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事業再生ADRとは?利用条件やメリット・デメリットを解説

2023年05月01日

事業再生ADRとは、過剰債務が原因で事業の継続が困難となっている企業に対して、会社更生法などの法的整理を使わずに再建を目指す手法の1つです。法的整理と私的整理の両方の要素が取り入れられた手法で、いわゆる「準則型私的整理」の一種となります。

この記事では、事業再生ADRの基礎的事項を知りたい方向けに、事業再生ADRとは何か、利用できる条件やメリット・デメリット、手続きの流れなどについて解説します。

 

ADRとは

ADRとは「Alternative Dispute Resolution」の略で、日本語では「裁判外紛争解決手続」と呼ばれます。

民事上のトラブルや紛争について、倒産手続や訴訟といった裁判所が介入する手続きを使う代わりに、中立的な立場にある第三者の介入のもとで、当事者同士による解決を目指すものです。

ADR自体は事業再生に限ったものではなく、労働紛争や交通事故、損害保険会社とのトラブルなど幅広い場面で活用されています。

 

事業再生ADRとは

事業再生ADRとは、過剰債務で経営が行き詰まっている企業に対し、ADRによって解決を図る制度およびその手続きのことです。

法的手段を使わない私的整理の一種で、裁判所の代わりに事業再生実務家協会(JATP)という民間の機関により手続きが進められます。

 

事業再生には法的整理と私的整理がある

事業再生の方法には、大きく分けて法的整理私的整理の2種類があります。

法的整理民事再生や会社更生のことで、民事再生法や会社更生法といった法律に則って、裁判所の主導により債務整理を行います

私的整理とは債権者と債務者が直接協議して、裁判所の介入なしに債務整理を行う手続きのことです。純粋に当事者同士の話し合いのみで行う場合もありますが、地域経済活性化機構などの専門機関が介入するものや、税制優遇が受けられる私的整理ガイドラインなど、さまざまなバリエーションがあります。

 

事業再生ADRは私的整理の1種

事業再生ADRは、中立的な第三者機関の介入によって行う私的整理、いわゆる「準則型私的整理」の一種です。

準則型私的整理とは、一定のルールやガイドラインに基づいて行う私的整理全般を指す言葉で、法的整理は行いたくないが純粋な私的整理が困難な債権者・債務者に対して、そのニーズを満たすことを目的としています。

 

事業再生実務家協会(JATP)による仲介が行われる

事業再生実務家協会(JATP)とは、事業再生ADRを行う際に仲介業務を行う機関です。JATPは、経済産業競争力強化法第49条第1項*1 に基づき認定された仲介業者で、事業再生ADRはこの機関の主導で行われます。

JATPには事業再生に精通した弁護士やファンド、コンサルタントなどが登録されており、JATPがその中から適切な手続実施者を選定して手続きが行われます。

*1 産業競争力強化法 | e-Gov法令検索

 

事業再生ADRの利用条件

事業再生ADRはどの企業でも利用できるわけではなく、以下の条件を満たす必要があると定められています。

      1. 過剰債務を主因として自力再生が困難となっている
      2. 債権者の支援による事業再生が見込める
      3. 法的整理では事業再生に支障が出る恐れがある
      4. 破産手続きよりも多い債権回収が見込める
      5. 適切な事業再生計画案を策定できる見込みがあること

参照:一般社団法人事業再生実務家協会 | 事業再生 ADR の利用について 

 

それぞれの条件について詳細をお伝えします。

 

過剰債務を主因として自力再生が困難となっている

事業再生ADRは債務整理のための手続きなので、過剰債務が主因のケースが対象となります。

 

債権者の支援による事業再生が見込める

技術やブランドなどの事業基盤がある、事業に収益性や将来性があるなど、債権者の支援があれば事業再生が見込めることが条件となります。

 

法的整理では事業再生に支障が出る恐れがある

信用力低下などの理由で、法的整理では事業再生に支障が出る恐れがある場合に、事業再生ADRが利用できます。

 

破産手続きよりも多い債権回収が見込める

破産手続きより多い債権回収が見込め、事業再生ADRが債権者にとってメリットがあります。

 

適切な事業再生計画案を策定できる見込みがあること

事業再生ADRは対象債権者全員の合意が必要なので、債権者が納得できる事業再生計画案を策定できる必要があります。

 

事業再生ADRのメリット・デメリット

事業再生ADRは法的整理と私的整理のメリットを両方取り入れていますが、一方で特有のデメリットも多少存在します。事業再生ADRのメリット・デメリットを理解して、法的整理・私的整理と比較検討したうえで最適な方法を選ぶことが大切です。

 

事業再生ADRのメリット

事業再生ADRのメリットは主に6つあります。それぞれ紹介します。

 

公平性・透明性・信頼性が担保される

事業再生実務家協会(JATP)が主宰することで、純粋な私的整理より公平性・透明性・信頼性が担保されます。

 

スピーディーに行われる

一般に民事再生は半年程度、会社更生は数年程度かかるのに対して、事業再生ADRは3カ月程度で迅速に行われます。

 

イメージダウンを防げる

事業再生ADRは対象債権者以外に公表する必要がないので、「倒産」というイメージダウンや風評被害を防ぐことができます。

 

