公開日 | 2024/10/10 |
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記載者 | 中小PMI支援センター株... |
法務・労務
就業規則作成だけでは不十分?労使慣行が認められてしまう訳
中小PMI支援センター株式会社はM&Aおよび中小企業経営の課題をワンストップで解決するために多彩な士業・専門家で組織する中小PMI研究会と一体で活動しています。
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日本全国対応可能
「就業規則」と異なる運用の注意
就業規則があるにもかかわらず、就業規則と異なった運用を長期間繰り返していると、「労使慣行」が成立しているとして、実態の方が優先されることがあります。つまり、労使慣行が実質的な就業規則になってしまいます。
例えば、10分程度の遅刻を黙殺することが労使慣行と認められると、就業規則(賃金規程)に基づいて賃金をカットすることができなくなるケースもありますので注意が必要です。
規定外の職場のルール
職場のルールには、就業規則、労使協定、労働協約等、明文化された規定があります。しかしそれ以外に、規定にはないけれど、いつの間にかできあがっていて、人づてに伝えられ、運用されているものはありませんか?
休憩時間のルールや賞与・退職金等のルールなど、どこの会社でも思い当ることはあるでしょう。中には、職場の秩序を乱すことになるような慣行もあります。今回は、こうした慣行について、どう考えればいいか押えておきましょう。
「労使慣行」とは
労使慣行とは、暗黙の内に事実上の制度となっていることを言い、労使慣行として認められると、就業規則が効力を失って、その部分は労使慣行が優先されます。では、労使慣行と認められるのは、どのような場合でしょうか。
判例に、次のようなものがあります。 「同種の行為または事実が一定の範囲において長期間反復継続して行われていたこと、 労使双方が明示的にこれによることを排除・排斥していないことのほか、当該慣行が労使双方の規範意識によって支えられていることを要し、使用者側においては、当該労働条件についてその内容を決定しうる権限を有している者か、またはその取扱いについて一定の裁量権を有する者が規範意識を有していたことを要する」
つまり労使慣行が成立するためには、以下の3つの条件がそろっている事が必要であると言えます。
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①制度や取扱いが相当長期間に渡って繰り返し行われいる
②その取扱いを従業員が承知していている(黙認しているケースも含む)
③経営者がその制度や取扱いを守るべきルールと思っている
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労使慣行を見直すには・・・
労使慣行というのは、労使双方で暗黙のうちに行われてきた事実上のルールですから、会社側・従業員側どちらに有利になっているかは問われません。実際の裁判例でも、ケースバイケースで双方の言い分が認められております。自社にとって望ましくないと考える慣行を見直したいのであれば、上記条件の③を否定すること、つまり、今後の取扱いをどうするか明示することが必要です。場合によっては、経過措置や猶予期間を置くなどの措置をとったり、個別に従業員に説明する必要があることもあるでしょう。
多くの従業員の頭には就業規則とか労使慣行とかの意識は無く、日々の業務の中で長年やってきたことが当たり前と思っていがちです。このような状態を放置すると、後で労働条件を変えるのが難しくなってきてしまいます。もし規程と事実上の取り扱いが異なっている事例があったら、早急に整合性をとることが必要ではないかと考えます。
問い合わせ先:中小PMI支援センター株式会社 コンサルタント
社会保険労務士 川本 真由美
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