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「この会社と技術を残さなければならない。」上場企業のMipoxが日本産業を支える研磨技術を持つ会社をM&A

2024年01月15日

ハイテク業界を主産業として、研磨加工技術による製品・サービスを提供するMipox株式会社はこの度、バトンズを通じて自動車部品を主軸に研磨加工を行う「有限会社大久保鉄工所」を譲り受けされました。もともと研磨材という単一事業への取り組みから「塗る・切る・磨く」という要素技術に注目し、既存事業を深化しつつ新分野の探索に取り組んできたMipoxは、これまでもM&Aを駆使して大きな成長を遂げてきました。

Mipoxの取締役として、M&Aによる事業拡大にも大きく貢献してきた上谷宗久様は、今回の買収にどのような可能性を見出し、将来を見据えているのか。製造業におけるM&Aの可能性、数々のM&Aを成立に導いてきた交渉現場などを詳しく伺いました。


 

譲渡企業
社名 有限会社大久保鉄工所
業種 表面処理(メッキ、研磨、塗装等)
拠点 栃木県
譲渡理由 後継者不在

 

 

譲受企業
社名 Mipox株式会社
業種 精密研磨材、光学フィルム製造
拠点 世界9カ国 23拠点
譲受理由 受託研磨サービスの拡充

 


 

【企業概要】

会社名:Mipox株式会社
設立:1925年12月(創業:同年11月)
資本金:33億7,956万円(2023年3月31日時点)
代表取締役社長:渡邉淳
HP:https://www.mipox.co.jp/

 

製品ではなく「要素技術」に注目。M&Aを駆使した事業成長

Mipox株式会社は1925年の創業以来、精密研磨材メーカーとして発展してきました。研磨加工を必要とするほぼ全ての製造業が取引先であり、自動車、パソコン、スマホなど、馴染みのある製品の製造過程には研磨材が使われています。

「弊社の研磨材はハードディスクのバーニッシュ(最終研磨)工程では世界シェア100%を占めています。ハードディスクはデータセンターに使われているため、弊社の製品がなければあらゆるクラウドサービスは使用できなくなってしまうということになります。」

現在世界シェア100%を誇る商材を持つMipoxも、かつては売上が大幅に下落し、経営が危ぶまれる時期がありました。そこから経営を回復させる切り札となったのが、M&Aによる事業拡大。Mipoxは「研磨材メーカー」という単一事業から、これまで培ってきた「塗る・切る・磨く」という要素技術と社内設備に目を向けて、事業転換を測りました。

「HDD、半導体、光ファイバー、フラットパネルなどを扱うハイテク業界は、需要変動が大きい分野です。数年おきに研磨材需要が大幅に上がったり下がったりします。その課題を解決するためには、価格の変動が少ない分野にも取り組む必要がありました。そこで、一般研磨材のメーカーをM&Aで引き継ぐことにしたんです。」

一般研磨材とは、サンドペーパーや砥石、ヤスリなど、一般的な用途(自動車・鉄鋼・造船・木工など)に使われる研磨材のことです。同じ研磨材でも、ハイテク業界と比べて需要変動が少ない安定産業でした。

「自分たちより大きい一般研磨材の会社を譲り受けたことで、会社全体として売上の波が減ってきました。自分たちの会社の弱点を探り、そこを補完するためにM&Aを活用する。新規事業の立ち上げという点でも、M&Aは有効だと考えています。」

『研磨材』という切り口ではなく、自社の持っている技術を細分化し『塗る・切る・磨く』という要素技術を軸として複数のM&Aを行ってきたMipoxは、現在は自動車や楽器、半導体など、あらゆる研磨材の製造工場を自社で全て所有しています。この「塗る・切る・磨く」を通して、世界のテクノロジー変化を支えることがMipoxが果たすべき役割であり存在意義であると上谷様は語ります。

「品質・価格・納期」三つのバランスが決め手。たしかな技術力を後世に残していくために

M&Aをご担当された上谷様は、Mipoxの役員としてこれまで6社以上の事業買収を行ってきました。その根底にあるのは、「ニッチな産業に光を当てたい」という思いだと語ります。

今回譲り受けた大久保鉄工所は、十数人規模の小さな会社でありながら、全国から引く手数多の技術者集団。その魅力について上谷様は以下のように話します。

「大久保鉄工所は、『受託研磨加工』を事業の柱としている会社です。受託研磨加工とは、お客様から研磨対象物をお預かりし、自社で研磨加工した後にお返しするという賃加工サービスで、高い技術と信頼、納期対応力が必要になります。

大久保鉄工所の強みは、技術力だけではなく品質・価格・納期の三つのバランスが取れていることです。いくら品質が良くても、納期が間に合わなかったり、価格が高かったりするとそもそも誰も発注しない。三つのバランスをベストの状態でキープしており、本当の意味でお客さんのことを考えてる会社であるということが衝撃的でした。砥石や研削液などの選定ノウハウにも歴史を感じました。」

自動車部品、医療機器、半導体装置のパーツや3Dプリンターの金属造形物など、さまざまな製品の研磨加工を日本中に納品している大久保鉄工所。従業員12名のうち10名が研磨加工エンジニアとして働いている現場では、一人一台研磨機を保有して作業を行っています。

