都内で会社員として勤務する柴木様はこの度、バトンズを通じて薬用デオドランドクリームの通販事業を譲り受けされました。起業家支援を行う会社に長年携わっている柴木様が、ご自身で初めて取り組まれたM&A。多くの起業家と関わり、サポートをする中で、副業としてM&Aに取り組まれた背景は何だったのか。実体験から見えてくるリアルなお話とともにお伺いさせていただきました。
譲渡側 | |
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区分 | 法人 |
業種 | 小売・EC |
拠点 | 九州地方 |
譲渡理由 | 後継者不在 |
譲受側 | |
---|---|
区分 | 個人 |
業種 | IT・サービス業 |
拠点 | 東京都 |
譲受理由 | 起業・副業 |
自分で事業を行うことで、経験に基づいたサポートができる
都内で起業家支援を手掛ける会社に勤務する柴木様は、イベント運営、セミナー開催などをはじめとした、起業家を支援するための企画・営業に長年携わってきました。セミナーやイベント等を通じて、起業家と多くの接点を持っていた柴木様は、自分自身もM&Aに興味を持つようになったと言います。
「今の会社は、学生時代の頃にアルバイトで入ったことがきっかけなので、かれこれ15年ほどになります。多くの起業家と接する中で、いつか自分でも事業ができればと考えていました。」
多くの起業家と接する中で、自身でも起業をしたいという思いを持つようになった柴木様は、会社でとあるサービスを展開することをきっかけに、M&Aについて検討し始めます。
「会社で、M&Aを使った起業支援サービスを、起業支援の専門家と立ち上げました。M&Aに精通する専門家が起業M&Aをサポートするサービスになるんですが、もともと事業をやっている方がM&Aをすることはあっても、M&Aで起業をするという事例はなかなか現れませんでした。だったら、まずは自分でやってみたらどうかと考えたのが、最初のきっかけになります。」
まずは自分でM&Aを経験することで、自社サービスにも活かそうと考えた柴木様。もともとの起業願望とも重なり、副業として始められる案件を探しはじめます。
副業でできるEC事業の検討。スピード重視で面談・交渉へ
買いたいジャンルはイメージできていたという柴木様が検討していたのは、健康・美容分野のEC販売事業。その中でも、コンプレックスを解消することに繋がるようなサービスを主に探していたと話します。
「いくら本業のためとはいえ、やっぱり自分が興味のあるサービスじゃないと続けられないだろうなと。そう考えた時に、私が興味を持っていたのが健康・美容のジャンル。その中でも、とくにコンプレックスを解消できるようなサービスでした。
また、今の会社を辞めるつもりはなかったので、店舗運営のようなビジネスモデルだと副業ではそこまで手がかけられません。そのため、自分が興味のある商材を扱っていて、お客様がある程度ついているEC事業に絞って探していました。」
興味を持ったEC事業案件にメッセージを送り、柴木様が最終的に面談まで進んだのは5社。複数社を同時に検討しながら、スピード重視と記載があるものは優先的に面談に進んだと言います。また、売上や経費などを記した帳簿は、法人の方がしっかり記載してくれているだろうという考えから、法人の案件を優先して検討していたとのこと。
「法人のEC案件をいくつか面談する中で、今回の譲渡先は、代表の方が最初の面談に参加してくださったのが好印象でした。また、商材として扱っているデオドランドクリームは、汗を止める商品ではなく、出た汗の雑菌の繁殖を抑えるというものです。ベタベタしたイヤな感じの汗になりにくく、匂いにくくなる効果があります。これは季節問わず、冬の時期でも使えそうだなと感じました。
実際に商品を試してみたら使用感が良かったことや、既に固定の顧客がついていて、サブスクモデルの販売形態だったのも魅力的でした。」
引き継ぎにあたり、思わぬ落とし穴も。事前に想定されうるリスクを調べておく重要性
交渉・引継ぎに進んでいく上で、苦労した点や大変だったことを伺うと、「詳しい話を聞いたり、実際にやってみないとわからないことがたくさんあった」とのこと。
「最初にオーナーの方からいただいた資料が、いわゆる家庭用の収支計画表みたいなものでして。シュミレーション上では黒字になっていたのですが、実際に自分で実数を入れてみたら赤字だったんです。
