中小企業支援
70
2021/06/08

「自社の強みがわからない。。。」解決方法は? ①

記載者情報
「自社の強みがわからない。。。」解決方法は? ①
 企業が成長戦略を描く際に必要なのが、自社の「強み」を活用することです。  ただし中小企業の経営者は、自社の強みを理解していない場合が多くあります。  これは、多くの中小企業が、飲食業やサービス業などでは競合他社と同じような商品やサービスを提供していること、製造業では既存製品を既存顧客に対してだけ継続して販売していることが原因です。  つまり、特に自社の強みが何かを把握していなくても、一定の顧客が存在しているため事業が回っているのです。  しかし近年、スマホやSNSの台頭で世の中が様変わりし、世界中の企業や個人が競争相手となり、その中で生き残らなければならなくなりました。  そのため、他社と同じ製品やサービスであったり、既存製品を既存顧客に販売したりするだけでは生き残れなくなってきています。  つまり、事業を安定して維持し、成長させるためには、自社の強みを明確にし、その強みを強化し、発信して、自社独自の価値を見出していくことが重要なのです。  そこで、どうすれば自社の強みを見出すことができるか、その3つの手法を2回にわたってお伝えします。 ■マーケティングの4P  まずは「4P」と「ブランド」、「信頼関係」という切り口で課題と強みを抽出する方法です。  4Pとは、商品(Product)、販促(Promotion)、流通(Place)、価格(Price)の頭文字をとったもので、主にマーケティングで差別化要因を抽出する際に使用するフレームワークです。  そして4Pは企業側の視点で抽出するものであり、各4Pに対応して顧客側の視点で分析する「4C」というのもあります。  4Cとは、企業側の強みである4Pの各要素に対応した顧客のベネフィット(便益)です。つまり、企業側の強みが、顧客にとってどんな便益を誘起しているのかを表しています。  例えば、某掃除機の「吸引力が変らない」という企業側の製品の強みに対し、4Cは「長時間連続使用しても素早くきれいに掃除できる」「手間がかからず掃除が楽」という顧客側の便益がある、ということです。  4Pの「商品」では、例えば商品自体の特徴、商品ラインナップが豊富にあるか、品質や使い勝手、デザイン、使用している材料や産地、製法などで差別化できるものはないか、あるいは課題は何かを探っていきます。  そして商品に対応する4Cの「顧客の価値」は、これら商品の機能的価値(商品・サービスの機能や性能によって得られる利便性、利益のこと。  例えば時計の場合は、時刻を正確に知らせること)や、情緒的価値(商品・サービス独特のデザインや色、形状で得られるポジティブな感情のことで、美しさや高級感など。  時計で言うと、ロレックスなどの見た目やデザイン、高級感などを指す)になります。  次に4Pの「販促(販売促進)」ですが、営業力や販促力、通信・ネット販売の状況、安定して売上を確保できる重要顧客の存在、人脈、SNSでの発信力などです。  そして販促に対応する4Cの「コミュニケーション」は、この販促活動による顧客との接点であり、わかりやすい丁寧な詳細説明によって商品・サービスの価値を知ることができたり、それにより個人の悩みが解決したり、個人の満足度が得られたりすることです。  続いて4Pの「流通」は、より多くの流通チャネルを持っているか、広い商圏で商売ができているか、ターゲットが集まりやすい立地か、などです。  そして流通に対応する4Cの「利便性」は、メーカーや販売側との接し易さ、アクセスし易さ、買い易さを指します。  最後に4Pの「価格」は、標準価格や値引き価格がターゲット顧客に適合しているかです。  これは単に安いだけではなく、高級品については、高価格帯であることが強みになります。  また、支払方法や取引条件が、ターゲット顧客の買い易さにつながっているかも該当します。  そしてこの価格に対応する4Cの「顧客のコスト」は、顧客の不安感といった心理的ハードルや、訪問しなければ購入できない場合の店舗までの距離や時間、手元に商品が届くまでの期間、購入金額といった物理的コストを指します。 ■ブランド、信頼関係  次に4P/4C以外で差別化ができる要素として、「ブランド力」があります。  ブランドとは、前述しましたが、会社名や商品名、或いは店舗名などの名前そのものがブランドではありません。  顧客が、その会社や商品・サービスに対して思い浮かべる「価値イメージ」です。つまり顧客が、会社名や商品名を見聞きして、どんなイメージを連想するのかがブランドです。  例えば、アップルと聞いてイメージするのは「革新的」「おしゃれ」「高機能」などであり、これらがブランドになります。  そのためブランド力は、知名度があることが前提になるのですが、単に知名度が高いだけではなく、その企業や商品から良いイメージを連想させることができているかどうかがポイントになります。  そしてターゲット顧客に対して、どの程度ブランド力があるかが大きな差別化要因となり、顧客との継続的、かつ高利益率での取引に大きな影響を与えます。  ブランド力のある会社は、顧客が、リピーターより上位概念の「ファン」となっている場合があり、顧客は指名買いをしてくれるため参入障壁が築けているのです。  そしてブランド力のある企業や商品を購入する顧客側のベネフィットですが、まずは色々と選んだり吟味したりする必要がなく、意思決定が容易になります。  また、その企業や商品が持つ価値を獲得できるため満足度が得られます。  そして最後が、顧客との「信頼関係」が構築できているかどうかです。これは、商品の機能面や情緒面での価値ではなく、「人間同士のつながり」に価値があるという考え方です。  大企業の場合、担当者が頻繁に変わったり、意思決定に上層部が関与したりするため、信頼関係が築きにくくなります。  そのため、相見積もりで価格を見極めたりしながら、自社の商品に最も適合した商品を適正価格で合理的に選択するケースが多く見られます。  一方で中小企業の場合、古くから取引関係を継続していて、取引が信頼関係の上で成り立っている場合も多くあります。  その効果は、互いをよく知ることで安心感があり、特別な取引の場合に納期面や価格面で依頼しやすくなることです。  強力なライバルが現れても、ある程度自社の都合に合わせてもらえる関係です。  ただし、ネット販売の普及など、価格競争が激しい昨今では、従来までの関係性を考慮する余裕がなくなって、低価格の商品を選択するケースも増えています。  また、信頼関係が社長個人で成り立っている場合、買収後に新たな社長が就任することで、その関係性が失われる可能性も大いにあります。  以上のとおり、自社の強みを見出すには、まずは「4P」、「ブランド」、そして「顧客との関係性」を切り口にして強みを探っていくことが効率的な方法です。
関連コラム