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2022/07/25

M&Aのポイント⑥ グループに属する会社の買収

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M&Aのポイント⑥ グループに属する会社の買収
M&Aを考える際、買収対象となる会社がグループに属していることがあります。グループが買収希望事業のみならず多様な事業を展開している場合や、買収資金の関係などから、買主側が、グループ全体ではなくグループに属している一企業を買収対象として選択するケースです。 このケースでは、特に買主側として留意すべき点があります。 本稿では、グループに属している子会社のみを買収対象として選択するケースを例に、以下、買主側の留意点を具体的にご説明します。 子会社のみを買収する場合、力のある親会社が子会社の経営をサポートしているのではないか(親会社のサポートがなければ子会社の経営は悪化するのではないか)という点に留意する必要があります。 例えば、子会社が飲食業を営んでいるとします。この場合に、親会社側が自社の従業員だけではなく、その取引先に対してまで同店舗の利用を呼びかけ、時には優待券等を配布することによって利用促進を図っている場合です。同様の例は、飲食業に限らず他の事業でも想定されます。 また、親会社が子会社と共同で仕入れをすることでより安価に原材料の調達が実現できている場合も考えられます。子会社自体が仕入れをする量は多くなくても、親会社と共同で仕入れをすることによりボリュームディスカウントが図られているケースです。 その他にも、子会社が管理部門等を整備しておらず、親会社に業務委託をしており、その委託料が相場より安価である場合や、親会社が販売促進に協力している場合、親会社が営業店舗を安価な賃料で提供している場合なども考えられます。 以上のようなケースで、子会社のみを買収した後、親会社が従来の協力をしなくなれば、親会社のサポートで盛況していた店舗は不振になる危険性がありますし、共同仕入れから単独仕入れになったことで、調達価格が上がることになってしまいます。また、子会社が管理部門等の業務を親会社に委託していた場合には、子会社独自で管理部門等を設けることにより、人件費を含めて経費が増大することになったり、親会社の販促協力がなくなって販売量が減少したり、提供を受けていた店舗の賃料が上がったりしてしまいます。 このような事態は、デューデリジェンスの段階で、親会社の協力やその影響力の程度を十分に把握していなかったことから生ずるものです。 したがって、グループに属している子会社のみを買収対象として選択する場合には、親会社の協力やその影響力の程度をデューデリジェンスによって十分に把握し、バックアップがなくなった場合の子会社の状況についても正確にシミュレートしておくことが肝要です。 なお、デューデリジェンスの結果、バックアップがなくなることによる影響があまりにも大きいと考えられる場合には、買収後数年間は共同仕入れを継続する等の緩和措置をとるように親会社側に求めることも考えられます。
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