私の場合は、価格交渉の材料として提案することができましたが、もし他にも買い手候補がいて、かつどうしても買いたい案件だった場合、こういった交渉はできなかったかもしれません。
そういった点は、M&Aならではの難しさだと実感しましたね。最終的には、私の人柄を重視していただき、責任を持って事業に取り組んでもらえそうだと評価していただけたようで、よかったです。」
柴木様が引き継がれたEC事業は、自社のオリジナル商品をOEMでEC販売をするサブスクリプションモデル。数千円の商品を定期販売するという形態となっており、柴木様が引き継いだ時点では既に既存のお客様が一定数いる状態でした。しかし、実際に事業を引き継いで運営を始めてからは、予期せぬ出来事もあったのだそう。
「私自身、EC事業が初めてだったので、法人は立ち上げず、個人事業主としてサービスの運営をスタートしました。そしたら、前オーナーの方が使用していたクレジットカード決済が、個人事業主では引き継げないということがわかって。」
個人事業主としてのクレジットカード決済の申請も、開業届を出してからしか申請できず、かつ受理されるまで一ヶ月ほど時間がかかったとのこと。そのため、もともとクレジットカード支払いの契約をしていた既存顧客が一度途切れてしまうという、想定外のトラブルに見舞われました。
「ECサイトの会社さんがいろいろとサポートをしてくれましたが、思わぬ落とし穴でしたね。もっと早くわかっていたら、開業届を出すタイミングを早くするなど、対策が取れたと思います。個人から法人、法人から個人の引継ぎを検討されている方は、実際に譲渡される前に何が必要になるか、事前に調べておくことをおすすめします。」
「コンプレックス解消につながるビジネス」を軸に、新たな商品・サービスも展開していきたい
引継ぎを終えて、これから事業運営を本格的に行っていく柴木様。本業を通じて多くの起業家と接してきた柴木様は、どのような事業展開を構想しているのでしょうか。
「まずは、ブランディングに力を入れていきたいですね。デオドラントクリームって、ワキガを防ぐとか、汗を抑えるといったPRの仕方をされがちなんですが、私はむしろ汗をどんどんかいて、健康な体づくりをしようという視点でPRをしていこうと思っています。
汗をかくことを気にして購入するようなマーケティング手法ではなく、一緒にコンプレックスを解消していこうという目線で、サービスを展開していきたいです。」
柴木様は、今後はデオドランドクリーム以外にも、コンプレックスの解消につながるような商品の展開も検討しています。また、今回のM&Aを通じて経験したことを、本業にも活かしていきたいと意気込みます。そんな柴木様から、最後にこれからM&Aを検討している方に向けてメッセージをいただきました。
「一番お伝えしたいのは、キャッシュフローがちゃんと回るかを考えることですかね。先ほどお話ししたクレジットカード決済の事例のように、予期せぬ費用が後々かかることもあるでしょうし、事業を運営するのは必ずしもうまくいくとは限りません。
キャッシュフローが思うように回らない期間も、生活できるだけの資金を手元に置いておく、ある程度のリスクを想定しておくことが重要なんじゃないかなと思います。」
とくにM&Aにおいては、買収資金と運転資金、両方の準備が必要になります。300万円の資金があるからといって、300万円の案件が買えるわけではありません。そのあと運営していくことを考え、想定外の出費も含めた『ある程度の赤字でも耐えられる余力』を残すことが大事であるとお話しいただきました。
今回、副業としてM&Aに取り組まれた柴木様は、M&Aの可能性について以下のように話します。
「私は副業としてM&Aをしましたが、まずは副業から始めて、会社に勤めながら副業に軸を移していって本業にしていくこともできると思います。いつかは起業してみたい、何かやってみたいと思っている方は、面白そうだと感じた案件があれば、一歩を踏み出してみてほしいです。お金のことも含めて、動いてみないとわからないことがたくさんありますから。」
二足の草鞋でビジネスに取り組む柴木様は、これからご自身の事業をどのように育てていくのか。事業家としての今後に期待が膨らみます。
柴木様の今後のさらなるご活躍とご発展を、バトンズ一同心より応援しております!
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