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M&A戦略とは?具体的な策定方法や戦略構築に役立つフレームワークを紹介

2022年11月28日

かつては、よくないイメージを抱かれることも多かったM&Aですが、近年は、企業が中長期的な目標を達成するための手段として、多く利用されることになってきました。しかしM&Aを成功させるためには、当然しっかりとした戦略が必要です。

M&A戦略の必要性と、実際の戦略策定の流れ、戦略構築に役立つフレームワークなどについて解説します。

 

 

 

M&Aとは?意味を簡単におさらい

そもそもM&Aとは、“Mergers and Acquisitions”の略です。日本語では「合併と買収」と呼ばれます。合併は、複数の会社が1つになることであり、買収は、ある会社がほかの会社を買うことです。

つまり、M&Aとは企業や事業のすべてあるいは一部が移転する取引のことであり、一般的には会社や経営権の取得を指します。業務提携や資本提携などの提携を、広い意味でのM&Aに含めることもあります。

 

M&Aを行う目的

M&Aにはさまざまなパターンがあります。同業種の事業を買収する場合、関連事業を営む会社を買収する場合、新規事業を買収する場合などです。それぞれ目的が異なります。また、売却側にとってもM&Aを実行する目的があるのです。

ここでは、買収側と売却側それぞれがM&Aを行う目的について解説します。

 

買収側|M&Aの目的

まずは、M&Aの買い手側の目的を考えてみましょう。

買い手側は、成長戦略としてM&Aを検討するケースが多くみられます。自社内部の経営資源のみを用いて目的を達成するよりも、他社の力を利用した方が、最短ルートで成功することができるためです。こういった買い手側の思惑を意識した売り手側の事業戦略も、イグジット戦略においては重要です。

 

「同業種の事業」を買収する目的

同業種の事業を買収する目的は、大きく以下の3つです。

◇事業拡大戦略のため

◇エリア拡大戦略のため

◇ロールアップ戦略のため

 

事業拡大戦略とは、その名の通り事業の拡大を目指したM&Aです。たとえば、事業規模が大きくなると規模の経済によりコストを削減することができ、より安価な製品やサービスを提供できるようになるため、競争力の向上を狙うことができます。このように、同業他社を買収することで自社事業の成長を目指す戦略です。

エリア拡大戦略とは、ある地域で事業を行っている会社がほかの地域へと進出したいと考えたときに、すでにその対象地域で事業活動を行っている会社を買収することで目的の達成を目指す戦略です。既存の会社を買収することで、他地域に展開してゼロから信頼を得て顧客を獲得するよりも、スピーディーに事業を軌道に乗せることができます。

ロールアップ戦略とは、同じ業種の小規模な会社を複数社買収して市場シェア拡大を目指す手法です。それぞれの会社の特徴や既存顧客の違いなどを生かして、より幅広い市場のシェアを握り、急成長を目指すことのできる戦略です。

 

「関連事業を営む会社」を買収する目的

関連事業を営む会社を買収する目的は、大きく以下の2つです。

◇サプライチェーン拡大戦略のため

◇ラインナップ拡充戦略のため

 

サプライチェーン拡大戦略として、関連事業を営む会社を買収するケースもあります。商流の川上から川下までを自社で請け負うことで事業の効率化をはかり、競争力を高めることができます。

また、近年ではサプライチェーンにおいて人権や環境に配慮しているかどうかが投資家や消費者から注目され、管理が行き届いていなければ批判にさらされるリスクが生じるようになってきました。そうしたリスクを減らすという目的でも、関連事業を買収して自社内に組み込むという考え方は理にかなっています。

ラインアップ拡充戦略とは、自社と似た業種ではあるものの価格帯や機能、ターゲット層などが異なる企業を買収することで、自社の製品やサービスの幅を広げる方法です。既存の市場における成長が頭打ちの場合などに新規ターゲットを開拓したり、今までのサービスとかけ合わせて新たな市場を獲得したりして、ブランド力の向上を狙うこともできます。

 

「新規事業」を買収する目的

M&Aには、今まで営んでいた事業とはまったく異なる分野の会社を買収するケースもあります。

たとえば、将来的に成長を見込むことができる新たなビジネスのアイデアを思いついたとします。アイデアを実現するための方法は、そのビジネスをゼロから形にするという方法だけではありません。すでにその分野で事業を行っている会社を買収することで。スムーズにスタートを切ることができます。新規参入よりも効率的で、コストが少なくて済むためです。

