事業再生
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2021/10/03

【事業再生事例】食品小売業

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【事業再生事例】食品小売業
■事業概要  当社は地方の中規模の食品スーパーを1店舗運営。店舗面積は約150坪程度。  もともと社長はギフトショップを運営していたが、その後ギフトショップを離れ、食品スーパーを立ち上げて本事業に専念していた。  ただし社長はスーパーでの勤務経験がなく、スーパーでの経験が豊富な経営幹部A氏に実質的な事業運営を任せていた。  当社の商圏内には大手ショッピングセンターなど競合があり、さらに近年、競合店が新たに開店したため、競争の激しい地域となった。  そのような中、当社は中高年者に人気があり、一定の固定客が存在していたため、売上が微減ながらも一定の収益力は維持していた。  しかし、内部の一部改装の是非をめぐって社長と経営幹部A氏と意見が対立した。  具体的には、鮮魚コーナーが以前は対面販売で、鮮魚に強い当社にとってウリの1つであったが、安全面を考慮するという社長がそこに壁を作ることを提案。  しかし対面で見通しの良さを重視するA氏はその意見に反対した。  しかし結局社長は壁を構築することを決定し、納得できないA氏は会社を去ってしまった。  そこで社長は、大手スーパーで店長経験のある若手のB氏を採用し、B氏を店長に抜擢して実質的な店舗運営を任せることにした。  しかしB氏の大手スーパーで培ったノウハウは、徹底した安売り訴求で集客を増やすという手法であった。  その後、店舗は安売りPOPで埋め尽くされるようになり、売上は増加したものの、利益はマイナスに転じ、業績は悪化していった。 ■問題点、課題  当社の問題は、まずは大手スーパーと同様に安売りに舵を切ったことである。  競争が激しく売上が伸びない状況では、安売りで顧客を増やして売上を伸ばしても、利益は落ち込んでしまう。  そのため本来は、ターゲットを絞り、「利益率」を獲得する手法を選択しなければならない。  この安売りは店長のB氏が主導したものであるが、社長自身がB氏に運営面を完全に丸投げしてしまっているため、社長がB氏をコントロールできていない。  また、店舗内でも工夫ができていない。  例えば、鮮魚や成果など、未加工の単品売りが主体であるため、中高齢者が食べやすいよう、カットしてパック販売し、利益率を上げる工夫が必要である。  その他、惣菜・弁当は、人気の惣菜があるが、それらを作れるのはパート社員1名だけであり、彼女が休む日はそれらの惣菜は顧客に提供できていない。  レシピの作成などで周囲全員が作成できるような体制も構築されていない。  さらに、最も収益力のある惣菜・弁当部門はパートのみで運営されており、店長から新たな惣菜の開発を要求されていても、日常の業務で多忙なため新商品の開発ができていない。  それにより惣菜のパート達は店長から厳しく叱責され、店長と惣菜・弁当部門の関係性が悪化している状況である。 ■改善策  まずは店長の方針を根本から変えなければならない。  そのためには、社長自身がコントロールするか、それができなければ、別の人間を店長する、あるいは外部のコンサルを導入するなどである。  新たな戦略は、価格訴求をやめ、中高年者をターゲットにして、徹底した商品を見直すことである。  具体的には、競合他社にはない、かつ中高年者に人気の商品を陳列し、その商品の良さをPOPに表記することで、顧客が楽しみながら買物をし、かつ高利益率で販売できるようにする。  他のスーパーにはない、かつ中高年者が欲しがる商品があり、その良さをしっかりと伝えることができれば、多少金額が高くても購入してくれる。  これを徹底することで、顧客のリピート率や一人当たりの単価も短期的に向上する。  チラシも、安売りだけでなく、これら新たな商品も前面に出して訴求することで、他のスーパーとの差別化を図る。  その他、鮮魚や青果などを丸ごとではなくカット販売に切り替える。  これにより、顧客にとって食べやすくなるためメリットがあり、さらに利益率の向上を図ることができる。  さらに、惣菜部門のパートを正社員化し、人数を増やす。  それにより、レシピの開発、新商品の開発を行い、人気の惣菜は必ず毎日陳列できるようにし、さらに中高年者に受け入れられる新商品を導入することで、顧客の「飽き」を回避し「ワクワク感」を提供するようにする。
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