事業再生
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2021/10/24

【事業再生事例】新車販売・自動車整備業

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【事業再生事例】新車販売・自動車整備業
■事業概要  当社は新車販売の他、自動車整備などのサービスを行っている、創業60年と歴史のある、従業員60名規模の中堅企業である。  某自動車メーカーのサブディーラーであり、取り扱う車種は、高級車からビジネスカー、コンパクトカーと幅広いラインナップの商品を取り扱っている。  自動車整備などのサービスは、売上は新車の4分の1程度であるが、粗利率が高いため、既存顧客に対するサービスの取り込みが業績に大きく影響を及ぼしている。  具体的取組みとしては、既存顧客にはがきや電話、直接訪問などで定期点検の案内を行うことで顧客を取り込んでいる。  なお、当社の顧客は、法人・個人の顧客の他、業者と呼ばれる修理工場や仲介業者である。  整備のサービスは、個人や法人から直接請け負う他、これら同業社から、各社で実施できないような修理なども請け負っている。  売上の波はあるが、営業利益はほぼ黒字を維持している。  ただし売上高営業利益率は決して高くはない。また借入高が多く、売上高借入金比率は50%前後を推移している状況である。 ■問題点、課題  当社は経営者のワンマン体制であり、経営幹部2名が社長に対して何も指摘できていないため、様々な問題が発生している。  具体的には、経営者が非常に細かい性格のため、細かい数値や資料作りへの指示が多く、会議では膨大な資料が作成されている。  しかしその資料は経営や事業改善にまったく活かされていない。  情報管理体制も整備されていないため、車種別・顧客別の収益推移など、現場と幹部が一気通貫で共有すべき数値の整理が労働集約的に行われており、非常に生産性が低い状態である。  また、経営者が従業員に対し、必要以上の厳しい言動や態度が日常的に行われており、それにより大量の退職者を出すなども起きている。  経営者と従業員に大きな溝ができていて、従業員は経営者に対して不満を持ち、モチベーションも大いに低下している状況である。  その他、経営判断も独断的で、思いつきで決断、行動する傾向がある。  例えば店舗閉鎖という収益に多大な影響を与える経営判断も、閉鎖によりどの程度売上を維持できるか、その分の固定費を賄えるか等をシミュレーションによって吟味することもなく、突然決断している。  これにより、経営者と従業員との関係性は悪化している状況である。  一方で、現場の細かい業務については完全に放置されている。特に整備などのサービス面では、ルール化ができておらず、近年一次ディーラーからの支援を受けて改善に取り組んでいるが、その取組みを他店舗に展開できていない。 ■強み  当社の強みは、メーカーブランドを活用できること、商品力がありラインナップが豊富であること、そして長年取引のあるリピート顧客(法人・業者)である。 ■改善策  まずは経営者の意識を変え、従業員との信頼関係を取り戻すことが重要である。  そして従業員のモチベーションを向上させ、その上で従業員自ら積極的に現場の業務改善に取り組めるようにする。  さらにシステムの統合を図って必要な数値を自動で算出できる体制を構築する。  こうして、現場側と事務側の双方の効率化を図って生産性を高める必要がある。  また、経営会議・営業会議、共に必要なデータを絞り込み、会議で提示する資料を絞り込み、会議自体の質を高める必要がある。  具体的には、現在は大量の資料を読み込んで発表することに重点が置かれていたため、「現場で何が起きて、何が問題で、どう改善するか」と言う中身の議論ができていない。  そこで、試算表の予実管理(実績と、計画値・前年同月実績との比較)、顧客と商品の予実管理(同上)の資料をベースに、それ以外は補足に留める。  そして会議では課題解決の場として、現場の現状と課題の把握、そして解決策を見出し、その改善策を即取り組んでいくというPDCAが回る体制を構築することである。  整備についても、一次ディーラーのしくみを他店舗に展開し、現場の生産性を高めていくことも必要である。
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