既存の事業に将来性が見込めず、成長の鈍化を打ち破るきっかけとして新規事業への参入を検討する場合もあるでしょう。事業のポートフォリオを転換し、より将来性のある分野に経営資源を注いで会社を成長させる戦略です。

また、既存の事業を続けながらも事業の多角化を目指して収益の柱を増やす戦略をとる場合もあります。このようなケースでも、新規事業の買収で目的を達成することができる可能性があるのです。

 

 

売却側|M&Aの目的

買い手側企業が自社の都合だけでM&Aを進めると、売り手企業から反発を受ける可能性も出てきます。売り手側の目的や意思、思惑を理解し、双方にメリットをもたらすことがM&Aを成功へと導きます。

売り手側がM&Aを行う目的は、大きく以下の4つです。

◎事業の選択と集中

◎事業承継

◎イグジット

◎企業再生

 

少子高齢化により、後継者不足問題が深刻化している日本では、M&Aで社外の第三者へ事業を承継させる方法が増えています。そのほか、事業の選択と集中や企業再生など、売り手側の経営状況の安定のためにM&Aを行うケースも多いです。

 

 

 

M&A戦略とは?

M&Aを成功させるためには、M&A戦略を立てることが欠かせません。M&A戦略とは、M&Aを行う目的を達成するために定められる、M&Aに関する基本方針のことです。

M&A戦略は目的によって異なるため、すべてのM&Aにおいて共通するものがあるわけではありません。そのため、各企業がM&Aを実行する目的を考え、それに沿って入念に検討する必要があります。

 

 

M&A戦略は目的によって異なる

M&A戦略を立てるために非常に重要なのが、目的を明確にすることです。M&Aの目的には、事業の再建や拡大、事業の多角化、承継、サプライチェーンの補強など、いくつかのパターンがあります。

例えば事業を再建したい場合は、自社の弱みを補うような特徴を持つ会社を買収したり、自社にない技術や販路を持つ会社と統合したりすることで経営を立て直すことができます。一方で事業エリアを拡大したいのであれば、その地域ですでに事業を営んでいる会社を買収することでスムーズな進出が可能です。同様に、海外市場の開拓をしたい場合には対象の国の会社とM&Aをすることで道筋が立ちやすくなります。

また、近年では、起業に代わる手段として個人の投資家などがM&Aを選択するケースも増えています。何らかのビジネスを始めたいと考えたときに、ゼロから立ち上げるよりもスムーズに参入できるからです。すでにその分野で事業を行っている会社を買収することで、初期投資にかかる時間や費用、手間などを削減することができるうえ、知見も得ることができるM&Aは、有力な手段となっています。

このようにM&Aはさまざまな目的で活用されており、その戦略も目的に応じて必要になるのです。

 

M&A戦略の基本の流れ

ここでは、買い手側がM&A戦略を立てる際の基本的な流れについて解説します。M&Aを行うにあたって、M&Aに関する前提条件や基本方針を明らかにすることが大切です。具体的には、以下のようなポイントについて明確にしましょう。

◎M&Aにより何を達成したいのか(目的)

◎上記の目的を達成するために、M&A以外の手段はあるか(M&Aを本当に行うべきなのか)

◎M&Aによりどのような経営資源を獲得し、どのように自社と統合するのか

◎上記のM&AをどのようなM&Aで獲得するのか

◎M&Aにかかると予想されるコストと、予算はどのくらい確保できるのか

 

上記のポイントについて検討し、目的にあったM&Aを実現するためには、以下のプロセスでM&A戦略を策定していく必要があります。

1.自社分析を行う
2.市場調査を行う
3.強化すべき経営資源を洗い出し目的を明確にする
4.M&Aの実現に必要な論点を具体化する
5.シナリオプランニングを行う
6.対象事業領域を絞り込む
7.財務や会計を踏まえて最終確認を行う
8.相手先企業へ打診をする

 

 

 

M&Aを戦略的に行うことの重要性

M&Aを行う目的を明らかにせず、戦略を立てないまま交渉に入ってしまうと、想定していたシナジー効果が得られなかったり、売り手企業が持つ経営資源をうまく活用できなかったり、経営統合が円滑に進まなかったりするリスクがあります。

