財務・税務
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2020/09/16

予測不能な現状で、必要資金額を計算するには?

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売上半減が1年続いたとしたら
今回のコロナの影響で、今後経済にどのぐらいのダメージがあるのか、いつ頃コロナ前の水準に戻るのか、様々な推測がなされていますが、実際のところは誰にもわかりません。 もちろん、情報を収集して、アンテナを張っておくことは非常に重要なことだと思いますが、どこまでいっても、正しい予測は不可能です。 ただ、経営者としては、自社にどのぐらいの影響があるのかを見定めなければ、今後の対応策が立てられないことも事実です。わからない、とばかり言っていられる状況でないことも理解できます。 顧問先様をご訪問させて頂いた先で今後の予測を聞かれることも多いのですが、個人的には、今後どうなるのかはわかりませんが、今の売上が半分になり、それがとりあえず今後1年間続くと仮定して考えてみましょう、とお話ししています。 数字を扱う人間としては、やはり数字に基づいてお話しするべきだと思いますが、その場合わからないなりにも、何か前提をおいて考える必要があります。 今回のコロナによる波及スピードは、業種によって多少異なることもありますので、「売上半減」や「今後1年間」という部分は自社の状況により変えて頂いていいと思いますが、まずはこういった前提から考えてみてください。 その前提で、今後1年間持ちこたえるだけの資金が今手元にあるかどうかを確認してください。
売上高が1割減ると、利益は何割減るのか?
上記のシミュレーションをする上で、基本となる考え方が「損益分岐点」です。 大まかには、経費を固定費と変動費に分けることで、損益分岐点売上高=利益が0になる売上高を計算する方法です。 ◆損益分岐点売上高=固定費÷限界利益率 ※限界利益=売上高-変動費 ※限界利益率=限界利益÷売上高 例えば、現在の年商が1億円、限界利益率が60%、固定費が5,000万円とすると、 損益分岐点売上高=5,000万円÷60%=8,333万円 となり、売上高が約17%減少しても、利益は0を維持できることになります。 一般的に、利益の減少率は、売上高の減少率の数倍になります。この倍率を計算するのが、以下の式です。 ◆利益感応度=限界利益÷営業利益 例えば、上記の例で計算すると、 限界利益=1億円×60%=6,000万円 営業利益=6,000万円-5,000万円=1,000万円 限界利益÷営業利益=6,000万円÷1,000万円=6 つまり、売上高が1割減れば、利益は6割減ることになります。 実際、上記の例で売上高が9,000万円(1億円×90%)になれば、 営業利益=9,000万円×60%-5,000万円=400万円 となり、利益は1,000万円から6割減っています。 売上高が1割減っただけで、利益が6割も減るのであれば、当然資金繰りは厳しくなります。
キャッシュフローベースでの損益分岐点を計算するには
上記の損益分岐点の計算は利益ベースですので、キャッシュフロー(CF)とイコールではありません。 CFベースでの損益分岐点を計算するには、以下の計算式を利用します。(簡略化するため、税金は考慮していません) ◆CF分岐点売上高=(固定費-減価償却費+借入返済額)÷限界利益率 例えば、上記の例で、減価償却費が1,000万円、借入返済額が2,000万円とすると、 CF分岐点売上高=(5,000万円-1,000万円+2,000万円)÷60%=1億円 となり、損益分岐点売上高の8,333万円では、CFはマイナスになることがわかります。 もし、このケースで売上高が半分になれば、 売上高5,000万円×60%(限界利益率)-(固定費5,000万円-減価償却費1,000万円)-借入返済額2,000万円=△3,000万円 となり、借入返済後で3,000万円のCFマイナスとなります。 こういったシミュレーションを積み重ねていくことで、必要な資金調達額を計算してください。 この話が経営者・資産家の皆様のお役に立つことができれば幸いです。 ※上記執筆は2020.7.6。今後の動向により変更される可能性がありますので、ご注意ください。
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