公開日 | 2020/12/07 |
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記載者 | 弁護士法人飛翔法律事務所 |
M&A
株式譲渡の留意点
弊所では各自が専門分野をもって活動しております。各企業の幅広いニーズにお応えできるものと考えております。
専門分野
契約書草案作成
事業再生
デューデリジェンス
法務支援
対応可能エリア
日本全国対応可能
株式譲渡の留意点
今回は、手続が比較的簡易簡便であり、中小企業のM&Aにおいても多く用いられている株式譲渡について、端的にご説明させていただきます。
1,株式譲渡とは
株式譲渡は、買い手が、売り手となる対象会社株主の株式を取得することにより、対象会社の経営権を獲得するというM&A手法になります。
2,株式譲渡のメリット
①手続が簡易簡便であること
手続が簡易簡便であることから、手続の簡便さやスピード感を重視したい場合には、株式譲渡が選択肢に挙がると思われます。特に、対象会社の株主が一人しかいない会社であれば、その株主から対象会社の全株式を譲り受けるだけで簡易にオーナーチェンジが可能になります。
②対象会社の事業活動に与える影響が少ないこと
株式譲渡の場合、対象会社の法人格に異動をもたらさないことから、M&A後に対象会社の事業活動に与える影響は小さいと考えられます(許認可等にも影響はありません。)。株式譲渡等を契約の解除原因として定めるCOC条項が無ければ、契約関係も引き継ぐことができます。
③売り手の手取り上のメリットがあること
税制上、株式譲渡対価は、基本的に株式譲渡益の一律2割の分離課税の対象となっているため、株式譲渡益の約8割が売り手のものとなります。事業譲渡や会社分割の場合には、譲渡対価が一旦対象会社に帰属し、これを配当で得る必要がありますので、より高額の課税となる可能性があります。
したがって、株式譲渡の方法による場合、売り手の手取り上のメリットは大きいといえます。なお、株式譲渡益の2割という課税よりも税務メリットが取れる範囲で売り手が対象会社の代表者や役員である場合に、役員退職慰労金と組み合わせることも考えられます。
④秘密裡に手続を進められること
合併や会社分割の場合、効力発生日までに公告や債権者保護手続を行う必要があり、事前にM&Aが行われることがオープンとなってしまいます。これに対し、株式譲渡の場合は、株式譲渡契約の締結等を秘密裡に行うことができ、取引関係等に与える影響を最小限に抑えることができます。
3,株式譲渡のデメリット
➀簿外債務や偶発債務までも承継してしまうおそれがあること
対象会社の法人格をそのまま引き継ぐことになるため、事業譲渡のように潜在的債務を遮断できないことになります。
したがって、簿外債務や偶発債務までも引き継いでしまう可能性があります。この点については、法人全体についてデューディリジェンスを尽くすと共に、表明保証条項等により出来る限りフォローしておく必要があります。
②株主が分散しているケースでは、かえって手続が煩雑になる可能性があること
株式が多数の株主に分散していると、各株主と交渉した上で契約を締結する必要があり、かえって時間と手間を要する可能性があります。この場合、株式譲渡のメリットであるスピード感が失われるのみならず、M&Aの目的を達成できない事態にもなりかねません。
このように、株式譲渡には様々なメリットとデメリットがあります。当該M&Aにおいて何を重視するのか、株式譲渡を選択する場合には、株式譲渡のメリットを十分に享受できる事案であるのか、専門家と協議をしながら、しっかりと吟味・検討していただければと思います。