結果として、M&Aによって得られる効果が買収金額よりも低くなってしまい、M&Aが失敗に終わってしまうのです。このように、M&A戦略はM&Aの成功を左右するため、非常に重要なポイントと言えます。

 

 

M&A戦略策定のプロセス

それでは、M&A戦略は具体的にどのように策定していけばよいのでしょうか。以下のプロセスについて、具体的にやるべきことを解説します。

1.自社分析を行う

2.市場調査を行う

3.強化すべき経営資源を洗い出し目的を明確にする

4.M&Aの実現に必要な論点を具体化する

5.シナリオプランニングを行う

6.対象事業領域を絞り込む

7.財務や会計を踏まえて最終確認を行う

8.相手先企業へ打診をする

 

 

1.自社分析を行う

M&Aの戦略策定で最も重要なプロセスともいえるのが、自社の分析です。

自社のことならすでによくわかっている、と考えてこのプロセスを疎かにしてはいけません。徹底的な自社分析を行うことが、M&Aにおける戦略策定において極めて重要なのです。

M&A戦略を立てる際に目的をしっかり理解することが重要なのは、すでに述べた通りです。3C分析、4P分析、SWOT分析などの手法を利用して自社の現状を洗い出し、事業や組織の観点から課題を見つめ直します。

そうする中で明らかになった弱みや強みを意識しながらM&A戦略を立てていきましょう。できるだけ客観的に自社の価値を捉えてみてください。

 

 

2.市場調査を行う

次に、市場調査を行います。前のステップで決めたM&Aの目的によって、リサーチする対象の市場は異なってきます。

調査対象は、必ずしも同業の市場ばかりとは限りません。競合企業とのM&Aでシェア拡大や既存事業の拡充を目指す場合は、同業の市場が対象になります。その場合は情報も仕入れやすく、比較的調査を進めやすい傾向にあります。

異業種とのM&Aを検討する場合は、他市場を幅広くリサーチする必要があります。知見や前提となる情報が少ない分、その分野の将来性や商流なども調査する項目は増えますが、時間がかかったとしても入念に調べることが必要です。

 

 

3.強化すべき経営資源を洗い出し目的を明確にする

戦略には、企業戦略と事業戦略があります。企業戦略は、事業を総合的にどうするかという全社的な戦略であり、企業戦略に基づいて事業ごとに事業戦略を策定します。事業戦略は、各事業が競争を勝ち抜くために必要な戦略のことです。

事業戦略を実現するためには、強化すべき経営資源をリストアップし、可視化しましょう。そして、それぞれの経営資源を強化する目的を明確にする必要があります。

 

 

4.M&Aの実現に必要な論点を具体化する

自社が強化すべき経営資源が明らかになったら、M&Aの実現に必要な論点を具体化し、戦略を詰めていきましょう。具体的には、以下のようなポイントについて検討していきます。

■買収の前提条件・基本方針

■M&Aの買収対象

■スキーム(株式譲渡、事業譲渡、合併、会社分割、第三者割当増資など)

■経営統合の将来設計

■会計・税務上のリスク

■実務上の必要プロセス

 

 

5.シナリオプランニングを行う

上記の論点を明らかにし、戦略を具体化していったら、次はシナリオプランニングを行いましょう。

シナリオプランニングとは、5〜10年後の中長期的な将来において起こりうる結果を複数想定し、それをもとに事業の戦略・施策の策定や検証を行うことです。不確実な環境の中から適切な意思決定を行うことを可能にします。

複数のシナリオを策定し、将来起こる可能性と環境変化が市場に与えるインパクトをもとに優先順位をつけ、意思決定に役立てましょう。

 

 

6.対象事業領域を絞り込む

戦略シナリオを策定したら、M&Aの目的や戦略、自社のビジョンや実現可能性などを踏まえて、M&Aの対象事業領域を絞り込んでいきます。

事業領域が定まったら、その事業を展開する相手先候補を、20〜30社ほどリストアップしましょう。これをロングリストと呼びます。はじめにロングリストを作成し、そこから数社程度に絞ったショートリストを作成するのが一般的です。

 

 

