事業再生
142
2021/08/12

【事業再生事例】酒類小売、酒類卸売

記載者情報
【事業再生事例】酒類小売、酒類卸売
■事業概要  当社は、店舗販売である酒類小売と、酒類の卸売を主体に事業を運営している。  店舗販売は一般消費者向けで、3店舗運営しており、酒類以外に清涼飲料やスナック類などの加工食品、その他近隣の農家から直接野菜や果物などを「産直青果物」として販売している。  卸売は、地域のホテルや宴会場、居酒屋、スナック、などに業務用として酒を卸している。  かつては家で酒を飲む習慣が多く、酒店から大量に酒類を購入する消費者も多かった。  しかし近年、自宅で酒を飲む習慣がない若者が増えているため、酒類の消費量は減少傾向であり、当社の酒類の店舗販売の売上も減少している。  当社はPOPに力を入れており、安売りPOPではない、商品力(価値)を高めるためのPOPを数多く展示している。  しかし、それでも効果は限定的である。また、近隣の飲食店も業績悪化により閉店するところも出てきており、卸売の売上も減少している。  一方で、産直青果物の売上は大きく増加している。農家から直接仕入れて販売しているため、スーパーよりも安くて新鮮であるためである。  そのため、仕入先確保のため直接契約を締結する農家を増やしていき、現在は400の農家から直接仕入れている。  ただし店舗では、「酒類」と「産直青果物」の客層が完全に分離している。  酒類は高齢の男性が多く、産直青果物は高齢の女性が多い。そしてそれらを合わせてに購入する顧客はほとんどいないのが現状である。 ■財務状況  前述のとおり、酒類の売上は、小売も卸売も減少傾向である。  産直青果物の売上は急増してある程度持ち直しているが、売上全体の構成比はまだ低い。  そのため、直近ではとうとう営業利益でマイナスとなってしまった。 ■問題点  当社の問題の1つは、小売店の顧客層が「年配者」に偏っており、若者が少ないことである。  このまま高齢者向けに商売を続けていると、今後も一定の割合で顧客が減少することは明らかである。  もう1つは、小売店内で「酒類」と「産直青果物」の客層が完全に分離しており、相乗効果が出ていないことである。  これら以外の問題点も多々あるが、まずはこの2点に集中して問題解決できる戦略と戦術を構築することが重要である。 ■強み  当社の強みではないが、小売店の特性として、様々な商品の取扱いが可能なことである。  製造業であれば「商品開発」が必要になるが、小売店は、現在市場にある商品を「検索」し、戦略に合わせた商品を「陳列」し、「訴求」すればいい。  つまり、近隣では販売していない、都心部などで人気の商品を検索して見出し、販売すれば、差別化した商品の販売が可能となり、訴求力は高まる。 ■改善策  当社の客層が年配者に偏っている。そのため、客層を若者にシフトしていかなければ、今後も売上減少は続き、業績の回復は見込めない。  一方で、近年若者、特に若い女性に人気の、クセのないスッキリ味の、デザインもかわいい酒類が多く販売されている。  そのため、ターゲットを「若い女性」にシフトして、若者向けの酒類を多く取扱い、それらをポスティング等で徹底的に訴求することである。  さらに若い女性に親しまれるような、お洒落な酒類のおつまみ(加工品)も増やすのである。  その上で、加工品について、当社の強みである「価値向上のためのPOP」を活用して客単価向上を図る。  若い女性向けの、いわゆる「飲みやすい」酒類と、それに合う「お洒落な」加工品を多く販売し、POPで訴求することで、従来「産直青果物」しか購入していなかった女性高齢者も、一定の割合で、加工品や酒類を購入することが期待できる。  また、酒類のヘビーユーザーの男性高齢者も、新たな加工品には興味を示すことも期待できる。
関連コラム