事業再生
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2021/01/06

【事業再生事例】車検整備・鈑金塗装業(ビジネスDD)

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【事業再生事例】車検整備・鈑金塗装業(ビジネスDD)
■事業概要  車検・整備・鈑金塗装事業を運営。  企業規模は、社員数は10名程度で、売上は数億円。  社長の急死により、急遽専業主婦で元社長の妻が新社長に就任した。しかし新社長は事業に精通しておらず、組織を統制できてず、前社長時代から業績は年々悪化するも、経営改善を指揮する力量も持ち合わせていない。 ■財務状況  近年、業績は下降しており、売上高営業利益率は▲8%程度にまで悪化している。  業績悪化の原因は売上の減少であり、従来の固定費を賄えなくなっている。  そこで、外部支援により、徹底的に経費削減等の経営改善を行い、無駄を徹底的に排除した。  その結果、業績は大きく改善したが、試算表では依然として営業利益でマイナスである。  そのため、本業の抜本的な見直しが求められていた。 ■問題点  ビジネスDDによって当社が行っている整備や鈑金、車検の案件別の収益管理の状況を確認すると、原価に材料費や外注費、経費は含まれているが、労務費が含まれていないことが判明した。  これは、案件別に正確な収益状況を把握できていないことを意味している。  また、見積算出方法においては、車検の場合、部品交換や塗装の工賃が不含で、さらに陸運局までの交通費等の流通コストも含まれていなかった。  その他、整備・鈑金の料金体系が固定化され、長年変更されていない。  特に鈑金は、顧客にから料金が見えにくく、企業側にとって料金のコントロールがしやすいにも関わらず、変更されていない状況であった。 ■強み  当社は顧客管理システムを導入し、DMによる車検の定期集客を行っている。  そして車検で来店した顧客に社長が菓子類を振る舞い、会話を楽しむことで、既存顧客との関係性構築に励んでいる。  この、他人にすぐに打ち解け合う社長の人柄の良さは、当社のような一般消費者向けのビジネスでは強みの1つと言える。  具体的には、来店客をもてなし、顧客とコミュニケーションを取ることで顧客と仲良くなり、早期に顧客と良い関係を築くことで、顧客のリピート化を実現しているのである。  また、鈑金部門のスタッフは全員スキルが高く、短期間で高品質な作業が可能である。 ■改善策  改善策は、まずは料金体系の見直しである。  具体的には、車検の部品交換時の工賃を追加、整備・鈑金の基本工賃を値上げし、鈑金修理価格も値上げすることである。  なお、車検については値上をせず、現状維持とすることが望ましい。理由は、顧客が車検の料金に対しては敏感であり、競合他社との価格競争も激しいため、値上げによる顧客流出の可能性が高くなるからである。  続いて原価計算を見直することである。  原価計算時に、材料費等に労務費を加えて算出して正確な原価を導き出し、早急に確実に利益を獲得できるしくみを構築する。  また、営業戦略を見直す必要もある。  現在訴求できているのは既存顧客の車検のみであるため、新たな顧客を獲得できていない。  そのため、オイル交換についてポスティングで新規顧客の集客を図る。  そして従来どおり、来店した顧客に対して社長が菓子類を振る舞って関係性を構築し、顧客情報を獲得してリピート化を図る。  これにより、新たな顧客を定期的に獲得してリピート化し、顧客を安定して増やすしくみを構築して、売上増加を図っていくのである。
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