7.財務や会計を踏まえて最終確認を行う

最後に、自社の財務や会計を踏まえて最終確認を行います。買い手企業がM&Aを行う際は、とくにのれんに注意することが必要です。

のれんとは、財務諸表には表されない、ノウハウや顧客情報といった企業の経営資源に対して支払われる対価のことです。のれんは、会計上純資産に加算され、M&A後は最大20年間かけて償却されます。

ただし、M&Aがうまくいかず、会社や買収した事業の業績が想定よりも悪化した場合、減損処理が必要です。減損処理は税務上不利になってしまうため、M&Aを行う前に、自社の財務や会計を踏まえて最終確認を行いましょう。

 

 

8.相手先企業へ打診をする

相手先候補となる企業を複数社選定できたら、いよいよ優先順位に基づいて相手先企業への打診をしていきます。では、どのように相手とコンタクトをとればいいのでしょうか。ここでは、直接アプローチを行う場合と、最近注目されているM&Aマッチングサービスを利用する場合について解説します。

 

直接アプローチを行う場合

まずは、ショートリストに残った候補の企業に直接アプローチをするという方法です。間に第三者を挟まずに直接やり取りができるため、提案に対する相手の温度感をダイレクトに知ることができるほか、スピード感のある交渉ができることもメリットです。また、第三者に情報が洩れる心配もなく、極秘で進めたい場合などにも直接的なアプローチが適しています。

ただし、実際には相手企業に直接アプローチするケースはそれほど多くありません。前提として、お互いの企業のトップ同士が知り合いであったり、お互いにM&Aを検討しているという情報がすでに共有されていたりするなど、相手とある程度の関係性があることが直接的なアプローチには必要となるからです。

 

相手先企業をすでによく知っていて、是が非でもこの会社とM&Aを進めたい、というような強い思いがある場合などに限られるでしょう。

 

 

M&Aマッチングサービスを利用する場合

最近では、M&Aマッチングサービスの利用も増加しています。

相手先の候補を探している会社が事業内容や条件などを登録しているデータベースから、自社に合うように検索条件を設定してさまざまな相手を探すことができるサービスです。M&Aをしたいと思う企業が見つかったら、相手に直接アプローチや交渉ができ、マッチングすることが可能です。

また、こうしたマッチングサービスは、幅広い相手との出会いがある点もメリットです。自力では調べきれない業種や規模の企業がM&A候補として見つかる可能性もあり、豊富なデータベースからさまざまな観点で取捨選択することもできます。

相手先の規模感やおおよその金額などの条件を自社の意向に合わせて設定することで、納得できる相手先が見つかりやすく、柔軟性があるのも特徴といえるでしょう。そのため、相手先企業を選定する際のリストを作成する手間を省略することもできます。

中小企業の利用も多いため、比較的小規模な案件を検討している場合でも利用しやすいのがポイントです。

 

 

M&A戦略の注意点

M&A戦略を策定する際は、以下の点に注意が必要です。

■本当にM&Aの必要性があるのかを見極める

■リスクやデメリットの対策をしておく

■M&Aによるイグジットプランを明確にしておく

 

とくに、目的を達成するためにM&Aが最適な選択肢なのかを検討することが重要です。また、M&Aはリスクやデメリットを伴うため、事前に想定しうるマイナス要素については対策を講じることが求められます。

以下では、M&A戦略の注意点について解説します。

 

本当にM&Aの必要性があるのかを見極める

特に大切なポイントは、「本当にM&Aが最善の選択肢なのか」を見極めることです。

売り手側の企業にとっても買い手側の企業にとっても、M&Aは現状を打開したり将来的な成長性を確保したりするための選択肢の1つとなり得ます。しかし、唯一の選択肢というわけではありません。目標を達成するためにはM&A以外の方法があるのではないか、冷静に検討しましょう。

M&Aは目的ではなく手段です。M&Aありきで進めるのではなく、たくさんの可能性を視野に入れるのが大切なのです。

 

 

リスクやデメリットの対策をしておく

M&Aは、リスクやデメリットを伴います。想定していたシナジーが発揮できなかったり、統合がうまくいかず社員間で対立が生まれ、社員が他社へ移ってしまったりといったリスクはゼロではありません。

