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JUN.2022 Vol.4 ポストコロナ時代のM&A 中小企業でもPMIが本格普及の兆し

2022年06月07日

新型コロナウィルス感染症の拡大による「不況」一色だった小規模M&Aの世界でも、2022年に入ってポストコロナというべき傾向が顕著になってきた。2021年第一四半期(1月~3月)でバトンズに登録した譲渡希望事業者は680者であったのに対し、2022年同四半期では1054者と1.5倍以上に増加している。しかし、その理由を分析すると、明確な変化を見て取ることができる。特に目に付くのが、2021年に主流だった経営不振の割合51.6%から43.6%に大きく減少していることである。

このことから全体のトレンドとして、コロナ禍での緊急回避的M&Aから、ポストコロナ時代を見据えた事業戦略としてのM&Aに転換しつつある傾向を見てとることができよう。

バトンズにおける実際のM&A事例からみた、ポストコロナのM&Aのトレンドは以下の通りである。

(1) コロナ以後の受診控えから医療機関のM&Aが急増
(2) 材料高、人件費上昇の影響が営業を再開した飲食店を直撃
(3) 女性経営者によるM&Aの増加
(4) 中小M&AにおいてもPMI(買収後の統合作業)が本格普及の兆し

 

 

 

【コロナ以後の受診控えから医療機関のM&Aが急増】

帝国データバンクが2021年7月8日に発表した「急増するクリニックの廃業、過去最多ペースで推移 ― コロナ禍で長期化する受診控え、経営に大きな打撃」によれば、2021年1月〜6月までに累計267件の廃業が確認されており、過去最多ペースで推移している。この原因は外出自粛やテレワークの浸透に伴う医療経営の悪化が大きな要因だ。

バトンズにおいてもこの傾向は非常に顕著になっている。医療・介護業界における譲渡希望事業者は昨年と比較して4pt増加し、飲食・食品業界に次ぐ、第二位となった。殊に入院施設を持たないクリニック(無床診療所)の割合が35%から52%へと激増しており、新型コロナウィルス感染症拡大による患者減少の影響をもっとも大きく受けたことは明らかである。コロナ後も抜本的な医療経営の改善見込みは立っておらず、この傾向が当面続くことが予想される。

参考:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000313.000043465.html

 

【材料高、人件費上昇の影響が営業を再開した飲食店を直撃】

飲食・食品業界の譲渡希望事業者は、全体の14%から20%に上昇し、業種単体としてはもっとも譲渡希望者が多い業種となった。目下も引き続き売却を検討する経営者が増加を続けているが、細かく分析するとその傾向には大きな変化がみられる。2021年には緊急事態宣言及びまん延防止等重点措置による夜間営業の取りやめの影響を受け、業種全体の19%を占めていた居酒屋・バーが、2022年には約半分の10%に減少した。

その一方全体的に2〜4pt幅広く増加しているのが、ラーメン店や自社ブランドの飲食店などである。この背景として原材料の高騰や、コロナ禍で一時的に従業員を減らしていた店舗が営業を再開したものの、人手不足や人件費の上昇により危機に陥っているという点が挙げられる。飲食・食品業界全体としてはまだまだ譲渡ニーズが落ち着くことはなさそうだ。

(バトンズ 2021年1〜3月と2022年1〜3月の業種別登録案件の月別推移比較表)

(バトンズ 2021年1〜3月と2022年1〜3月の業種別登録案件の月別推移比較表)

【女性経営者によるM&Aの増加】

2021年11月2日の東京商工リサーチの発表によると、全国の女性社長が初めて50万人を突破し、女性社長率は初の14%超えを記録した。これに伴い、女性の多様な働き方や人生の選択肢を増やすためにM&Aが活用される例が、最近特に目立つようになってきている。

参考1:東京商工リサーチ全国の女性社長が初めて50万人を突破 第10回「全国女性社長」調査
参考2:https://batonz.jp/learn/9222/

これに関連して、買収のみならず、女性経営者が譲渡側となるケースが増えてきている点も注目に値する。バトンズの例では、出産を終えわずか2ヶ月で立ち上げたオリジナルチャイティ通販事業を育休終了から本業への復帰することを理由に譲渡された事例や、子どもと向き合う時間をより確保するために育児休暇と退職を機に立ち上げた女性ブランド品を取り扱うECサイトを譲渡された事例、また、妊娠中にコロナ禍でオープンさせたセルフサロンを、子どもの難病をきっかけに手放した事例など、ライフスタイルの変化をきっかけに女性が事業や会社を手放すといった事例が増えている。

 

■こだわりのオリジナルチャイティ通販事業、譲渡のきっかけは本業復帰!
https://batonz.jp/learn/8538/

■女性ブランド品を取り扱うECサイトを譲渡。譲渡先は子育て中のママ
https://batonz.jp/learn/8418/

■全国に展開されるセルフサロンの譲渡。引き継ぎ先の明暗を分けた、小さな気遣い
https://batonz.jp/learn/8625/

 

