事業再生
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2021/09/02

【事業再生事例】麩製造販売

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【事業再生事例】麩製造販売
■事業概要  当社は麩の製造販売を製造販売している。  企業規模は、売上が5,000~6,000万円程度、従業員数は15名程度で、約半数がパートである。  麩には大きく「焼麩」「生麩」「麩菓子」の3種類があり、当社は焼麩と麩菓子を製造しており、生麩は他社から仕入れて販売している。  営業担当が2名いて、管理者1名と担当者1名である。ただし管理者もプレイヤーとして実務を行っていて、主に既存顧客にその日の商品を届けている。  製造は、大きく前工程(焼成)と後工程(パッケージング)があり、正社員は前工程の焼成、パートは袋詰めなどの後工程を担当している。 ■財務状況  近年、売上が減少傾向であり、赤字が続いている状況である。  社長は当社に入社する前、他社の外食チェーンでメニュー開発を実施していた経験があるため、社長自ら新たな麩菓子の開発を手掛け、発売した。  するとその麩菓子が売上好調であり、売上は減少傾向であったが、直近では増加に転じた。  しかし、赤字解消には至っていない。 ■問題点、課題  営業の問題点は、実質的な営業活動が行われていないこと、そしてネット通販が中途半端なことである。  主な営業活動は、既存顧客へ商品を届けることであり、これは「営業活動」ではなく「納品活動」である。  また、ホームページからネット通販を行っているが、情報が不十分で、更新もされていないため、当社の魅力が伝わらない。  製造の問題点は、前工程の「窯入れ」という工程が、工場長1人しかできず、ここがボトルネックとなってそれ以降の業務が停滞することがあり、他の社員の手待ちが起きていることである。  また、後工程がパートのみであり、袋詰め作業が未管理なため、和気あいあいとおしゃべりをしながら作業を行い、業務スピードが遅い。  しかも、パートであるが、9時~17時の固定で業務を行っているため、本来午前中や、昼過ぎに終わる程度の業務量でも、のんびり17時までかけて仕事をすることもある状況である。  さらに、穴あきなど、できの悪い焼麩は廃棄しているが、当社は品質の良さがウリになっているため、品質向上のため採用基準を厳しくしているため破棄が増えている。  そしてそれらを有効活用できていない。  そのため、1日の製造数が限定される一方で、無駄な製造コスト(労務費・材料費)が嵩み、収益を圧迫しているのである。  そして経営・組織の問題点は、前工程・後工程、共に組織の管理統制の体制が構築できておらず、これらを補うための、社長のリーダーシップも不十分なことである。 ■改善策  まずは製造部門では、前工程では、徹底したOJTでマルチタスク化を図り、全員がすべての業務を行えるようにすることである。  そして後工程では、毎日の業務量と時間を管理し、社長自ら終了時間を設定し、終わればパートを帰宅させるようにする。  営業では、本来の営業活動を実施する。具体的には、各小売店を回り、商品を陳列するよう依頼する。  その際に、自社でPOPを作成し、合わせて設置してもらうように依頼する。そうすることで、当社の製品の魅力が伝わり、短期間で売上を獲得できる可能性が高まる。  またホームページを改装し、SEO対策を行って、ネット通販を強化し、商圏を全国レベルに拡充して小売客以外の顧客を取り込む。  なお、ネット通販は、当社オリジナルの「麩菓子」を中心に発売する。  商品開発では、社長自身が焼菓子のオリジナル商品を開発し、市場に投入する頻度を高めることである。  麩菓子であれば、「アイデア商品」で、比較的容易にさまざまなオリジナル商品を開発することが可能となる。  そして新商品は、今まで廃棄していた焼麩を活用し、無駄を削減する。  最後に、社長自らリーダーシップを発揮し、前工程と後工程のしくみ構築、および管理統制を徹底することである。  当社には、社長以外が部門の管理や統制が取れる人材はいない。  そのため、まずは社長自身が意識を変えることが重要である。  
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