M&A
64
2022/05/30

M&Aのポイント⑤ 将来性を見極めることの重要性

記載者情報
M&Aのポイント⑤ 将来性を見極めることの重要性
M&Aを考える際、特に買主側として、対象会社を買収することによるメリット・デメリットを比較検討することになりますが、そのときにポイントとなるのが、買収における将来性を見極めることです。 ここでは、重要なものとして次の2点を取り上げることにいたします。 まず、内紛が想定されるか否かの確認及びその対応です。 株式譲渡、事業譲渡、合併、会社分割等という形態を問わず、会社を買収する場合には、自社とは別の会社の役員や従業員を抱え込むことになります。そして、対等合併等とはいっても、いずれが主体となっているかは当事者において理解している場合が多いですし、株式譲渡や事業譲渡、吸収合併であれば、形式的にも買収する側と買収される側が明らかとなります。 そのため、買収される側の役員や従業員は、特段不利益な待遇を受けるわけではなくとも、買主側における社風の違いに戸惑い、今後に対する不安感や買収自体への不満感などをもつことがあります。このようなマイナスの感情というべきものを受け入れる以上、買主側はM&Aに先立ち、自社の組織体制を盤石なものにしておかなければなりません。 というのも、買主側に紛争の種があり、不満をもつ従業員等が一定数存在すれば、対象会社内においてマイナスの感情をもっている従業員等と結合することは容易に想像でき、買収を発端として大きな内紛につながる危険性を有しているためです。 そこで、買主側としては、社内の組織体制が盤石なものであるかを改めて確認するとともに、仮に不安な要素があれば、予めこれを取り除いておくことが重要となります。 次に、買収後も日常のオペレーションが可能であるか否かの確認です。 経営者同士は友好的に買収を進めたとしても、従業員には買収が成立するまで情報が伏せられるのが一般的です。そのため、急に聞かされた従業員が反発することもあります。また、買主側の方針に従ってオペレーションを変えると、従来のオペレーションに慣れていた従業員が違和感を覚えて離職するきっかけになることもあります。 M&Aを進めるに際して、ヒトの問題は避けては通れない重要な点ですので、対象会社の従業員がM&A後の事業運営にも必要なのであれば、そのような従業員が離職しないように取り計らうことが必要になります。 しかし、このような取計いを講じていたとしても、一定の離職者が発生するリスクは残ります。また、離職者が出た場合、職場の雰囲気が不安定になり、追随して離職する者が出ることもあります。このような事態になると、残留した従業員だけでは日常のオペレーションに支障が生じることになります。 そこで、買主側としては、万一離職者が出た場合に自社から人員を出して自力で補強できるか、又は自力でオペレーションできるかを予め検討しておくことが重要です。仮に、完全な異業種を買収するのであれば、自社からの補強や自力のオペレーションは困難になりますので、人材流出を防ぐための引留め策をより充実させることが必須となります。また、実際に人材流出があった場合に備えて、オペレーションに協力してもらえる会社を事前に確保しておくことも重要です。
関連コラム