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2023/01/12

M&Aのポイント⑧ 基本合意書の信じ込みは危険です

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M&Aのポイント⑧ 基本合意書の信じ込みは危険です
基本合意書とは、株式譲渡契約や事業譲渡契約などM&Aにおける最終的な契約書の締結に先立ち、その時点でのM&Aの方向性について合意し、売り手側と買い手側の共通認識を示す合意書となります。また、その時点から最終契約書締結に至るまでの制限事項などが盛り込まれることも多いものです。 売り手側は、自分の会社を購入したいという相手が本当に現れるのか、そして売却に向けて活動をしているという情報が漏れないかという不安を抱えながらM&Aを進めるため、基本合意書の締結にまで至れば、ゴール間近にきたという安心感を持ってしまう面があります。 しかしながら、基本合意書は、「M&Aを成就する方向で双方が基本的に合意したということ」を示すだけであり、その法的効力は制限されていることが多く、買い手側に購入義務を課すものではありません。一般的な進め方であれば、買い手側は、基本合意書締結後にデューデリジェンスを行いますので、その際に判明した事実を基礎として、購入価格の大幅な減額や、価格以外の条件での譲歩を迫る可能性、場合によっては購入自体を断念することがあるのです。 そのため、売り手側が基本合意書を過剰に信じ込むことは、危険なものといわざるを得ません。基本合意書を締結した段階で、幹部社員などにM&Aの交渉を進めている旨を説明する経営者もいますが、これは止めるべきです。万一、デューデリジェンス後にM&Aが破談になった場合、経営者が会社や事業を売却しようとして失敗に終わったという事実を幹部社員などに知られてしまい、混乱が生じてしまいます。また、M&Aが成立した後のスムーズな業務遂行ができるように、買い手側との統合に向けた活動を始める経営者もいますが、これも万一破談になってしまえば、全くの無駄な行為となってしまいます。 基本合意書については、基本的に合意した以上の効力はないと考えるべきです。その後に予定されているデューデリジェンスや最終的な条件交渉を通じて、その時点ではどのような結果になるか分からないと冷静に判断しなければなりません。自分の会社を売却するということは、一大事ですので、最終契約書が締結され無事にクロージングするまで何が起きるか分からないという慎重な姿勢で臨まなければならないのです。
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