合によっては、株主構成の変化が買い手企業の経営陣や株主に悪影響を与える可能性があります

 

M&Aの手続きが複雑になる可能性がある

株式交換では会社法によって定められた多数の手続きを行う必要があるため、株式譲渡に比べて繁雑なプロセスとなる可能性が高いです。特に、簡易株式交換や略式株式交換に該当しない場合は、株主総会での合意形成に手間がかかるケースもあります。また、株式交換を進める手続きそのものが煩雑であるため、契約締結から完了まで手間と時間がかかることも株式交換の難点といえるでしょう。

 

不要な資産や簿外債務を引き継ぐ

株式交換では売り手企業の完全子会社化するため、買い手企業にとって不要な資産や債務も引き継ぐことになります。いくらシナジー効果が期待できる企業であっても、債務まで引き継いでしまうことで、自社の財務状況を悪化させてしまっては本末転倒です。株式交換には一定のリスクがあるため実施にあたっては慎重な判断が求められるでしょう。

 

希薄化の可能性がある

株式交換で売り手の株主に株式を交付する際、買い手が新株を発行して対価とする場合は、希薄化のリスクがあります。新株発行に伴い買い手の発行済み株式総数が増加する結果、1株あたりの株式の価値が下がってしまうためです。

株式の希薄化により、株主1人あたりの持分比率が下がり、株主総会での発言力や、配当金が減少してしまう可能性はあります。特に買い手が上場企業である場合は、希薄化によって評価が下がり、株価が下落してしまうリスクもあるため、希薄化はデメリットです。

 

 

株式交換における株式の扱いに関する注意点

株式交換のメリットとデメリットについて紹介してきましたが、株式の扱いに関してはどのような点に注意して行う必要があるのでしょうか。ここでは株式交換における株式の扱いに関してのいくつか注意点を紹介していきます。

 

株式交換比率に関する注意点

株主交換では株式交換比率に注意が必要です。これは売り手側の保有株1株に対して、買い手側の株式を何株交付するのかを表します。株式交換では金銭を伴わない分、株式交換比率が買収金額に相当する重要な要素となります。この比率を正しく決めるためには、両者の企業価値を公正かつ正確に評価する必要があり、特に上場企業の場合は、株式変換契約を公表してから完了するまでの間に株価に動きがあるでしょう。その場合は、株価の値動きが株式交換比率に影響を及ぼす可能性があるので注意が必要です。

 

売り手企業が取得した買い手企業の株式の扱い

実際に株式交換で買い取られた株式はどのような扱いになるのでしょうか。

ここで鍵となるのが、会社法第135条第1項[44]です。この条文では子会社が親会社の株式を取得することを禁じています。しかし、株式交換の手続きでは子会社による親会社の株式取得が例外的に認められています。(同条第2項第5号、会社法施行規則第23条[45])

ただし、親会社の株式を取得した場合には「相当の時期に」処分することが求められており、株式交換の場合も例外ではありません。(会社法第135条第3項[44])明確な期限はないものの、可能な限り速やかに処分する必要があります。事前に取締役会で自己株式を処理することを決定し、相当の時期を経過する前に対応することも1つの選択肢です。

 

親会社株式の保有期間

子会社が親会社の株式を取得することは、原則として禁止されています。親会社株式の保有を自由に認めてしまうと、会社の財産を確保するうえでの問題の発生や、相場操縦や反対派株主から株式を取得された場合、取締役の会社支配の維持といった弊害が考えられるためです。

しかし、親会社株式の保有については、会社法で例外事由が定められています。そのため、子会社が親会社株式を取得・保有することは、不可能ではありません。ただし、例外事由によって子会社が親会社株式を取得した場合は、相当の時期に親会社株式を処分する必要があります。

 

所有株式が単元未満になる可能性

株式交換によって、所有株式が単元未満になってしまう可能性があります。株式交換比率では、端数が生じてしまうケースが多いためです。定款で規定されている最低売買単位を下回る株式のことを、単元未満株といいます。

単元未満株は、切り捨てられません。交換比率どおりに、正しく株式交換を行えなくなるためです。そのため、単元未満株が発生する場合は、端数分を現金化して株主に払い戻したり、買い取ったりする必要があります。

 

株式交換の税務上の留意点

株式交換においては、税務手続き上の観点でも留意すべき点があります。株式交換における法人税や所得税を計算するには、対象となる株式交換を適格株式交換と非適格株式交換の2種類に分けて税務処理を行わなければなりません。適格と非適格の区別には親会社による支配関係、株式以外の対価の有無、従業員の継続雇用などの厳密な要件が定められています。親会社の子会社に対する支配率が低ければ、適格要件はより厳しくなる傾向にあります。それぞれ詳しくみていきましょう。

 

非適格株式交換での課税

税務会計において株式交換は以下のような取引であるとみなされます。

 

①売り手企業の株主から買い手企業に保有株式を譲渡した見返りに、買い手企業の株式という財産を新たに取得する。

②売り手企業から買い手企業へ直接的に資産が移転することはないものの、買い手企業は間接的に売り手企業の資産を所有することになる。

 

