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会社を売りたい経営者が心得るべきマナー、安全に売買するために準備すべきこと

2020年04月21日

「体力的に、会社経営は難しくなってきた。そろそろ誰かに引き継ぎたい…」

「優秀な人材に会社を引き継いでもらって、自分は一線を退きたい」

会社を誰かに引き継いでもらいたいと考えている経営者は、事業承継を成功させるために準備が必要です。

今回は、現オーナー経営者が事業承継前にやっておくべき準備について、具体的な内容や手順を解説していきます。

 

会社売買する前に必要な3つの準備

会社を売却(譲渡)する側の企業のオーナー経営者が、売買契約の前にやっておくべき3つの準備は以下です。

・ 現経営者が承継する意思を固める
・ 事業承継計画を立案する
・ 企業資産、負債の整理

一般的に会社の売却に必要な準備期間は3ヶ月~2年とされています。事業承継は経営理念や経営者の信条までも後継者に引き継ぐことになるため、最低でも6ヶ月間の期間が必要になるでしょう。会社売買に必要な3つの準備について、それぞれ詳しく見てきます。

 

準備①:現オーナー経営者が承継する意思を固めるところがスタート

事業承継は現経営者が承継する意思を固めるところからスタートします。
会社売却の決定までは3ヶ月~2年でも、新経営者の育成を含めた事業承継そのものが完了するまでは5~10年かかります。必要に迫られてから準備を行っても、適切な承継はできません。現経営者は自社の将来をふまえ、早めに中長期的な計画を立てる必要があります。

経営者の想いを見える化

後継者や従業員、取引先に創業から現在までの歩み、経営理念、価値観、目標・目的を正しく伝える必要がありますが、口頭で伝えるのでは「言った・言わない」のトラブルになりがちです。そのため、周囲に正しく理解してもらうために可能な限り整理して明文化、つまり「見える化」することが重要となります。

従業員への開示の仕方に配慮し、モチベーションを下げない

事業承継により、

・仕事の進め方が変わってしまうこと
・新経営者の方針と従業員の意思が合わなくなること

などが原因で従業員のモチベーションが下がり、事業承継後の経営が上手く行かないケースが多く見られます。事業承継は従業員の想いを汲んでこそ成功と言えるものです。基本的に、規模の大きなM&Aでは、従業員への開示は寸前まで行わないことが多いですが、小さな企業が事業承継をする場合は事前に事業承継に踏み切った経緯などを説明する機会を設けるべきでしょう。

 

準備②事業承継計画を立案する

現オーナー経営者が事業承継の意思を固めたら、続いて最良の形で事業承継が完了できるよう、適切な事業承継計画を立案します。事業承継計画を立案する手順は以下のとおりです。

自社の現状分析

事業承継計画の第一歩は、現オーナー経営者が第三者目線で自社の現状を把握・分析することです。自社の経営状態は買い手にとって最も気になるポイントであり、交渉においても重要なものです。

また、承継後の経営に関わる情報として外部環境の情報は重要視されます。SWOT分析をはじめとするフレームワークを活用して、内部・外部の両面から自社の置かれている現状を可視化しておきましょう。専門家に依頼して調査を任せる場合でも、企業の代表者として現状把握はしておきましょう。

SWOT分析を活用してM&A時の相乗効果を編み出す!事例とともに紹介!

今後の目標設定

現状把握の次は、中長期的な目標を設定します。具体的には今後の経営の方向性、業界の変化予測、売上や利益等の数値目標が挙げられます。

事業を再検討し、課題の整理

人材育成、商品・サービス開発、設備投資、組織再編など事業承継後も企業として存続できるよう、事業を再検討して課題を整理します。

 

準備③企業資産、負債の整理

事業承継では資産だけでなく負債も引き継がれます。現オーナー経営者は後継者との間に負債に関する認識の齟齬がないように対策する必要があります。

会社資産を洗い出し、承継内容と金額を把握する

株式をはじめとする会社資産を洗い出し、承継内容と金額を把握します。承継内容によって事業承継の対価は変わり、また現オーナー経営者の個人資産があればその所有権の移転も検討の必要があります。

承継の手法・範囲を選択

事業承継の手法・範囲についても検討しなければなりません。株式譲渡か、事業譲渡かの手法の選択、また全部譲渡か一部譲渡かなどの範囲の選択を行っておく必要があります。

事業承継を目的とした親族外への承継の場合、多くは株式譲渡が選択されますが、多額の退職金を受け取った上で事業を贈与することにより税負担が減ることもあります。譲渡額や勤続年数などにより変動するため、プロの助言を受けた上で選択しましょう。

簿外債務の把握と整理

簿外債務とは、バランスシート(貸借対照表)に計上されていない債務のことです。
例えば未払いのボーナスや、他社の債務の保証がこれにあたります。簿外債務の有無は譲渡金額に影響を与えるため、自社の簿外債務有無を確認し、事前に整理できる簿外債務はあらかじめ処理しておきます。

簿外債務の存在を隠して承継を進めてしまうと、後々発覚した際にトラブルとなりかねません。買い手のため、また企業のためにも誠意を持って対応しましょう。

 

買い手のためにここまでやっておくことが売り手のマナー!

次に、後継者に会社を引き継ぐ際に、現オーナー経営者がやっておくべきM&Aの売り手としてのマナーをご紹介します。

取引先にも挨拶を

事業承継M&Aによって経営者が交代したことで契約内容に何らかの制限がかかった場合、他方の当事者によって契約を解除できる規定があり、これをチェンジオブコントロール条項(COC)と言います。COCは新しい経営者が問題のある人物であったり、元の経営方針に合っていない会社であった場合に発動されることがあります。

つまり事業承継直後には、新経営者が取引先に受け入れられず、取引を一方的に中止にされてしまう可能性があります。事業承継前に経営者と営業担当者が一緒に主要な取引先に出向き、譲渡先が信頼できる会社・経営者であることを説明してもらい、取引の継続をお願いする必要があります。

人材流出防止に努める

事業承継後は、新体制への不満から予期せぬ人材流出が起こる可能性高い時期です。あらかじめ新経営者の紹介をしておき、信頼を築ける手助けを行い、承継後にも後述のPMIに協力することで人材流出を防ぐ立ち回りが求められます。

今まで共に頑張ってきた従業員は会社にとって貴重な財産です。従業員の退職によりノウハウが流出したり、社内の人材バランスが崩れることで経営が乱れてしまう恐れがあるため、人材担当とも協力して人材流出防止に努めましょう。

PMIにも協力する意向を伝える

ポスト・マージャー・インテグレーション(PMI)とは、M&A 後の統合効果を最大化するための重要なプロセスのひとつです。

M&A後、統合した会社は不安定になりがちで、統合したシステムの不具合や業務上のミスが起こりやすくなります。そういった事態に対する適切な対処をするのがPMIで、「人・企業文化の統合」「業務統合」「システム・インフラの統合」という3つの課題を解決するため、譲受側企業・譲渡側企業双方の協力が欠かせません。PMIを行い統合が成功することで、シナジー効果を生み、新たな体制が軌道に乗ったといえます。

 

事業承継M&Aの成否は事前の準備がカギを握る

会社を売りたい経営者が心得るべきマナーとして、安全に譲渡するために、主に売り手企業が準備すべきことを解説しました。事業承継M&Aの成否は事前の準備がカギを握ると言っても過言ではありません。

会社を売りたい現経営者は、自身が会社の現状把握やM&Aに関する知識を身につけることはもちろん、専門家や仲介会社などに協力を仰ぎ、最善の結果が得られるよう全力を尽くすことが重要です。

 

 

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