法務・労務
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2024/03/18

M&Aに関する契約書作成とその実行支援の重要性

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M&Aに関する契約書
 M&Aに関する契約書といえば、株式譲渡契約書や事業譲渡契約書が代表的なものとして挙げられます。これらは中小企業庁の「中小M&Aガイドライン」でも契約書サンプルが示されていますが、どちらも10ページ以上にわたる分量となっています。これはむやみに分量を多くしているのではなく、売り手にとっても、買い手にとっても、意味や目的があって各条項が定められています。第三者とのM&Aであるにもかかわらず、譲渡対象と代金額程度しか定められておらず、せいぜい1~2ページしかないあまりに簡素な契約書だけで済ませてしまっている事案を見かけますが、往々にしてそのような事案では後になってからトラブルが生じ、かといって契約書に何も書かれていないので予防も解決もできない、ということが起こり得ます。  したがって、将来的なトラブルの可能性を想定してその予防のため、また、いざトラブルが発生したときの解決のため、契約書は事案に応じた内容を盛り込んでしっかりと作り込む必要があります(なお、上記の両契約書以外にも、「中小M&Aガイドライン」では、仲介契約・FA契約締結時の注意点についても触れられていますので参考になります。)。
当事者にとっての契約書の意義
 それでは、M&Aの当事者にとって、契約書には具体的にどのような意義があるのでしょうか。ほんの一例ですが、代表的なものをいくつか挙げてみます。  まず、売り手にとっては、代金さえ受け取ればそれで終わり、とはなりません。例えば、売り手の法人の代表者が金融機関からの借入れの連帯保証人となっていた場合、クロージング後に連帯保証人を買い手等に切り替えてもらう必要があります。賃貸借契約やリース契約についても同様です。連帯保証人を切り替えることができるかどうかの最終判断をするのは、金融機関や賃貸人、リース会社といった債権者ではありますが、少なくとも、買い手にはこの切り替えに向けた交渉や対応を行う義務を課しておかなければなりません。  これに対し、買い手にとっては、デュー・ディリジェンスで発見しきれなかった対象事業のリスクや簿外債務等が、M&Aのクロージング後になって顕在化してしまうことが一番の問題です。契約書には表明保証という形で定めを置くことになりますが、その違反が発覚した場合、速やかに対策を立てるとともに、損害賠償請求や契約の解除を見据えた交渉などの方策を検討することになります(契約書に損害賠償の期間制限や金額の上限が定められていることもありますので注意が必要です)。また、売り手が譲渡対象事業と同じ事業を新たに始めたり、同業者に転職するなどしてしまい、顧客や従業員を奪われてしまうこともあります。こちらは契約書には競業避止義務として定めを置くことになりますし、不正競争防止法などの法令による対策も考えられますが、違反があった場合の対応は同様に損害賠償請求や契約の解除などが考えられます。
実行支援の重要性
 このように、M&Aにおいては、リスクを予防すること、あるいはリスクが顕在化した場合の解決方法を考えて契約書を作成しますが、実際は契約書を取り交わしてそれで終わりではありません。買い手が代金を支払い、売り手が必要書類等を交付してクロージングに至っても、それでもまだ終わりではありません。その後に契約書通りの内容が実行されてはじめて、M&Aが完了したといえます。たとえば上記の例でいえば、連帯保証人が買い手に切り替わってはじめて、売り手は対象事業の責任から解放されます。つまり、当事者にとっては、成約しさえすればそれで成功とはならないのです。  とはいえ、契約当事者が自身の力だけで契約書の通りに実行するのは難しいことも多くあります。そのため、専門家による実行支援が重要となります。当事者としては、M&Aの過程で支援を行ったFAや各種士業などの専門家に積極的に相談することをおすすめします。            問い合わせ先:中小PMI支援センター株式会社 コンサルタント                     弁護士 今井丈雄 e-mail:info@pmis.jp
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