事業再生
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2021/02/03

寿司屋/事業再生、ブランディング(実行支援)

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寿司屋/事業再生、ブランディング(実行支援)
■事業概要  腕利きの寿司職人が社長を務める老舗寿司屋の事例。  売上高は5,000万円程度で、社員数は社長の他、正社員1名と、パートが10名程いる。  かつては繁盛していたが、客がほとんど固定客のみであったため売上は年々減少していった。  そこで売上アップの施策として、女性客の獲得を狙ってランチメニューを拡大した。  その結果、女性のランチ客は増え、売上は増加したが、客単価が下がり、人件費等の経費も嵩んだため、利益は大きく減少した。  そのため今度は、夜の顧客を増やす取組みを実施した。  具体的には、低価格な居酒屋メニューを充実させていき新規顧客を取り込む戦略である。  その結果、サラリーマンなど新規顧客は増えたが、ランチメニューの時と同様に、利益率は減少した。  これらのランチ客、居酒屋客の増加により、売上は増加するも、利益は大きくマイナスとなり、とうとう赤字に陥ってしまった。 ■問題点  問題点は大きく2点。1つめは利益を増やすのではなく売上の増加に走ってしまったこと、そして2つめは「本格寿司屋」という原点を忘れてしまったことである。  ランチメニューを拡大して顧客は増え、売上は増加したが、ランチメニューは利益率が低く、ホールの負担も増えるため、パートの人件費が増大し、利益を圧迫した。  そして夜メニューも、低利益率の居酒屋メニューを拡大したため、ランチと同様に顧客や売上は増えたが、人件費が増えて利益は大きく落ち込んだ。  これらの結果、営業利益はマイナスに落ち込んでしまった。  さらに、これら安価なメニュー目的の顧客が増えることにより、多くの大学生のパートを採用したため、接客対応が悪化し、本格的な寿司を楽しみにしていた既存顧客が離れていってしまった。 ■強み  当社の強みは、腕利きの寿司職人の店であることである。  プロとしてのネタの見極めや、寿司職人としての技、そして仕入先の人脈も豊富である。  さらに、老舗として地域の知名度も高く、常連客も多いため、地域で高いブランド力を維持している。 ■改善策  原点回帰のため、まずはコンセプトを見直した。  具体的には、プロとして「ネタ」「シャリ」「握り方」へのこだわりをあぶり出した。  そして寿司屋としての当店に繰り返し足を運んでくれた既存顧客を大事にすることを決めた。  これにより、社長自身が今後の方向性を認識することができた。  そしてこのこだわりをメニュー表の最初のページに「コンセプト」として設けることで、ブランド力を回復させた。  次に、ランチメニューと居酒屋メニューを大幅に廃止し、低価格重視の顧客を排除した。  セットメニューは、ネタ組み合わせによる原価と利益率のバランスを取って、より魅力的なセットメニューを構築した。  さらに、社長が既存顧客に対し、ランチメニューや居酒屋メニューを廃止してメニューを大幅に見直したことを伝え、既存顧客が戻ってくるよう1人1人に声掛けをした。  その結果、売上は大きく下がったものの、利益は大幅に改善され、短期間で黒字化を実現し、資金繰りも改善していった。  それ以降、寿司の品質と、顧客とのコミュニケーションを大事にするという、従来の老舗寿司店本来の姿に戻り、収益はそれ以降も改善していった。 ■成長施策  業績が回復したことで、これら原点を維持したまま、SNSを活用し、より多くの顧客を取り込む施策も検討した。  そこで、寿司好きの女性客を増やす施策を実施した。  ただし、以前のようなランチメニューではなく、寿司は従来どおり本格的なネタで勝負し、それに加え、インスタ栄えするサラダ類やスイーツを追加、さらに女性に受け入れやすい日本酒も強化した。  これらをSNSで徹底的に発信することで、女性客は増加し、さらなる売上・利益の増加につながっている。
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