
IRRとは、投資やM&Aに対するリターンを評価する指標です。M&Aを行った場合、将来どれくらいのお金を得ることができ、どれくらいの期間で資金を回収できるのかを評価します。今回はそんなIRRの計算方法について解説していきます。
IRRってどんな指標?
IRRとは、内部収益率(Internal Rate of Return)のことで、投資によって得られると見込まれる利回りを表す投資指標です。利回りを表していますが、将来得られるキャッシュフロー(現金収入)を現在の価値に換算する現在価値という概念によって評価することにより、投資期間や市場金利を考慮に入れた指標となっています。
IRRの内容について詳しくは、「IRR(内部収益率)とは?難しい内容をやさしく解説」をご覧ください。
IRRの計算式
IRRの計算式は以下の通りです。
投資額をI(マイナスの金額)と置き、毎年の投資によって得られると予想されるキャッシュフロー(現金収入)をC1、C2、C3と置くと、
となります。
一番左側のIは投資額を引き算しています。その後の式は毎年得られると予想されるキャッシュフロー(現金収入)の額を合計しています。ただ、単純に毎年分を合計した場合の式はC1+C2+C3・・・・となりますが、IRRの式ではCn/(1+IRR)^nのようにn年目のキャッシュフローをIRRの利回りで現在価値に換算しています。
現在価値とは、貨幣価値を現在時点に割り戻して比較できるようにしたものです。
金利がプラスの世界では、現在のお金の額面と将来もらえるお金の額面が同じ場合、将来もらえるお金の価値の方が少なくなるという考え方があります。
例えば、現在の100万と2年後にもらえる100万円の価値を比べた場合、定期預金の金利が10%だと仮定すると2年後にもらえる100万円の現在価値は約82.6万円に相当します。なぜならば約82.6万円を10%の定期預金で運用した場合、2年間毎年10%の金利がつくため2年後には100万円となるからです。
最初のIRRの式に戻りますが、IRRとは投資額に毎年得られるキャッシュフロー現金収入を足し合わせていった合計が0になる、つまり投資額を回収出来る利回りの事を表していることがわかります。
IRRはエクセルの方程式を使って簡単に計算できる
先ほどの式の方程式を解くことによりIRRを計算することができます。ただし、年数が増えるほど方程式が複雑になるためエクセルを使って簡単に計算する方法をご案内します。
エクセルでの計算方法は、先ほどの式と同じ順番で投資額、毎年の予想キャッシュフローをセルに入力します。投資額をA1セルに入れた場合、1年目の予想キュッシュフローをA2、2年目の予想キュッシュフローをA3とし、n年目までの全てを入力します。最後のセルには「=IRR(セルの範囲)」を入力。例えば、2年分であれば「=IRR(A1:A3)」となります。たったこれだけで、簡単にIRRが算出出来ます。
計算したIRRの活用方法
実際にM&Aの現場でIRRはどのように活用すればよいのでしょうか。
M&Aを考えるときにIRRをどう見ればいい?
M&Aでは、投資額に対して満足のいくリターンが得られるかどうかが投資の意思決定のポイントです。投資資金の調達利回りのことを資本コストといい、借入金であれば金利、株式による出資であれば配当や出資側のリスクを勘案したリターンがこれにあたります。
企業が最低限得られるべき利回りのことをハードル・レートといいます。通常は資本コストをハードルレートに設定する場合が多いです。M&Aの案件のIRRを算出した時に、資本コスト(ハードルレート)を下回る場合であれば、投資回収が見込めないという判断が出来ます。
反対に、IRRが資本コスト(ハードルレート)を上回る場合、リスクに見合うリターンが期待できるかどうかを精査し、十分なリターンが見込めるということであればM&Aの意思決定を行います。
IRRを見る際の注意点
このようにIRRは投資の意思決定や案件ごとのリターン比較に役に立ちますが、欠点もあります。IRRはあくまでも利回りを表す投資指標で、予想されるキュッシュフローの絶対額は勘案していないことに留意する必要があります。
例えばIRRが3%で予想キュッシュフローの合計額が50億円である案件Aと、IRRが15%で予想キュッシュフローが5億円の案件Bを比べる時に、単純にIRRの高いBの方に投資すべきとは一概には言えません。また、投資期間の途中でキュッシュフローが赤字になるような場合では、IRRがうまく算出できない場合もあります。
IRRを計算してみよう
いかかでしょうか?
M&Aなど投資の意思決定が伴う場合、IRRは非常に役立つ指標です。
また、エクセルで簡単に計算することができるため、将来のキュッシュフローを予想できれば算出も非常に簡単です。M&Aのみならず、株式や不動産などあらゆる場面で使われる指標なので、概念を理解するだけでなく、実際にエクセルでの計算を試して、理解を深めましょう。
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