つなぎ融資が受けやすくなる

事業再生ADRの手続き期間中は、中小企業基盤整備機構による債務保証が得られ、つなぎ融資が受けやすくなる制度が整備されています。

 

全債権者を対象にしなくていいので事業継続しやすい

法的整理は全債権者が対象となり、事業継続が困難になる傾向があります。それに対して事業再生ADRは、事業継続に必要な商取引の取引先を除外できるので、事業継続しやすくなります。

税制上のメリットがある事業再生ADRにより放棄した債権は原則無税償却となるので、債権者にとって税制上のメリットがあります

 

事業再生ADRのデメリット

続いては、事業再生ADRのデメリットを解説していきます。

 

実施には対象債権者全員の同意が必要

事業再生ADRを実施するには、策定した事業再建計画に対し対象債権者全員の同意が必要です。一人でも不同意の者がいると事業再生ADRは終了となり、特定調停や法的整理に移行します。

 

費用が高額になりがち

事業再生ADRはJAPTに依頼して実施しますが、それに際して審査料・業務委託金・業務委託中間金・報酬金の支払いが発生します。

さらに、事業再生計画案の作成に際する弁護士などへの費用、デューデリジェンス費用などがかかり、費用が高額になりがちです。

 

事業再生ADRの手続きの流れ

JATPが発行している「事業再生ADR活用ガイドブック」によると、事業再生ADRの手続きの流れは、大きく分けて以下の3つのステージに分けられます。

  1. 事前準備~正式な利用申請
  2. 一時停止通知 ~ 計画案の概要説明・協議
  3. 計画案の決議 ~ 計画案の成立/法的手続への移行

 

この章では、このガイドブックの内容をもとに、3つのステージについてそれぞれ噛み砕いて解説していきます。

参照:事業再生ADR 活用ガイドブック

 

事前準備~正式な利用申請

事業再生ADRを利用したい企業は、まずJATPに手続利用申請を行います。

申請を受けたJATPは、その企業に事業価値が存在するか、債権者の支援によって事業再生の可能性があるかなどを審査し、認められれば仮受理となります。

仮受理の後、JATPは仮の手続実施者を選定します。同時に、企業側は仮の手続実施者の助言のもと、自社のデューデリジェンスと事業再生計画案の概要の策定を行わなければなりません。そして、計画案の概要を吟味し、債権者の合意が得られる見込みがあると判断されれば正式申込みとなります。

 

一時停止通知 ~ 計画案の概要説明・協議

正式申込みが受理されると、次は債務者企業とJATPの連名で債権者へ「一時停止通知」を発送します。一時停止通知の発送により、債権者は債権回収や担保設定行為が一時的に禁止され、事業再生ADRへの参加を促されます。

そして、債務者と債権者、仮の手続実施者による1回目の債権者会議が実施され、手続実施者の正式な選任と、事業再生計画案の概要説明が行われます。

その後、事業再生計画案の詳細の作成、手続実施者による調査報告書等の作成、債権者間の調整を行ったうえで、2回目の債権者会議を実施します。

2回目の債権者会議では、事業再生計画案の協議や調査報告などを行い、債権者全員が合意すれば計画案の決議となります。

 

計画案の決議 ~ 計画案の成立/法的手続への移行

債権者全員の合意により計画案が決議されれば、その後は計画の実行に移ります。ただし、1人でも同意しない債権者がいる場合は事業再生ADRは終了となり、特定調停や法的整理など別な手段に移行しなければなりません

仮に、特定調停や法的整理に移行したとしても、事業再生計画案が合理的な内容であると認められる場合は、引き続き計画案の成立を目指したり、計画案を尊重した手続きを行うことができます。

 

事業再生ADRの利用実績

事業再生ADRは2021年3月時点で86件(269社)の手続利用申請があり、このうち60件(219社)が成立、21件が不成立となっています。*2

事業再生ADRはコスト面などの問題から上場企業・大企業の利用が多く、申請件数は年間数件程度にとどまっているのが現状です。以下では、2022年に実施された事業再生ADRの中から、成功事例と失敗事例をそれぞれ1件ずつ紹介します。

*2 東京商工リサーチ (https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20200904_03.html

 

さくら薬局運営会社「クラフト」による事業再生ADR

2022年10月に、さくら薬局を運営するクラフト株式会社が、事業再生ADRにより全株式をNSSKグループに譲渡しました。

クラフトは同業他社買収のための借入れで経営状態が悪化していましたが、株式譲渡により得た資金で負債が返済できる見通しです。

参照:https://maonline.jp/articles/tsr0416-kraft-net

 

マレリホールディングスによる事業再生ADR

2022年3月に、自動車部品メーカー「マレリ」などの持株会社であるマレリホールディングスが、資金繰りの悪化を理由に事業再生ADRを申請しました。

マレリホールディングスは米投資ファンド主導の再建案を提示しましたが、債権者全員の合意が得られず事業再生ADRは頓挫しました。

参照:https://maonline.jp/articles/tsr0375-marelli

 

まとめ

事業再生ADRは法的整理と私的整理のメリットを取り入れた手法で、メリットも多い反面、コストが高いなどの理由で大企業でないと利用しづらく、実施件数が少ないのが現状です。

債務整理の手法として事業再生ADRという選択肢があることを理解して、法的整理・私的整理などと比較検討し、最も有利な手法を選ぶことが重要だといえます。

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