公開日 | 2023/05/29 |
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記載者 | 翠星企画株式会社 |
財務・税務
ROIC(投下資本利益率)とROA、ROEの違い
ROIC(投下資本利益率)とROA、ROEの違い
企業の稼ぐ力を表す財務指数である「ROIC(投下資本利益率)」をご存じでしょうか。
元々は海外で、投資家視点で長期的に企業の稼ぐ力を測る優秀な指標として注目されていました。
過去、多くの日本企業は、売上高や利益、キャッシュフロー等を重視し経営を行ってきました。
ところが、その売上や利益といった儲けを出すためにどのくらいの投資を行ってきたか、という部分を考慮されていないという指摘もされており、
近年、日本でもROICやROA、ROEが経営に取り入れられるようになってきました。
ROICはReturn On Invested Capitalの略で“ロイック”と読み、投下資本利益率と訳されます。
算出方法は
ROIC =税引後営業利益÷投下資本
となり、投下資本(純資産+有利子負債)に対して、どれだけ利益(税引後営業利益)をあげることができたか、を見るものです。
一般的には12~15%以上あると優秀な企業であるとされます。
他にも、企業の利回りや稼ぐ力を示す指標として「ROA」と「ROE」というものがあります。
このコラムでは、この二つとの違いについてお伝えしたいと思います。
「ROA」(Return on Asset:総資産利益率)は
総資産に対する利益の大きさを示すもので
ROA =当期純利益÷ 総資産
で算出します。
「ROA」の問題点は、当期純利益には本業以外の利益も含まれることにあります。
本業以外の不動産収入や、投資で大きく利益を得るとその企業の「ROA」の数値は上がります。
また、総資産も本業で利益を得るため以外に持っている資産が含まれることもありますし、
取引先との関係性によっては買掛金の支払いサイトを伸ばして調整するなど、数値の操作もできます。
そのため、本業の実態が見えにくくなることがあり得ます。
「ROE」(Return on Equity:自己資本利益率)は
純資産(自己資本)でどれだけの利益を効率良く得られるかを示すもので
ROE=当期純利益/純資産
で算出されます。
「ROE」の問題点は、当期純利益を使っていることから「ROA」で指摘したものと同じことが言えるのと、
純資産(自己資本)の数値を操作することが可能な点があげられます。
自社株買いをして純資産を減少させることで「ROE」を上げることができますし、
“ビジネスのために”調達した借入金(負債)が「ROE」では考慮されていないということも欠点となります。
それに対して、
「ROIC」の投下資本は株主資本に有利子負債を足したものを分母として計算しています。
買掛金や未払金などの事業負債は含みません。
そのため、株主資本比率を変えたとしても「ROIC」の数値操作はできず、債権者からの調達コストに応じた収益力を見ることができます。
利益も「ROA」と「ROE」は当期純利益で算出していますが、「ROIC」では本業の(税引後)営業利益としているため、より本業の実態を示したものとなります。
つまり「ROIC」の算出方法は、本業の実態を見るためにノイズを排除したものであると言えます。
そのため、企業の稼ぐ力を測ることができる指標として評価されています。
どの程度の投資によって、どのくらいの利益を得ることができるかを示せるので、投資家や金融機関からの評価も高まります。
以上、参考になれば幸いです。
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