
複数の会社の組織形態には完全親子関係や兄弟会社などさまざまな形態があります。
近年増加しているのは持株会社(ホールディングカンパニー)です。この記事では、持株会社の定義やメリット・デメリットについて解説します。
持株会社制で会社の頭脳と体を分ける!
持株会社制とは、複数の会社についてそれらの会社を支配する目的で株式を保有している組織形態のことを言います。1社の親会社(持株会社)に対して複数の会社が子会社(グループ会社)として存在します。持株会社の特徴は、企業の意思決定と事業運営はそれぞれ別の会社が行っている点です。
親会社では事業を行わず、グループ全体の企業戦略や意思決定に専念します。つまり、グループの頭脳の部分に当たります。一方、複数の子会社は親会社が策定した企業戦略に基づいて自社の事業戦略を策定し、経営活動を行います。親会社を頭脳とするなら、複数の子会社はグループの手や足の部分に当たります。これらの親子関係は株式の保有によって支配関係が構築されています。
持株会社の支配関係
次に持株会社の支配関係について紹介します。
先ほどご紹介したように会社の支配関係は株式の保有率によって決まるのですが、なぜ株式の保有で支配関係が生まれるのか、どれくらいの割合を保有されると支配関係が生まれるのか解説していきます。
会社の最高意思決定機関
持株会社の関係が成立するとき、子会社は親会社に従うことになります。その理由は株式会社の最高意思決定機関が株主総会だからです。
株式会社の所有者はその会社に出資している株主であることから、株主が会社の意思を決めることになります。株主総会では、株主が多数存在するとき、その出資比率に応じて議決権を与えて、議決権の多数決で様々な事案を決めていく仕組みになっています。
つまり、議決権をたくさん持っている株主(大株主)が存在すると、実質的にその大株主がその会社を所有し、支配することになります。この大株主が会社である場合、その会社は他社に所有されるので、これらの会社間に支配関係が生まれることになります。これが株主の保有によって支配関係が生まれる理由です。
株式を50%以上保有されると子会社に
次は支配関係の強さと株式の保有割合についてお伝えします。
ある会社に株式を50%以上保有され、(たいていは株式:議決権=1:1のため)議決権を50%以上保有することになると、その会社の子会社になります。株主総会での通常の議題の可否は多数決で決められますが、ある会社が議決権の50%以上を保有しているとすべての議題について思いのままに決めることができ、事実上支配することになります。このような理由で子会社として認定されます。
なお、
・100%の株式を保有された場合:株式取得した会社の完全子会社となる
・20%~50%株式を保有された場合:単独過半数は取れないものの大きな影響を与える大株主として、その会社の関連会社に認定される
など、支配の程度も株式の保有数によって変わります。
持株会社制のメリット
次は持株会社制のメリットについて2つ紹介します。
効率の良い経営
1つ目のメリットは効率の良い経営を行うことができることです。この理由には、各会社が専門性を発揮することと会社間のシナジー効果の2つがあります。
先述したように、持株会社制では
・親会社がグループの経営戦略と意思決定
・子会社は親会社の経営戦略の基づいた各事業の戦略と事業の運営
の2つを行っています。このように役割を分担することで各会社は専門性を発揮することができ、より効率の良い経営を行うことに集中することができます。
シナジー効果についてはグループ内の企業に仕事を依頼したほうが外注よりもコストを抑えることができます。また、グループ内の会社同士が協力して販売・営業に当たるとノウハウやナレッジを共有でき、売上が大きく増加することがあります。このように、持株会社制ならではの効果も得られるため、効率の良い経営を行うことができると言えます。
M&Aでグループを守る
2つ目のメリットはM&Aでグループを守ることができることです。
万が一、グループに経営の危機が訪れた場合、売却したい事業のみ切り売りすることができるため、グループとしてのダメージを減らすことができます。また、親会社は子会社の株式を保有しているため、子会社の敵対的買収から守ることができます。このように、持株会社制を取り入れていれば、危機の際にも会社のDNAを守ることができるのです。
持株会社のデメリット
最後に持株会社のデメリットについて2つ紹介します。
グループ内での連携が難しくなる
1つ目はグループ内の連携が難しくなることです。持株会社と子会社は親子関係であるため、支配関係で結ばれています。しかし、グループ内の子会社同士は兄弟会社の関係で、そこに支配関係はありません。そのため、自発的にヨコの連携をとることが難しくなります。持株会社である親会社はしっかりとしたリーダーシップをとり、グループ内で無駄がないよう調整する必要があります。
コストがかかる
2つ目はコストがかかることです。当然ですが、子会社化するためには株式を50%以上保有する必要があり、そのためには資金的なコストがかかります。また、グループを組織してから成果が出るまでに時間がかかるという時間的なコストもかかります。持株会社制を取り入れていくには、長い目で見た経営とそれに耐えられる基礎体力が必要です。
持株会社制とM&Aの関係
今回は持ち株会社についてお伝えしました。
M&Aを行うスキームの1つとして持株会社制があります。資金力に乏しかったり、リーダーシップが強力でないとなかなか組織することができない形態ですが、成功すると効率の良い経営を行うことができ、グループをより強固にすることができます。メリット・デメリットを把握したうえで持株会社制に興味のある方は、専門家との相談の上、検討してみてはいかがでしょうか。
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