譲渡
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2020/07/16

もう後回し出来ません!株主・株券の整理

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株主整理は現経営者の仕事
中小企業の場合、正式な株主名簿を作成されていないところも多くあります。 この場合、私たち税理士は、まずは法人税申告書の別表第二で株主をチェックしています。 本日はその株主名簿についてです。 平成2年の商法改正前においては、株式会社を設立するためには最低7人の発起人が必要であり、各発起人は1株以上の株式を引き受けねばなりませんでした。 そのため、平成2年の改正前の株式会社にあっては、株主が7人以上となるように、親戚や従業員等の名前だけお借りして体裁を整えるということもありました。 いわゆる名義株というものです。 中小企業庁「事業承継ガイドライン」によると、全国の経営者の平均年齢は59.3歳ですが、経営者年齢のボリュームゾーンは66歳前後となっています。 さらに中小企業経営者の引退年齢は、平均67~70歳程度というデータもあり、今後5年程度で多くの中小企業が事業承継のタイミングを迎えると推測できます。 年齢から考えると、現経営者が中心となって株主整理をできる時間も、名義上の株主さんと直接交渉できる時間も限られていることがわかります。
株式分散リスク
会社の経営権を安定させるためには、後継者に集中的に自社株式を承継させたいものです。 全株式の承継が理想ですが、せめて議決権の1/2超、できれば2/3以上、欲をいえば3/4以上あれば、経営権は安定します。 平成27年東京商工会議所が実施しアンケートがあり、「少数株主の存在で経営上困ることがあると答えた人」の回答をみると、次のような問題がありました。 ・株式買取請求された ・株主代表訴訟のリスクがある ・100%保有でないとM&Aがやりにくい ・株主総会が混乱する ・会計帳簿閲覧請求を受ける ・株主から役員にするように要請を受けた 他 では、そうならないために現経営者は今、何をすればいいのでしょうか?
名義株・所在不明株主の整理
まずは、だれが株主なのか現況を把握する必要がありますが、そのために収集しておくべき資料を以下に挙げておきます。 ・原始定款(当初の株主名、住所、株数がわかる) ・過去の株主総会議事録(過去の株主の異動がわかる) ・遺産分割協議書(相続による承継がわかる) ・贈与契約書(贈与による承継がわかる) ・法人税申告書別表第二「同族会社の判定に関する明細書」(現在の株主名がわかる) これらを照らし合わせ、実質株主と名義上の株主が異なる場合には、名義株主と交渉してみてください。経緯のわかる現経営者が交渉されるのがベストです。名義株の場合は、本人の了承を得て実質株主に変更します。 少数株主については、税務上の価格などをベースに買取価格を算出し、個別に交渉します。 また、5年以上継続して会社からの通知が到達しない株主が所有する株式は、公告・通知といった会社法の手続きを経て、会社は処分することもできますが、手続きが厳格なため、個別にお問合せください。
今は株券不発行会社が原則
平成18年に会社法が施行され、原則株券不発行会社になりましたが、それ以前は株券発行会社が原則でした。 自社がどちらなのかは登記簿謄本を見ればわかります。 もし株券発行会社であるなら、現物を確認しておきましょう。現物がない場合には「株券紛失登録手続き」という方法もあります。 株券発行会社の場合で問題がないようなら、定款及び謄本を変更して株券不発行会社に変更されるこもご検討ください(弊社で司法書士のご紹介も可能)。 この話が経営者・資産家の皆様のお役に立つことができれば幸いです。 ※上記は執筆現在(2017.08.21)での情報ですので、今後の動向により変更される可能性がありますので、ご注意ください。
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