譲渡
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2020/07/21

会社を売る場合のスケジュールを教えて

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会社を売却する場合のスケジュール
親族内や従業員など身近なところに後継者が見つからない場合、社外に後継者(社)を求める方法としてM&Aという方法があります。 そこで、会社を売る場合のスケジュールを見ていきます。 1.仲介者・アドバイザーの選定 2.契約締結 3.事業評価 4.譲り受け(購入)企業の選定 5.交渉 6.基本合意書の締結 7.デューデリジェンス(買収監査) 8.最終契約締結 9.クロージング ご覧の通り、イメージは「見合い結婚」です。仲人さんにお願いして、釣書(つりしょ=プロフィール)を書き、先方に渡して、お見合い、そして結納、結婚という流れに似ています。
仲介者・アドバイザーの選定
社長が直接に同業者や親戚等に話を持ちかけるというやり方もありますが、実務上、当事者間でするの珍しいケースが多いかと思います。 やはり、専門的知識と情報を所有している仲介者・アドバイザーを活用されるのがベターかと思われます。 仲介者・アドバイザーの選択にあたっては、業務範囲や業務内容、活動提供期間、報酬体系、M&A取引の実績、利用者の声等をホームページや担当者から確認した上で、複数の仲介者・アドバイザーの中から比較検討して決定することが大切です。 「秘密保持に始まって、秘密保持に終わる」と言われるほど、M&Aに関して最も大切なことは、秘密を厳守し、情報の漏えいを防ぐことです。 外部はもちろん、親戚や友人、社内の役員・従業員に対しても知らせる時期や内容には十分注意する必要があります。経営者の不用意な一言でM&Aがとん挫してしまうケースもあるようです。 M&Aに関しては、社長が一人で判断し、一人で行動を起こすことが多いですので、仲介者・アドバイザーの存在は心強い相手となります。
契約締結
契約には、売り手買い手双方と契約を結ぶ「仲介契約」と、一方の当事者(売る手だけ、買い手だけ)と契約を結ぶ「アドバイザー契約」があります。 契約を締結する際は、調印前に納得のいくまで十分な説明を受けることが重要です。特に契約内容や、報酬等については、必要に応じて他の仲介者・アドバイザーや士業等専門家に意見を求めることも有効です(秘密保持に注意)。
事業評価
売り手会社から、仲介者・アドバイザーに決算書等の資料を提出します。 提出する資料や情報は広範多岐にわたりますが、会社の全体像を可能な限り正確に、負の部分(退職給与未払金、リース未払金など)も含めて開示します。 中小企業の決算書は、税務会計(簿価会計)が中心ですが、M&Aに関しては「時価会計」に基づいて、会社を評価します。 都合の悪いことを隠して、後の買収監査の段階で発覚した場合は、基本合意内容の修正や取引自体が破談となる可能性が高くなります。 また、成立後に発覚した場合には、賠償問題に発展することもあり得ます。
譲り受け(購入)企業の選定・交渉
仲介者・アドバイザーが、手持ちの情報から、購入候補先をリストアップし、売り手会社と相談し、候補先を絞りこみ、優先順位を決めます。 交渉の進め方は、売り手会社と候補者との関係や事業の類似度合、候補者と仲介者・アドバイザーとの関係度合等により様々の形態があります。
基本合意書の締結
当事者間の交渉により、おおむね条件合意に達した場合は、買収監査前の対価額や経営者の処遇、役員・従業員の処遇、最終契約締結までのスケジュールと双方の実施事項や、尊守事項、条件の最終調整方法等、主要な合意事項を記載した基本合意書を締結します。 ここは「結納」の段階と似ており、ここまでくると結婚がほぼ確定していると思ってください。
デューデリジェンス(買収監査)
買い手会社が、売り手会社の財務・法務・税務・事業リスク等の実態について売り手会社に出向いて調査することです。これまでは、仲介者・アドバイザーを介しての書類のやり取りですが、買い手会社側の税理士や公認会計士が、直接帳簿等を調査します。 また、売り手会社は、社内に知られないように休日に実施する等、配慮が必要です。
最終契約締結・クロージング
買収監査で発見された点や基本合意書で保留していた事項について再交渉を行い、売買契約書を締結します。 そして、株式等の譲渡や対価の受け渡しをして、M&Aは完結します。 売る方、買う方ともに相手があってこそ成立するのがM&Aです。 事業承継としてM&Aを検討されるなら、買い手側から適正に評価されるよう、日頃から適正な決算処理を意識するとともに、譲渡価格の交渉に備え、実態ベースで純資産を把握しておくことが大切です。 この話が経営者・資産家の皆様のお役に立つことができれば幸いです。 ※上記は執筆現在(2015.05.25)での情報です。
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