まず、①の中で株式の譲渡によって発生した利益と損失(譲渡損益)は原則として課税計算の対象となります。また、株式交換は吸収合併と類似した組織再編行為と見なされ、資産の時価から簿価を差し引いた金額は譲渡損益とみなされ、課税対象となることに注意が必要です。実際に課税対象になるかどうかは、適格株式交換か非適格株式交換かで変わります。非適格株式交換では、買収された子会社とその株主に課税されることがあります。

 

適格株式交換での課税

適格要件を満たした株式交換では、親会社及び子会社の法人税、子会社の旧株主に対して所得税は課税されません。ただし、適格要件を満たしていたとしても子会社の株主が株式交換に反対した結果、スクイーズアウトによって株式が現金化された場合は例外です。この場合は、現金化された株式の価値と時価との差額が株式譲渡益となり、課税対象となります。

 

株式交換の事例

ここまで株式交換のスキームや留意点について紹介してきました。
ここでは
実際に株式交換が行われ、シナジー効果が生まれた事例を5つ紹介します。

 

  • ヒューリック株式会社と日本ビューホテル株式会社の事例
  • トヨタ自動車株式会社とダイハツ工業株式会社の事例
  • 株式会社ユーグレナと株式会社エポラの事例
  • 日本電産株式会社と日本電産エレシス株式会社の事例
  • 三菱ケミカルHDグループ傘下企業間の事例

 

ヒューリック株式会社と日本ビューホテル株式会社の事例

1つ目に紹介するのは、不動産賃貸業を運営するヒューリックと日本ビューホテルの事例です。

これは日本ビューホテルを完全子会社とする取引で、ヒューリックは簡易株式交換の方式で手続きを進めました。これにより、ヒューリックは従来の不動産賃貸による収益に加えて、日本ビューホテルが持つホテル運営事業の収益を取り込むことができました。

一方で、日本ビューホテルグループはヒューリックの不動産ネットワークを活用したホテルの展開を加速し、日本有数のホテルチェーンとしての地位確立を目指す狙いがあります。まさに、不動産賃貸とホテルという2つの領域のシナジー効果が発揮された事例といえるでしょう。

 

トヨタ自動車株式会社とダイハツ工業株式会社の事例

2つ目に紹介するのは日本を代表する自動車メーカーであるトヨタ自動車の事例です。

トヨタ自動車は、子会社であるダイハツ工業との間で2016年8月に簡易株式交換による株式交換を実施しました。

トヨタ自動車としては、グローバルで成長する小型車領域において、ダイハツ工業が得意とするコストパフォーマンスの高いクルマづくりの技術とノウハウを最大限に発揮する狙いがあります。一方で子会社となったダイハツ工業にとっても、トヨタ自動車がダイハツ工業の親会社となることで、両社の連携をさらに密なものとなりました。

ダイハツ工業はトヨタグループの一員として、一貫したグローバル戦略の展開を目指しています。競争の激しい自動車業界において、普通車と小型車の領域でシナジーが生まれた事例だといえるでしょう。

 

株式会社ユーグレナと株式会社エポラの事例

3つ目は、株式会社ユーグレナと株式会社エポラの事例です。2015年6月、ユーグレナ(ミドリムシ)を中心とするバイオ事業を手がけるユーグレナは、機能性食品の販売事業を展開するエポラを完全子会社とする株式交換の実施を決定しました。株式交換の効力発生日は9月1日です。

エポラは、ユーグレナ商品の主要なOEM供給先でした。子会社化によって、両社の連携によるブランド価値の向上や、物流・システムの統合によるコスト削減、ノウハウの共有などのメリットが実現した事例です。

 

日本電産株式会社と日本電産エレシス株式会社の事例

4つ目は、日本電産株式会社と日本電産エレシス株式会社の事例です。日本電産と日本電産エレシスは、2019年12月に日本電産エレシスを、完全子会社化する株式交換契約を締結しました。

両社のシナジー強化を目的とした、株式交換です。特に、グループで重要視されている、トラクションモーター事業の開発を促進することを大きな目的としています。株式交換により、グループ全体で企業価値を向上させる取り組みを推進しやすくなりました。

 

三菱ケミカルHDグループ傘下企業間の事例

最後は、三菱ケミカルホールディングスグループ傘下企業間で、株式交換が行われた事例です。株式会社三菱ケミカルホールディングスの完全子会社である三菱化学株式会社は、同社の連結子会社である三菱化学メディエンス株式会社を、完全子会社とするための株式交換を実施しました。株式交換の効力発生日は、2014年9月1日です。

少々複雑ですが、三菱ケミカルホールディングスの株式を対価とする、三角株式交換方式によって実施されました。

三菱ケミカルホールディングスは、ヘルスケア関連事業の基盤を強化するため、ヘルスケア新社を新設しました。メディエンスをヘルスケア新社に移管し、その傘下にヘルスケア関連事業を集約させることを目的に株式交換が実施された事例です。

 

 

まとめ.

株式交換は複雑ですが、一般的な企業買収に比べて資金面の負担が少ないなどのメリットがあるため、M&Aに関わる方は知っておきたい仕組みです。一方で、手続きが複雑になることが多く、株主の合意が必要なため、株式交換のハードルは高いといえるでしょう。

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