
「居酒屋を経営してみたいけど、競合が多いので儲けを出すのは難しいのでは……」
実は、2019年の外食産業が106.8%と全体で上がっている中、居酒屋は10年連続で売上・客数ともに減少している業界です。一方で、昨今の景気低迷や消費増税にも関わらず、独自のアイデアで驚異の利益率を誇る居酒屋もなかにはあります。
実際のところ、居酒屋を経営する場合どれくらい利益率があれば儲かるのでしょう?高利益率の仕組みを知り、「儲かる居酒屋」を経営するポイントを考えていきます。
会社が儲ける仕組み
利益とは会社の儲けのことです。利益には営業利益、売上総利益、経常利益などさまざまな利益がありますが、一般的には、粗利(売上総利益)と営業利益のことを指しています。
ここでは、粗利と営業利益について解説していきます。
粗利(売上総利益)とは
粗利(売上総利益)とは、「売上高」から「売上原価」を差し引いた利益のことで、「売上原価」は売り上げた商品の仕入れや製造にかかった費用を指します。
計算式は
となります。たとえば、1,000円で仕入れた商品を1,500円で販売して売り上げた場合、粗利は500円です。
さらに、売上高に占める粗利のことを粗利率(売上総利益率)といいます。
計算式は以下です。
居酒屋における粗利率は、売上から仕入を引いた「粗利」を「売上高」で割った数値のことをいいます。
営業利益とは
営業利益とは、会社の本業で儲けた「売上高」から費用を差し引いた収益のことで、会計上で「利益」を厳密に言ったものが営業利益です。
計算式は以下です。
居酒屋の費用には仕入原価、人件費、家賃、水道光熱費、広告費などがあり、会計上では「販売費及び一般管理費」と呼ばれます。
利益率とは
次に利益率を計算してみましょう。
利益率の計算式は以下のように算出されます。
利益率 = 利益(売上から費用を差し引いたもの) ÷ 売上高 × 100(%)
では実際に、具体的な例を用いて計算してみましょう。たとえば、
②1個あたり「仕入れ原価10,000円、販売価格15,000円、利益2,000円」の商品
があったとして、どちらが儲かる商品かを考えてみましょう。
【②】2,000円 ÷ 15,000円 × 100(%) = 13.33%
利益で見ると②の商品の方が大きいですが、利益率で見ると①の商品のほうが高くなっています。すると、②の商品を1つ売るよりも、①の商品を5個売るほうが利益が大きくなるわけです。利益は大きいのに利益率が低いということは、コストが多くかかっているということであり、手元に残る現金は少なくなってしまうということでもあります。
居酒屋の利益率って、実際どれくらい?
居酒屋にもバーカウンターだけの小規模な居酒屋、海鮮居酒屋や焼肉居酒屋など食事をメインとする居酒屋などさまざまな種類があります。
では、居酒屋を経営するにあたって、どれくらいの利益率があれば「業績が好調」と言えるのでしょうか?
経産省の報告によると、飲食店における営業利益率は平均で8.6%と報告されています。
また、飲食店の利益率の目標値は10~15%と言われていますが、中にはそれを大きく超えて営業利益率が30%を超えるところもあります。
なかなか利益率が上がらない…そんな時に試したい施策4選
居酒屋の経営者がつねづね頭を悩ませる課題が、「儲からない」。つまり利益率が上がらないということ。利益率を挙げるためにはいくつかの対処法があります。
客単価を上げる
客単価とは、その店でひとりの客が平均して使う金額のことです。商品を高くすれば客単価が上がると思われがちですが、実際はそれほど単純な問題ではありません。
居酒屋で客単価をアップさせる方法には、具体的に次のようなものがあります。
追加注文を促すなどサービスで客単価を上げる
「プラス○○円で飲み放題」など、商品に付加価値をつける
「期間限定」や「旬の料理」などで値下げと値上げを同時に行う
商品の価格を上げても客が商品に価値を感じなければ、客足が遠のいてしまう可能性もあります。一方で、一品一品が安くて利益率が低くても、客にたくさん注文される商品が多ければ、客単価は高くなります。
コスト削減
先ほど紹介した利益の計算式「利益=売上高-費用」からもわかるように、売上高は上がらずとも、費用(コスト)を下げることで利益を増やすことができます。
居酒屋の経営にかかるコストには、主に次のようなものがあります。
仕入原価
賃料(家賃)
水道光熱費
このうち最も大きな経費は人件費です。
飲食店の売上高に対する人件費率は、25~30%とされています。そのため、この人件費を減らせれば大きくコストを削減できると考えられます。また、人件費を減らすことによってそれに付随する水道光熱費なども下げられるかもしれません。
しかし、人件費を削減することによる恩恵は一時的なものである場合が多いので、よく考えて実行するかを決断しなくてはいけません。
「集客商品」と「高収益商品」を用意する
ビジネスでは「集客商品」で客を集め、「高収益商品」で収益を上げることが大切とされています。
飲食店の経営では、「集客商品」は仕入原価とほぼ同じ価格=利益がほとんど出ない価格にして客を呼び込み、高い収益が見込まれる「高収益商品」を売ることを狙いましょう。
居酒屋の場合は、たとえばほとんどの客が注文する生ビールやチューハイ、枝豆等のおつまみを「集客商品」として安く提供し、メインの肉料理・魚料理を「高収益商品」として集客商品と一緒に注文してもらうことを狙うのが定石です。
ロスを減らす
食べ残しや仕込みすぎは経費の無駄となるため、一般的に「ロス」と呼ばれています。また食べ残しや多すぎる仕込みだけでなく、オーダーミスやテーブルに運ぶ途中に落とした料理、無料提供の料理、失敗して作り直した料理、賞味期限切れの食材なども食品ロスとして扱われます。
このような食品ロスは、ロスが生じやすい食材の仕入れの見直しや、徹底した在庫管理を行うことによって改善する可能性があります。
高利益率で回している居酒屋
居酒屋ビジネスの成功例としてよく紹介されるのが『立喰い焼肉 治郎丸(西武新宿)』と『大衆焼肉ホルモン酒場』です。営業利益率が10%を超えることが難しい飲食業界において、これら2つの居酒屋は営業利益率が30%を超えています。
前者は「高級肉を高回転率の立ち食いで提供する」というこれまでの焼き肉のイメージを払拭したコンセプト、後者は人手不足を解決する手段としてアルコール類の提供をセルフにしたことが成功の秘訣として挙げられます。
利益率の高い「儲かる居酒屋」は、飲食店の既成概念を覆すアイデアを強みとしたケースが少なくありません。つまり、売上アップやコスト削減の実現は潜在的な需要を取り込むアイデアを生み出すことにより可能ということです。
利益率を高く維持して安定経営を
「居酒屋は儲かりにくい」というイメージを持たれがちですが、ご紹介した居酒屋のようにアイデア次第では高利益率の仕組みを作ることは不可能ではありません。また、全国にM&Aを活用した事業承継を希望している居酒屋もたくさんあります。
スモールM&Aなら個人が数百万円単位で事業承継でき、店舗や経営ノウハウ、さらには従業員や顧客までも引き継いだ状態で事業をスタートすることも可能です。
居酒屋の開業に興味のある方は、ぜひスモールM&Aを選択肢の一つとして飲食店経営を目指してみてはいかがでしょうか。
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