事業再生
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2021/04/12

大企業あるある⑥:価値を生まない社内向けの無駄な業務が多い

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大企業あるある⑥:価値を生まない社内向けの無駄な業務が多い
 中小企業は大企業と比べて、経営体制や組織体制が不備な場合が多くある一方、中小企業が規模を拡大して社員数が増えてくると、経営者は、日本の大企業の現在の経営体制、組織体制を目指し、模倣しようと試みます。  しかし、経営体制や組織体制がしっかりと構築できていると言われる現在の日本の大企業には、経営や事業運営面でさまざまな問題が発生しています。  例えば、無駄な作業の増加による生産性低下、意思決定スピードと質の低下、組織体制の保守化などです。  つまり、小規模の組織体でのメリットが失われてしまうのです。  そこで9回にわたって、このような大企業でよく発生する、一般的に「大企業病」と言われる現象を「大企業あるある」として紹介します。  大企業あるあるの6回目は「価値を生まない社内向けの無駄な業務が多い」です。 ●価値を生まない無駄な業務の例  大企業は前述のとおり、ルール依存体質、忖度体質、上層部は仕事をしないという特徴があります。  その結果、さまざまな価値を生まない社内向けの無駄な業務が発生します。  例えば、上司が会議に出る際に、その場での質問に対して「わからないので後で調べて報告します」と言えないために、使用するかどうかわからない大量の想定問答集を部下に用意させます。  また、決裁者の上層部が、その内容の理解が低かったり関心が薄かったりする場合に決裁者を説得するために様々な資料を作成したり、何度も交渉したりします。  その他、社内会議で経営幹部など上層部が出席する場合、必要以上の準備や接待で時間をかけること、などです。  これらは上層部が現場を理解し、自身の仕事を自身で実施すれば必要のない仕事であり、これら無駄な業務で多くの人材と膨大な時間を要しているのです。 ●日本の会議の問題点  また、会議も同様に多くの無駄が起きています。  日本の会議はかつてより「無駄な会議が多く、会議自体も長い」とよく言われているとおり、日本の会議にはいくつかの問題点があります。  例えば、定例会などで決まった日程で定期的に開催される会議では、会議の目的がいつも曖昧で、開催する価値がないものも多く存在します。  集まることに意味を見出しているのです。  また、会議をしても結論を出さず、単なる話し合いで終わってしまうケースも多くあります。  政治の世界で「議論を尽くす」と言われますが、日本は議論をするところに価値を見出しているのです。  これは、会議の場で知識を披露し、色々な指摘などをすることで存在感を示す人材がいることも原因の1つです。  しかし会議だけで存在感を示す人は成長しません。  なぜなら自身の知識を伝えたり指摘したりするだけで、自身で結論を出していないからです。  行動力のある人は、自身で常に結論を出して行動します。  そして実際に行動することで、結論を評価することができ、改善できます。つまり自身でPDCAを回せているから成長できるのです。  さらに、会議で決定しても、その結論自体の質が低いことが多くあります。  例えば上層部の会議の場合、出席者は皆現場の情報に詳しくありません。  そのため、現場の現状把握が不十分なまま議論されて、中身の吟味ができなくなるのです。  また、一般社員の会議では、提案内容の質に関わらず、知識が豊富な人や声が大きく発言力のある人、ポジションの上の人の意見が通ることが多くなるため、結論が偏ってしまいます。  さらに、議論が対立した時に、会議のリーダーが協調性・調整を重視してしまい、対立する双方が納得するように「間を取った」結論を導くことも多くあります。  しかし社員が納得するかどうかは二の次であり、あくまで結論は、より質の高い、合理的で価値の高いものを選択すべきなのです。 ●会議で、議論と結論の質とスピードを向上させる方法  会議の質とスピードを上げるためには、会議の中で答えを出すこと前提で進めることです。  そして現状を把握して問題点が何かを明確にし、その原因を究明した上で、解決のゴールを描き、そのゴールに到達するための手法を吟味することです。  例えば、現場で議論する内容の状況は事前に調査して資料として用意する必要があります。  そして会議では、それらの資料でまずは全員が現状を正確かつ詳細に理解し、その上で、問題点やその原因の究明と解決の「方向性」と「具体策」を吟味するのです。  ここに議論を集中させるのです。  こうすることで、スピーディかつ高品質な議論と結論を導くことができるのです。
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