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2020/07/22

株式投資を法人でするとどうなるか

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株式譲渡の多かった平成19年分確定申告
今年の確定申告の特徴の1つに、やはり株式譲渡の申告が多かったことが挙げられる。その中で、中小企業経営者から「法人で株式投資をするのと、個人で株式投資をするのではどちらが有利か」と聞かれることがあった。今回はこの問題を取り上げてみたい。 平成19年はいわゆる“サブプライム・ショック”の影響もあってか、株式譲渡申告では損失をしている方が大半だった。中小企業経営者の方の中には、「こんなことなら、会社でやっておけばよかった」と思われる方もいらっしゃるかもしれない。
譲渡損失が発生する場合
ではケース別に、個人と法人を順に比較して検討していこう。 まず、株式譲渡で損失した場合のケースを考えてみよう。個人であれば、上場株式等の譲渡損失の場合、確定申告することによって3年間は譲渡損失を繰り越すことができる。繰り越した譲渡損失は、株式の譲渡益とのみ相殺することができる。 一方法人であれば、株式の譲渡損失は法人全体の損益計算に含められるため、本業で利益が出ていれば、その利益と相殺することができる。つまり法人の場合には、株式の譲渡益とのみ相殺できる、というような制限はなく、損益通算は実質無制限となる。 また、本業の利益よりも株式の譲渡損失の方が大きければ、相殺しきれなかった損失は法人の繰越欠損金として最大7年間繰り越すことができる。 もちろん本業が赤字の場合であっても、本業の赤字と株式の譲渡損失を合わせて、最大7年間の繰越が可能である。この点でも、3年間の繰越ししか認められない個人よりは有利となる。
譲渡益が発生する場合
逆に譲渡益が発生する場合はどうなるだろうか。個人の場合、現在上場株式の譲渡益に対する税率は優遇されており、所得税と住民税合わせて10%の税率となっている(平成20年度税制改正において改正予定)。 一方、法人の場合には、前述の通り、法人全体の利益に対して課税されるため、税率は法人の実効税率ということになる。所得の少ない中小企業であれば税率も低くなるが、所得が大きくなってくれば、約40%の税率で課税される。 ただ、本業が赤字の場合には株式の譲渡益と本業の赤字が相殺できるため、この場合には結果的に法人有利となるケースも考えられる。
消費税にも影響あり
また法人で株式売買をする場合にもう1つ影響してくるのが、消費税の問題である。もともと法人が消費税の免税事業者であれば全く関係はないが、課税事業者である場合には、課税売上割合の計算に影響してくる。 具体的には、譲渡額の5%を課税売上割合計算時に、非課税売上として計算に織り込む必要がある。その結果、課税売上割合が95%を割り込めば、消費税の納税額が増えるケースも考えられる。
所詮は結果論
結論としては、ケースバイケースであるため、一概にどちらが有利であるとは断言できない、ということになる。そもそも株式相場など的確に予想できるものでもなく、有利か不利かといっても、最終的には結果論でしかない。事前にシミュレーションして対策を打つ、というのは性質的に難しい問題であることだけは確かだ。 ※上記は執筆現在(2008.03.11)での情報ですので、今後の動向により変更される可能性がありますので、ご注意ください。
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