▼起業する際、税務署や自治体などにさまざまな書類を提出する必要があります。もちろん、ビジネスを軌道に乗せることが最優先課題であることは言うまでもありません。しかし、税務署や自治体に提出する書類には期限がつきもの。そのため、事務手続きとはいえ疎かにはできません。そこで本稿では、起業時に提出しなければならない書類やその期限について、紹介していきます。
開業したら最初に提出すべき書類とは?
起業したときに提出すべき書類の筆頭に挙げられるものが「開業届」です。「個人事業の開業届」は開業してから1ヵ月以内に税務署に提出しなければいけません。また、法人を設立した場合には「法人設立届出書」を設立から2ヵ月以内に税務署に提出することになっています。
「個人事業の開業届」については特に添付書類は定められていません。一方で、「法人設立届出書」を出す場合には、貸借対照表、定款や登記簿謄本の写し、株主名簿、設立趣意書などを添付することになっています。
ただし、青色申告をしようと考えている場合には「青色申告承認申請書」を提出する必要があり、通常はその際に「個人事業の開業届」や「法人設立届出書」の提出も求められます。青色申告は税務上のさまざまな特典を受けられる申告方式であるため、記帳の要件などは多少厳しくなっていますが、節税のメリットもあるため申告することをおすすめします。
青色申告をしたい場合は、個人事業であれば申告をする年の3月15日まで(1月16日以降に事業を開始した場合は開始日から2ヵ月以内)、法人であれば設立後3ヵ月以内か決算日までに行うという、いずれか早いほうの日の前日までに「青色申告承認申請書」を提出しなければいけません。提出が遅れると青色申告できる時期も1年遅れてしまうので注意すべきポイントです。
開業届は自治体にも提出する
起業すると所得税や法人税など、国税の申告・納付だけでなく、都道府県や市町村にも住民税や事業税といった、地方税の支払いが必要になります。そのため、税務署に提出したのと同じように、各自治体に対しても「事業開等始申告書」を提出しなければなりません。書類の名称や提出時期は自治体によって若干異なるので、自身が住んでいる地域の自治体のホームページなどで確認することをおすすめします。例えば、東京23区で設立された法人であれば、会社設立日から15日以内に定款や登記簿謄本を添え、都税事務所に「事業開始等申告書」を提出することになっています。
従業員を雇ったら提出する書類
従業員を雇用して給与を支払うことになった場合、1ヵ月以内に税務署に「給与支払事務所等の開設届出書」を提出しなければいけません。また、青色申告を行う個人事業主が配偶者などの親族に給与を支払う場合、「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出しておくことで給与が必要経費として認められるようになります。
従業員などの給与から天引きした源泉所得税は原則として翌月10日までに納付する必要がありますが、「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を提出することで、半年ごとに納付することができるようになります。この特例を受けたい場合には、適用される月の前月末までに申請書を提出しておきましょう。
また、従業員を1人でも雇用した場合、労働保険(労災保険と雇用保険)に加入しなければなりません。このうち労災保険に関しては、労働関係の成立した日の翌日から10日以内に労働基準監督署に「労働関係成立届」を提出し、「労働保険概算保険料申告書」で概算保険料を納付することになっています。
さらに雇用保険に関しても、10日以内に公共職業安定所(ハローワーク)に「雇用保険適用事業所設置届」や「雇用保険被保険者資格取得届」などの書類を提出する必要があります。最後に、社会保険(健康保険、厚生年金保険)の適用事業所となる場合は、会社設立から5日以内など所定の時期に、「健康保険・厚生年金保険新規適用届」、「被保険者資格取得届」などの書類を年金事務所に提出することが求められます。
起業する場合は、このように様々な申告書の提出が必要になりますが、その目的をきちんと理解し、然るべきタイミングで提出することで、結果的に節税にも繋がることがあります。今回、ご紹介した申告書類についてもう一度おさらいすることで、起業の際の参考になれば幸いです。
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