会社は宇都宮にありながら、九州、長野、大阪など全国から加工依頼がきており、製造業界の中でも高い需要を誇っています。上谷様はこのハイレベルの現場を見て「この会社と技術を後世に残さなければならない」と感じたといいます。

製造業のM&Aは「現場」を見ないと本当の強みは分からない

M&A交渉をする上で、上谷様が大切にされているのはまずは現場に行くこと。今回もバトンズで案件を見つけた翌日には直接仲介会社に問い合わせをし、現場を見に行かれたそうです。そのスピード感に仲介会社は驚いたそうです。

「直感でいいなと思ったら、すぐ現場に行くようにしています。オンラインでPL数字の話をしても仕方がない。製造業はまずは現場を見ないと駄目だと思っています。とにかく現場を見ないと、自社との相性やその会社の本当の強み(要素技術)がわからない。

今回の交渉でも、打ち合わせもそこそこにすぐ宇都宮まで足を運びました。そうしたら、社員の方々がまるで自分の手足かのように機械を動かしていたんです。現場は戦場のような忙しさでした。これはすごいなと。

M&Aとなると買い手は買収金額ばかり気にしますが、弊社が注目したのは要素技術と加工プロセスとノウハウです。自動車メーカーの認証を取るのは本当に大変なんですよ。こういう加工会社が日本の自動車産業を支えているんだなと思いましたね。後継者不足で途絶えさせてしまうのはあまりにもったいない。」

また、大久保鉄工所の社長である大久保様と現場でお会いした際、事業に対する60年間の熱い思いを語ってもらったという上谷様。帰り際にもらった宇都宮のお土産には「従業員をよろしくお願いします」と丁寧に手紙が添えられていたと言います。

「そこからの交渉はスムーズでしたね。実は、弊社以外にも買い手希望が二社いたのですが、どちらも異業種だったんです。弊社は同業の研磨会社ですから、今後の従業員の生活や会社の成長を考えた時、必ず自分たちが引き受けた方が会社のためになると、自信を持って交渉に望めました。」

M&A後の従業員のキャリアマップまで提示。同業ならではの強みを生かしM&A成立へ

Mipoxのボードメンバーと大久保鉄工所の従業員の懇親会の写真

上谷様は、残った従業員を金属部品の研磨加工だけではなく、さまざまな用途・材料の研磨加工に精通したトップエンジニアに育て、指導者として県外や海外にも進出させることを提案しました。会社の事業ビジョンだけでなく、引継ぎ後の従業員のキャリアマップまでを示したことにより、競合が2社いる中で先方の提示価格以下で交渉が成立しました。

「調印式の後、弊社の全取締役と大久保鉄工所のメンバーで懇親会を開催しました。大久保鉄工所は若い社員の方が多くて、たくさん食べられるチェーン店の焼肉がよかったみたいで、どこに行きたいかと聞いたら『近所の焼肉屋』と言われました(笑)。

もっといいお店でも良かったんですが、現場の方々とより近い距離で話せるのは久しぶりで楽しかったですね。役員になると若手との飲み会には参加する機会が減りますので。『これからみんなで頑張ろうぜ』と盛り上がりました。」

引継ぎが終了した現在は、IT導入、人事制度や給与形態など、社内の働き方をよりよい形へと変えていっている最中だと話す上谷様。交渉時にアピールした通り、設備投資や社員数の増員なども今後積極的に行っていく予定です。

「研磨は人類最古の技術と言われています。研磨の仕事が世の中の製造業を支えているということは、ことあるごとに社員の方々に伝えています。今後も自分達の技術を誇りに思えるような事例を世界中で作っていきたいです。

ゆくゆくは、各地に技術者として社員を派遣することも考えています。彼らの技術を求めている人たちは、国内どころか世界中にいます。まずは日本制覇、その次はグローバル展開ですね。」

上谷様はバトンズのプレミアムプラス会員に登録されており、会員様向けのおすすめ案件紹介メルマガを日々チェックされています。今回引き継がれた大久保鉄工所も、メルマガの配信情報から繋がったお相手様でした。

これまで何度もM&Aによる事業買収をご経験されている上谷様に、最後にバトンズの魅力と、M&Aに取り組む際に重要なことについてお話しいただきました。

「私のような経営者は、日々M&Aだけを行っているわけではないので、なにかを選ぶ上で最も気にするのが『時間』です。その点、バトンズはUIがいい。パッと直感的に使いやすいですし、先方とのコミュニケーションもNDAもスムーズに進みます。それから他のM&Aプラットフォームに比べて掲載件数が圧倒的に多いですよね。それがバトンズの強みのひとつでしょう。

M&Aにおいて重要なことは、PMIだと思います。我々は製造業なので製造業に焦点を当てて話すと、売り手側のメーカーは『資本力がなく投資や事業展開できない』『営業力や販路に課題がある』など、何かが欠けていることからM&Aを検討されている場合も多いです。そこをサポートさえすれば、あとは勝手に伸びてくれる会社も多い。

我々はただ事業を買いたいのではなく、要素技術を見極めて『事業を伸ばしたい』のです。先方の培ってきたブランド、育ててきた従業員の方々、そして培ってきた技術を尊重し敬意を払うことが、M&Aの一番の秘訣なのではないでしょうか。」

今後も世界で通用する優れた加工技術を武器に、M&Aも駆使しながらグローバル展開も目指していくMipox。

Mipox株式会社の今後のさらなるご発展を、バトンズ一同、心より応援しております!

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