また、契約締結に向けて交渉を進めるプロセスや、契約締結後に統合を進めていくプロセスは簡単ではなく、慎重に進める必要があります。このようなリスクやデメリットをあらかじめ想定し、事前に対策を練ったうえでM&Aを進めることが大切です。

 

 

M&Aによるイグジットプランを明確にしておく

ベンチャー企業がM&Aを実施する際の目的は、イグジットであるケースがほとんどです。日本では、IPOによるイグジットが多いですが、M&Aによるイグジットも増えています。

イグジットを目的にM&Aを行う場合は、有利な条件でイグジットを実現できるよう、投資した資金をいつどのように回収するのか、プランを明確にしておく必要があります。

 

 

 

 

M&Aの戦略構築に役立つフレームワーク3選

M&Aの戦略構築のうえでおすすめのフレームワークは、以下のとおりです。

 

□バリュー・チェーン分析

□マイケル・ポーターの競争戦略

□アンゾフの成長マトリックス

 

フレームワークを用いることで、自社の強みや戦略の方向性などを分析し、明らかにしやすくなります。ここでは、M&Aの戦略構築に役立つ3つのフレームワークについて解説します。

 

 

バリュー・チェーン分析

バリュー・チェーン分析とは、自社のビジネスのどの過程でどのような付加価値が生み出されているかを分析する手法のことです。具体的には、以下のようなユニットに分類し、それぞれの収益を算定します。

□購買・物流

□製造

□販売

 

バリュー・チェーン分析を行うことで、自社の事業における強みや弱みが可視化され、優位性をもたらすポイントを明確化できます。

 

 

マイケル・ポーターの競争戦略

マイケル・ポーターの競争戦略とは、競争戦略を以下の3つの類型に分けたものです。

□コストリーダーシップ戦略

□差別化戦略

□集中化戦略

 

コストリーダーシップ戦略とは、製造・販売にかかるコストを低く抑えることで、競争優位を獲得する戦略のことです。

差別化戦略は、商品やサービスを競合他社と差別化することで、競争優位を獲得する戦略のことを指します。

集中化戦略は、特定の市場やターゲットなどに自社の経営資源を集中させる戦略です。

マイケル・ポーターの競争戦略は、競争戦略のフレームワークとして広く用いられており、競争優位を獲得するための基本戦略を検討する際に役立ちます。

 

 

アンゾフの成長マトリックス

アンゾフの成長マトリックスは、経営環境が変化していくなかで、企業が持続するための成長戦略を検討する際に使用するフレームワークです。成長戦略を市場軸と製品軸の2軸から考え、それぞれを以下のように既存と新規に分けて検討します。

既存製品 新規製品
既存市場 市場浸透戦略 新製品開発戦略
新規市場 新市場開拓戦略 多角化戦略

 

アンゾフの成長マトリックスを活用することで、市場環境や自社の強みなどを踏まえて、成長戦略の方向性について検討できます。

 

 

M&A戦略の事例

ここで、M&Aの実際の事例を見てみましょう。

◎介護事業所の事例

◎調剤薬局の事例

◎不動産会社の事例

◎新規事業立ち上げの事例

 

それぞれ、事業拡大・選択と集中・新規事業立ち上げと、目的はさまざまです。M&Aの目的や決意した背景・結果・今後のビジョンまでご紹介しています。事例を参考に、M&A戦略を策定してみてください。

 

 

 

 

介護事業所の事例

まずは、介護業界でM&Aを進めながら事業を拡大している事例を見てみましょう。

秋田県で介護事業を行っていたW氏は、県内のショートステイとデイサービスの事業を買収しました。そしてその後、さらに住宅型介護施設を買収します。拠点を増やすことで生産性と効率性を上げ、事業の将来的な持続性を高めることが目的でした。

県外に流出する若者が多い秋田では人手も足りず、ゼロから介護業界の新規事業を始めることは難しいのが実情です。そのため、M&Aで既存事業を買収するというのが最適な選択肢だと考えたのです。

M&Aの結果、スタッフの年齢層や社風が異なるために仕事の進め方に関して戸惑いが生じるなど、一筋縄ではいかない苦労もあるそう。しかし、対話を通じて会社の方向性を示すことで従業員の目線を合わせようと心がけています。今後、キャリアアップして家族を養うことができるような仕組みを作ることで、介護業界で希望をもって働く若者を増やしたいというビジョンのもと、事業拡大を進めています。

