事業再生
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2021/10/10

【事業再生事例】クリーニング業

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【事業再生事例】クリーニング業
■事業概要  一般消費者向け(B to C)、および事業者向け(B to B)のクリーニング業。  B to Cは、取次店経由でクリーニング品を預かる形態で、取次店のタイプは、当社直営店とフランチャイズ店の2種類がある。  B to Bは、直接ルートマンが各事業所を回ってクリーニング品を回収する。  外部環境は、クリーニング利用者、および消費者のクリーニング支出額は年々減少している。  それに伴い取次店も減少しており、かつ高齢化・後継者不足という、業界が典型的な斜陽産業となっている。 そのため当社の売上も年々減少しており、直近で経常利益がマイナスに陥ってしまった。  当社のような大規模クリーニング業は、資本集約型である。大規模設備を使い、大量のクリーニング品を短時間で迅速に洗浄・乾燥・仕上を行うことで、いかに1品当りのコストを下げることができるかが基本のビジネスモデルである。  しかし当社は、競合他社と比べると規模は大きいとはいえず、苦戦している状況である。 ■問題点、課題  事業デューデリジェンス(事業DD)を実施し、さまざまな問題点が発覚した。  まずは工場では、設備の老朽化が進行していることである。  最新設備と比較するとスピード面で劣ってしまう。  さらに毎期膨大な修繕費が発生している。日々の清掃も実施しておらず、故障したら修理する、という繰り返しである。  また、工場内での育成が十分ではなく、スキルの継承が進んでいない。  社員の多能工化(マルチタスク化)が組織的に実施されていないため、各工程を横断的に実施できる人材がいない。  その結果、従業員の中には作業をしていない時間が発生するなどの多くの手待ちが起きており、人件費の増大を招いている。  そもそも、各工場の工場長の役割が不十分で不明確であり、工場全体を統括できていない。  また各工程で班長も存在しないため、各工程の統制も取れていない。  営業・店舗運営では、顧客管理システムが導入されていないため、本社側で顧客を管理できていない。  また、B to B向けの営業活動も行われておらず、新たなホテルや事業所が建設されても他社に奪われてしまう。  その他、さまざまなサービス内容があるにも関わらず、それを店舗で紹介できておらず、「頻繁な低価格のキャンペーンで顧客を獲得する」という単純な手法を繰り返している。 ■改善策  まずは工場内を改革し、低コストで運営できる体制を構築する必要がある。  本来であれば最新の設備に入れ替えることが望ましいが、資金が足りない。  そのため、OJTで社員のスキル向上とマルチタスク化を実践し、現場スタッフがさまざまな作業を行えるようにする。  また、各工程でスキルの高い人材をリーダーとし、各工程で必要な人数を割り出し、必要な人数のスタッフだけで運営する。  そして各工程の作業を見直し、効率化を図るノウハウを見える化して実践する。  これにより、各工程を迅速に実施できるように徹底させる。その上で、ボトルネックとなる工程を見出し、改善する。  営業面では、顧客管理システムを導入して、現在の煩雑で労働集約型となっている業務を徹底的に効率化し、業務のスピード化と人件費削減に取り組む。  また、浸透していないサービス(布団の乾燥・預り、ボタン縫い、個別の染み抜きなど)を消費者に浸透させるためにチラシを作成し、サービスを浸透させる。  さらに、ルートマンに、B to Bの営業活動を実施させる。  ルートマンは、決まったルートをただ回るだけであり、時間的にも余裕がある状況である。  そのため、営業のバックグラウンドで、販促ツールの作成や、新規営業先を見出し、テレアポを行て回収ルートに組み込む部隊を構築する。  そしてルートマンに、既存事業者の回収に加えて、新規顧客を回るしくみを構築する。
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