M&A
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2020/11/10

M&Aの進め方 デューディリジェンス(Due Diligence)

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M&Aの進め方 デューディリジェンス(Due Diligence)
デューディリジェンス(Due Diligence;以下「DD」といいます。)は、M&Aの中核的な手続ですので、ご存じの方も多いかと思いますが、明確な定義があるわけではありません。実務的には、M&Aにあたって対象会社が抱える問題点等を調査・分析する手続という意味で用いられることが多いです。  DDの種類としては、法務、財務、税務、事業、人事、IT、環境などといったものがありますが、必ずしもこれら全てを実施する必要はありません(人事や環境などは法務DDに含まれることも少なくありません。)。対象企業の価値を正確に把握するためには、公認会計士による財務DDや税理士による税務DDが不可欠の手続となりますが、弁護士による法務DDでは、そもそもM&Aを実行できるのかといった点や事業遂行の障害となる法的な問題点はないかといった点などを調査することになりますので、法務DDも欠かすことができません。  法務DDは資料を開示してもらうことから始まりますので、まずは開示を請求する資料のリストを作成することになります。開示を請求する資料の例としては、各種契約書のほか、定款や社内規則、株主名簿、各種議事録、決算書、総勘定元帳などが挙げられます。法務DDで帳簿類が必要となることに疑問を持たれる方もいるかもしれませんが、帳簿類にも法的な問題点が表れていることがありますので、法務DDにおいても帳簿類の確認が必要となります。  資料の開示にあたっては、秘密保持の観点から、「データルーム」と呼ばれる部屋に開示する資料を全て取り揃え、そこに関係者が集まって資料を検討するという方法がとられますが、近年は、クラウド上で資料データを開示する「バーチャルデータルーム」を用いる例も増えています。  法務DDでは、資料の開示を受け、様々な法的リスクを調査することになります。法的に問題のある事項の具体例としては、譲渡承認請求がなされずに株式が譲渡されている場合や、経営権に変動があった場合に契約が解除される条項(COC条項)が契約書に記載されている場合などが挙げられますが、検討を要する事項は多岐にわたります。  開示された資料を検討していると疑問点などが出てくることが多いですので、通常は、開示資料を検討した後に、対象企業の役員等に対してインタビューを行うことになります。このインタビューでは、資料が開示されなかった(存在しない)ことから派生する問題も意識しながら質問を行うことになります。  インタビューが終わると、概ね対象企業に関する情報収集が終了しますので(追加の調査が必要であればその調査を行います。)、開示資料やインタビューを踏まえて、法的な問題点(場合によってはその対応策)について改めて検討し、報告書を作成します。  法務DDでは、最終的に、作成した報告書をもとに、口頭でも報告を行い、買い手側に対象企業が抱える問題点を適切に把握してもらう必要があります。
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