 

 

調剤薬局の事例

M&Aを活用して事業拡大を進めている、調剤薬局の事例です。

都内で処方箋薬の配達サービスを展開していたオーナーN氏は、住宅街に店舗を構えて在宅や介護施設の患者をターゲットに事業を営んでいました。そんな中、事業形態の幅を広げるためにM&Aを決意します。クリニックの隣にある門前の店舗を取得することで、立地の強みを生かしながら既存の事業の成長を目指したのです。買収した薬局の所在地がコロナの影響を受けにくい婦人科の隣だった、というのも決め手の1つとなりました。

今後もM&Aを有効活用しながら事業を展開し、薬局の業界にIT化の風を吹かせようと挑戦を続けています。

 

不動産会社の事例

次に、本業に集中するためにM&Aを選択した不動産会社の事例を見てみましょう。

吉祥寺にある物件の不動産管理を行っていたF氏。本業である音楽スタジオ法人の経営に専念するため、不動産管理会社をM&Aで株式譲渡しました。税制面も検討し、より有利な形となるように不動産の売却ではなく会社のM&Aを進めることを決意しました。税金の支払いがほとんど発生せず、納得する形でのM&Aが実行できた事例です。

不動産管理会社を手放すことで、今では本業として音楽事業により集中できるようになったといいます。コロナの影響で需要が高まっているライブ配信にも力を注ぐなど、選択と集中がうまく作用した好事例です。

 

 

新規事業立ち上げの事例

最後に、新規事業を始める手段としてM&Aを選択した事例をご紹介します。

これまでにIT系や美容系など複数の事業を立ち上げた経験のあるA氏。飲食事業にも関心があったものの、経験がない中ゼロからすべてを自分で築き上げることは難しいだろうと考えていました。そこで選択したのがM&Aです。

買収したのは、有名百貨店にある老舗の寿司屋です。立地のおかげである程度安定した経営が見込めることと、固定顧客の多い老舗であるため買収後もリピーターの来客が見込めるという点がポイントでした。

今までの老舗店舗の良さを生かして変わらない味を提供しながらも、今は新たな商品展開を行い、ターゲット層を広げることを視野に入れています。

 

 

 

M&Aの戦略構築におすすめの本3選

最後に、M&Aの戦略構築の際に役立つ本を3つご紹介します。

□マンガ あなたの夢を叶える! ネットでスモールM&A

□世界でいちばんやさしいM&A入門ゼミナール

□Q&Aでよくわかる 中小企業のためのM&Aの教科書

 

「マンガ あなたの夢を叶える! ネットでスモールM&A」は、後継者不在や事業承継、相続問題など、オーナー社長がM&Aを行ううえで知りたいポイントを、まんがでわかりやすく解説しています。読みやすく、初心者におすすめの1冊です。

著者 株式会社バトンズ(著)とこのま(マンガ)
出版社 クロスメディア・パブリッシング

参考:マンガ あなたの夢を叶える! ネットでスモールM&A

 

「世界でいちばんやさしいM&A入門ゼミナール」は、タイトルのとおり、M&Aに関する基礎知識をわかりやすく解説した入門書です。最新のM&A事情についても触れられているため、戦略を策定する際に役立ちます。

著者 宮崎哲也
出版社 三修社

参考:世界でいちばんやさしいM&A入門ゼミナール

 

「Q&Aでよくわかる 中小企業のためのM&Aの教科書」は、中小企業向けにM&Aのポイントを解説した1冊です。買い手・売り手ともに押さえておきたいポイントを、Q&A形式でわかりやすく解説しています。

著者 篠田康人
出版社 総合法令出版

参考:Q&Aでよくわかる 中小企業のためのM&Aの教科書

 

 

 

目標実現のためには緻密なM&A戦略が必要不可欠

M&Aを成功するためには、緻密なM&A戦略の策定が欠かせません。M&A戦略のファーストステップは、目的を明確化することです。なぜM&Aが必要なのか、M&Aをすることで何を目指しているのかを、改めて考えてみましょう。

会社のビジョンを中長期的な視野で策定し、経営方針に沿うような形でM&Aを進めるのが大切です。M&A後のことまで見据えて計画を立てることが、M&Aを成功させる秘訣となります。

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