「M&Aといえば男性経営者のもの」であった時代は既に過去のものであり、ポストコロナ時代では譲渡・買収の両方で女性経営者の存在がますます大きくなっていくことだろう。

 

【中小M&AにおいてもPMI(買収後の統合作業)が本格普及の兆し】

M&A後の企業統合作業、つまりPMI(Post Merger Integration)は、M&A成功の最も大事な要素であるとされているにもかかわらず、その実施は大企業に限られ、従来中小企業でほとんど実施されていないとされていた。

しかし、近年中小、特に小規模事業者におけるM&Aの普及により、その重要性は改めて認識されることとなり、2022年3月17日には中小企業庁は日本初となる中小M&AでPMIを実施する際の指標である『中小PMIガイドライン』を策定、併せて『中小PMI支援メニュー』としてその普及のための体制の整備に乗り出した。
参考:https://www.meti.go.jp/press/2021/03/20220317005/20220317005.html

このように、一躍ポストコロナ時代のM&Aで注目を集めることとなったPMIであるが、実際中小M&Aでどの程度、実施され、またどのような課題を抱えているのかは全く明らかにされていなかった。そこでバトンズでは、この度日本で初めて中小M&AにおけるPMIの実施状況やその課題を含むアンケート調査を実施した。以下がその結果である。

 

https://batonz.jp/learn/9222/

 

驚くべきことに、バトンズの実態調査においてM&Aの実施企業の約7割が、買収後にPMIを実施しているという結果となった。しかし同時に実施したアンケートでは、多くの課題が指摘され、その問題点も浮き彫りになっている。特に多くの回答者が指摘したのが、「PMI実施の費用対効果を検証すると、PMI実施そのものの必要性を検討することとなった。」という回答に代表される費用に関する問題である。
これは従来の日本のPMIが主に大型のM&Aを対象としていたこともあり、中小M&Aではどのような事項を、どのような手順と期間、コストで実施する必要があるのかという経験値が絶対的に不足しており、結果として実態にそぐわない高額なサービスとなっていることが主要因であるとみられる。

こうした現状に対し、中小M&Aの実態に即した定型的なパッケージを作ることで、コストを引き下げ、一層の普及を目指す動きが官民で行われている。その代表例が、中小企業庁が令和2年第3次補正予算で実施した「事業承継・引継ぎ補助事業(事業承継トライアル)」(以下、事業承継トライアル)である。
本事業はバトンズが中小企業庁からの採択事業者として、1年間をかけて中小M&Aの「型」作りと実際の案件に基づく実証実験を実施しているので、以下にその取り組みについて紹介する。

本事業の趣旨であるが、バトンズのプラットフォームを通じて1500件以上のM&Aを成約に導いた経験から、中小M&Aによる円滑な事業承継の成功のためには、PMIなどの個別のプロセスの部分最適を目指すのではなく、トータルで最適な「型」を作る必要があると考え、その見地をもとに、具体的には4つの主要プロセスの型化を目指したものである。

(1)従来の企業概要書の代替として、業種ごとの譲渡企業の情報を簡単にまとめることができる『業種別IP(インフォメーションパッケージ)』
(2)一般的な財務DDに加え、中小企業のビジネスモデルを把握するための『ビジネスDD(デューデリジェンス)』
(3)小規模企業の実態に即したPMIパッケージ『経営引継ぎパッケージ』
(4)事業の承継後、事業を刷新し、あるいは磨きをかけるための『リブランディング』

 

(1―1)『業種別IP(インフォメーションパッケージ)』

小規模・超小規模案件では中規模・大規模案件のように1~2ヵ月かけて『企業概要書』を整備することがコスト的に難しい。そのため後継候補者には譲渡対象事業の案件の魅力や引継ぎ後のイメージが伝わらないことが大きな課題とされてきた。

バトンズが本事業で開発した業種別IPは、ITを活用することで業種の特徴に応じた簡易概要書を数時間で作成することが可能で、実際に11の業種、131案件で実証試験を行った結果、83%の事業者が非常に役に立った、役に立ったと回答している。本事業の成果物である「業種別IP」については、バトンズのみならず今後公的機関等を含め広く提供される予定である。

 

(1-2)『ビジネスDD(デューデリジェンス)』

PMIの成功のためには、実際にはDD段階で「課題」や「今後の方針」が明確になっていることが非常に重要である。

バトンズでは、この見地から中小M&Aで必要な最低限のポイントを厳選し、財務労務ビジネスモデル(譲渡企業側の「強み」「収益性」「競合分析」「リスク度合」「将来シミュレーション」「今後の営業・販売方針」などを確認)の3点に集中したビジネスDDパッケージを開発。実際にM&Aを実施した10社の協力を得て実証実験を行った。

