譲渡
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2024/07/08

譲渡側オーナー様の幸せとは

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果たして売却金額最大化が最も大切なのか
 自ら創業をしたオーナー社長が自身の会社を売却することは非常に大きな決断です。その会社のために投じたオーナーの時間や労力が売却の金額として表れてしまう、という見方もあります。当然、売却金額の最大化を図ることは自然な流れです。  一方で、売却後に会社に残らざるを得ない期間の長さや、売却後に起こる大小のトラブルに対して、負うべき保証・弁済する補償の範囲がどの程度になるか、なども重要な論点となります。複数の買い手企業がいる際には、必ずしも提示金額の大きさだけで判断するのではなく、売却後の拘束期間やリスクの許容度も加味して総合的な判断をする必要があります。
売却後は自由か第2創業か
 会社の売却後、自由を求めて事業から引退するのか、それとも手に入れたキャッシュを元手に新たな創業を始めるのか、オーナーの 選ぶ道は人それぞれです。  自由を選ぶオーナーは、引退後に自身のキャッシュが減るスピードに驚かれる方がとても多い印象を受けます。現役時は会社の経費で処理していたものも、以後は全て自身のキャッシュで賄わければならず、入金のあった初年度にあまりにも出費がかさみ予想を大幅に上回るスピードでキャッシュが減る場合もあります。大金を手にすると価値観が変わるのは人間としての性で、予めそこまで想定しておくことが重要と思われます。  第2創業するケースとしては世界的に有名な経営者もしかり、最近では短期間で事業を売却するなど、ここ数年で多く見られます。一定程度のキャッシュを手にすることで、個人のバランスシートを整え、事業用資金・安定資産に切り分けることが可能です。結果として日々のキャッシュフローが安定し、精神的に良好な状態になります。目先のキャッシュを気にせずに新たな事業の成長に集中できる環境は、売却を経験したオーナーのみが為せる業です。IPOを目指す際も、この項目があることで、他社よりも踏ん張りの利く体制の構築が出来ます。  
譲渡企業の未来は自分の名刺代わりへ
 会社を売却する際に、「譲渡企業のステークホルダーの幸せと、事業の成長を願う」と語るオーナーは少なくありません。綺麗ごとか否かは捉え方によりますが、現実として譲渡企業が元オーナーにとっての名刺のような存在になる事は事実です。売却企業が、新たなオーナーの下で健やかに成長していけば、界隈からはオーナーの良いレピュテーションが広がります。特に、売却後に新たな事業を始める際には、そのレピュテーションが採用や資金調達など、様々な場面でポジティブに活かされます。
会社売却、その心は
 ゼロから会社を立ち上げ、成長させたオーナーは、これまで大きな熱量を持って、事業に取り組まれてきました。売却と決めた際も、同じ熱量を持って、売却準備に取り組むことで、売却後の人生が大きく変わると思います。初めて会社を売却する場合、分からない事だらけですが、情報をインプットしてしっかりと知識武装することは重要です。M&A事業者や各種専門家など、多くの頼れる仲間はあれど何より自身の決断が最後の砦です。 企業を立ち上げた優秀なオーナー様であれば、売却後の幸せに向けて知識を持つ事の重要性を感じて頂けると信じております。     問い合わせ先:中小PMI支援センター株式会社 コンサルタント           中小企業診断士 岩田惇 e-mail:info@pmis.jp
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