監査法人とは、企業の監査を担う5人以上の公認会計士によって設立された法人のことです。主に企業の財務報告に問題ないかを細かく確認します。
企業の財務報告には、思わぬミスや意図的な粉飾が入ることがあるため、監査法人にチェックを依頼することで財務諸表の公正さを担保し、株主や投資家に対してクリーンさをアピールすることができます。
この記事では、監査法人とはどのような組織なのか、業務内容や役割を詳しく紹介します。
監査法人はどんな組織?代表的な監査法人
監査法人とは、どのような組織なのでしょうか。具体的な役割を見ていきましょう。
監査法人の中には、「BIG4」と呼ばれる代表的な法人が存在します。
BIG4とは何なのか、またそれぞれの企業にはどのような特徴があるのかも確認していきます。
監査法人とは
監査法人とは、企業の監査を担う法人のことです。公認会計士法に基づき、設立のためには5人以上の公認会計士が必要だとされています。
公認会計士とは、監査と会計についての国家資格を持つ人のことです。公認会計士の監査とは、経営状況を示した財務諸表や、企業がおこなうさまざまな事業の業績から経営状況を把握し、企業が法律に則ったかたちで健全に運営されているのかをチェックすることです。
大規模な監査法人の場合は、数千人規模の公認会計士が籍を置くこともあります。
代表的な監査法人「BIG4」とは
業界には、通称「BIG4」と呼ばれる4大監査法人が存在します。
全世界の主な企業は、この4つの監査法人のいずれかと関係を結んでいるといっても、過言ではありません。
BIG4の本社はアメリカやイギリス、オランダですが、世界各国の会計事務所と連携して各国でサービスを展開しています。以下では、日本国内にある、BIG4と連携している事務所を紹介します。
有限責任あずさ監査法人(KPMG)
オランダに本社を置く「KPMG」と連携している事務所です。
設立は2003年で、主に監査や保証業務をおこなっています。全国各地に事務所を持っていますが、特に大阪方面や名古屋方面で力を発揮しているのが特徴です。
令和4年9月30日時点で、3,002名の公認会計士が所属。監査証明業務の実績は3,495社にのぼり、三井グループや住友グループに強みを持っているといわれています。
新日本有限責任監査法人(EY)
ロンドンに本社を置く「アーンスト&ヤング」と連携している事務所です。
設立は2000年で、監査や保証業務のほか、経営アドバイザリー業務などをおこなっています。メーカーや銀行、電力のクライアントなどを幅広く手掛け、特に東北や北陸方面で力を発揮しているのが特徴です。
令和4年9月30日時点で、3,083名の公認会計士が所属。監査証明業務の実績は3,734社にのぼります。
有限責任監査法人トーマツ
ニューヨークに本社を置く「デロイト・トウシュ・トーマツ」と連携している事務所です。
設立は1968年で、監査業務だけでなく非監査業務をおこなっています。特にIPOに強みを持つのが特徴で、大手商社や、三菱グループのクライアントを多く手掛けています。地域でいえば特に四国や九州に強みを持っています。
令和4年5月31日時点で、3,185名の公認会計士が所属しており、監査証明業務の実績は3,244社にのぼります。
PwCあらた監査法人
ロンドンに本社を置く「プライスウォーターハウスクーパース」と連携している事務所です。
設立は2006年で監査や財務報告のアドバイス、IPOなどを手掛けています。特に外資系の企業に強みを持っているのが特徴です。
令和4年6月30日時点で、877名の公認会計士が所属しており、監査証明業務の実績は1,157社にのぼります。
監査法人の役割とは?監査が必要な会社との関係
代表的な監査法人を解説しました。続いては監査法人の役割について詳しく見ていきましょう。なぜ会社は監査において「監査法人」を必要とするのでしょうか。
監査法人は企業の会計処理や決算内容をチェックしている
監査の基本的な役割は、企業がおこなった会計処理や決算について、第三者の目線でチェックすることです。ミスがあったり、企業が悪意を持って粉飾している可能性があるため、細かく確認します。
また、企業は監査法人に入ってもらうことで、クリーンな経営を社会に証明することができます。そのため、株主や投資家などに決算書を信用してもらうためには監査法人による意見表明を受ける必要があります。
そして監査は、第三者からのチェックであることが重要です。監査法人は、あくまで外部の独立した存在であることが求められます。
なお、企業が上場を目指す場合は、監査法人による証明が原則として必要になります。
監査を必要とする企業