その結果、特に中小M&Aにおいては、ビジネスDDの実施がPMIの成功に大きく寄与することが明らかになった。今後ビジネスDDのパッケージ化が進めば、中小PMIにおいては、ビジネスDDが必要不可欠となることは十分考えられよう。

 

(1-3)『経営引継ぎパッケージ』

従来のM&AにおけるPMIは主として人事組織、各種制度、管理システムの整理統合や営業上のシナジー効果を出すことを主たる目的と考えられてきた。しかし小規模・超小規模案件における論点は、制度やシナジーの問題ではなく、事業そのものをいかに円滑に継承できるかという点にある。つまり、後継者の経営スキルにPMIの成否は依存しているといえ、そのスキルの育成こそが中小M&Aにおける最重要課題なのである。

また規模を考えれば、多くの専門家や社内要員を必要とせず、譲渡オーナー社長と後継者が2人で推進できるものにすることも必須である。バトンズは以上の観点から、小規模・超小規模案件向けのPMIパッケージ(マニュアル、チェックリスト、等)を、実際にM&Aを行った7社の協力を得て『経営引継ぎパッケージ』として型化した。

また当然のことながら、後継経営者の間では、PMIと並行して、継承した企業をさらに発展させるための、実践的な経営ノウハウを学びたいという意欲は高い。そこで、バトンズでは中小企業庁が選定している「はばたく中小企業・小規模事業者300社」の中から、後継経営者にとって学びとなる業種別での実践的な経営手法・マネジメントノウハウを形式知化し、動画教材として提供していくことが有効ではないかと考え、経営ノウハウを教材化する取り組みの実施に至った。

円滑な継承と成長のための学びをセットにした本パッケージは、今後、公的機関などを通し、事業承継での起業を希望する後継候補者に対し幅広く提供できるように準備を進めていく予定である。

 

(1-4)『リブランディング』

従来のM&Aでは、シナジー効果やM&A後の統合プロセス(PMI)がM&A成功のポイントとして挙げられてきた。しかし、これからの中小M&Aでは魅力を持った商品や顧客を持っているものの、ビジネスモデルが現代のトレンドに沿っていない事業を新しい価値観を持って磨き上げることが真のM&Aの成功の秘訣であるとの認知が広がっており、通称『リブランディング』と呼ばれている。

特に中小企業・小規模事業者においては、製品・商品・サービスや販売・マーケティング手法が現在の消費者嗜好とはギャップが大きくなってしまっているケースが多く、リブランディングの必要性が高い。PMIの延長線でリブランディングを捉え、その型化をすることは、後継経営者のマーケティングノウハウ習得に資することに加え、起業希望者による事業引継ぎでの起業の促進にも非常に有効であるといえる。

バトンズでは本事業において、実際にM&Aにより事業が継承された5社の新商品の開発やパッケージの刷新、フランチャイズ化に向けた店舗ブランディングなどのリブランディングを実施、経営改善手段として非常に高い効果体感を得ており、今後さらに実証データを積み重ねて完成度を挙げていくこととしている。

 

【新しい資本主義の素案に中小M&Aが明記 国の推進姿勢が明確に】

政府・与党は6月1日、新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画の素案を発表。

岸田内閣の目玉政策である『新しい資本主義』のグランドデザインに、中小企業M&Aを明記する方針を示した。具体的には、中小M&Aの適切な取引環境の整備や、先ほど挙げた「中小PMI支援メニュー」に基づき、「中小PMIガイドライン」の周知PMI支援専門家育成等を行うことや、中小M&Aガイドライン、および中小PMIガイドラインの改訂を示唆している。

中小M&Aの適切な取引環境の整備については、既に中小企業庁の主導により2021年11月にM&A支援機関登録制度が開始され、約2823件のFA(ファイナンシャルアドバイザー)、仲介会社が登録している。登録支援機関に対しては、昨年より「事業承継引継ぎ補助金」の専門家活用事業の対象として、当該専門家を利用したM&Aに伴う仲介やFA費用などの専門家費用を補助することで、同庁が利用者のコスト負担と適切な専門家の育成を行ってきた経緯がある。

本年度は、事業承継・引継ぎ補助金が従来の補正予算から、生産性革命推進事業に格上げされたことで、期間限定ではなく通年利用が可能となる見込みとなり、最大600万円(補助率2/3)が補助されることとなり、大きく使い勝手が引き上げられることになった。

このように、国としては中小M&Aをコロナ後の経済政策における目玉の一つに掲げ、その推進のため、積極的な提言と政策を打ち出していることは大いに注目に値する。特に、今回新しい資本主義のグランドデザインで名指しされている、中小M&Aにおける『適切な取引環境』『PMI』については、実際にM&Aによる事業の継承を検討している経営者のみならず、仲介・FA事業者においてもその方向性を熟知して、業務に取り組んでいくべきであろう。

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