すべての企業が、必ず監査を受けなくてはならないということではありません。ただし、会社法において法定監査の基準が定められており、最終事業年度の資本金が5億円以上、または負債が合計200億円以上になる会社は、会計監査を必ず受けなくてはなりません。*1
もしこれに当てはまるのに監査を受けない場合は、100万円以下の罰金が科されます。そうなると利害関係者からの見え方も悪く、リスクを抱えることになりかねません。
また先述したように、企業が上場を目指す場合には、監査を受ける必要があるため注意しましょう。
*1 会社法(平成26年改正)第5回:会計監査人監査の対象会社|EY新日本有限責任監査法人
監査法人の仕事内容
監査法人の役割、監査を必要とする企業の確認をしました。ここからは、監査法人の仕事内容を具体的に見ていきましょう。
企業が監査法人に監査を依頼する場合は、仕事内容を把握しておくと会計処理や決算についてのやりとりがスムーズです。また昨今の監査法人は単に監査だけをおこなっているのではなく、「非監査業務」といわれる業務に手を広げている傾向にあります。
監査業務
まずはメインの業務にあたる監査業務の仕事内容を確認しましょう。
ここまで紹介してきたように、監査業務とは、公認会計士が企業の財務諸表を第三者的な目線でチェックすることです。最終事業年度の資本金が5億円以上、または負債が合計200億円以上になる企業については、法律上義務付けられていますが、その他さまざまなニーズに応じて、監査をおこないます。
監査人は、開示された財務諸表を細かく見ていき、報告書として意見表明をします。表明されている内容が適正であるかどうかは、株主や投資家、その他の利害関係者にとって重要な問題です。監査による意見表明は、企業にとって信用のもととなり、事業を継続的に運営するための欠かせない材料となります。
非監査業務(コンサルティングや上場サポートなど)
監査法人では、非監査業務といわれる監査以外の業務もおこなっています。その代表的なものがコンサルティングや上場サポートです。
コンサルティングとは、企業から相談を受け、課題を解決するための助言をおこなうことです。財務コンサルティングやM&Aコンサルティング、危機管理のアドバイスなどの例が挙げられますが、財務コンサルティングをおこなっている例がとても多いです。
また、未上場会社が、新たに証券取引所に株式を上場して一般の投資家に売り出すIPOに向けたサポート業務をおこなうことも多くあります。
監査業務の流れ
以下では、実際に監査法人が監査をどのようにおこなっているのか流れに沿って解説していきます。
監査契約
監査法人は、企業からの問い合わせを受けると監査人をアサインし、監査契約を締結します。契約を結ぶ際に問題になるのは、その企業との関係性です。監査はあくまで第三者がおこなうことが重要なため、取り引きがない関係先を選ぶように留意しましょう。
監査人は、依頼された案件をすべて引き受ける必要はないので、会社によっては契約を締結してもらえないケースもあります。たとえば会社の対応に問題があったり、過去の業績の透明性が疑われていたりする場合、監査人がリスク回避のために断る場合があります。
監査計画
契約の締結が完了したら、監査計画を立てていきます。
まず、会社の情報を共有した上で、監査がしっかりと行える状態になっているのかをチェックします。その上で、経理担当者などと話し合いながら、期首から期末にかけての計画をすり合わせます。
期中監査
計画が終了次第、期中監査に入ります。
企業は、監査人のオーダーに従って、仕訳表や試算表などの必要書類を提出します。企業は日頃から書類の作成と整理をおこなっておくとスムーズです。監査は、数回に分けておこなわれます。
実査
期中監査が終われば、実査のフェーズに入ります。
財務諸表に書かれている現金や小切手、有価証券について、記載通りに存在するのかどうかを詳しく確認していきます。現金の金額が1円単位で正しくならないと、管理に問題があるとみなされることもあるため日頃からの注意が必要です。
期末監査
最後に、期末監査です。
監査人が実査に確認した内容に問題がないかを最終確認をする段階です。スムーズにおこなうために、監査で使用した書類等をまとめておくのがおすすめです。
まとめ
監査は、会社の財務諸表のクリーン性を担保するために重要です。会社にとっては、信用を得ると同時に自社の業務状況を正しく把握するためにも必要な作業です。監査でどのようなことが見られるのか、なにが必要なのかを事前に把握し、計画性を持って監査に取り組むようにしましょう。
公認会計士や監査法人は、買収監査においても活躍します。買収監査とは、M&Aの書い手企業が売り手企業を最終判断するにあたり、会社の実態を把握するためにおこなう監査です。
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