
M&Aとは、企業の合併と買収という意味があります。Mは「Merger(合併)」、Aは「Acquisitions(買収)」の略です。簡単には、企業の売買・買収と、別々の企業同士が合併するための手法のことを言います。2000年を皮切りにM&Aの手法が多く知れ渡り、現在はM&Aの仲介会社も増えてきました。
今回は、M&Aのメリットやデメリットを、買い手、売り手それぞれの目線から整理しました。
M&Aのメリット
企業がM&Aを行う理由はさまざまです。買い手にとっては事業の拡大を加速する機会になり、売り手にとっても持っている課題を解決する手段になります。それぞれにとってどのようなメリットがあるのかを詳しくご紹介します。
買い手にとってのメリット
- 取り引き先とのネットワークや設備の拡大
持続的な成長を続けることは企業にとって宿命です。しかし国内市場が縮小する中で、同じことを続けて生き残っていくのは難しい時代となりました。そんな時代だからこそ、M&Aを活用する手段が有効な時があります。例えば、顧客との関係がゼロの状態から取引先に交渉し、開拓するのは容易なことではありません。
しかし、M&Aを実施すれば、売り手企業がこれまで行なっていた取引先をそのまま取り込むことができます。このことで交渉にかかる時間も削減でき、単純に取引先の数が増えるため事業拡大に繋がります。事業の規模が大きくなれば自ずと取引量も多くなり、仕入れコストを大幅に下げられるようになります。売り手の設備を活用したり、削減したコストを投資に充てることで設備の拡大もできるようになります。
- 事業の多角化
市場の変化が早い中で、事業の多角化を図ることも重要な戦略です。一から新規事業に参入するにはそれなりの費用や時間がかかりますが、他社が積み上げてきた技術を継承することで、買い手側は更なる事業の拡大に繋げることができます。このようにして、スピーディーに事業を多角化させるにもM&Aが有効です。
- ノウハウ、技術獲得
自社にないノウハウや技術を取り入れる目的でM&Aを行う企業もあります。これによって、自社の不得意な部分を強化することができます。例えば、商品開発が弱みであるA社が、研究所を持つB社に対しM&Aを行った場合。B社の研究所機能を活かした商品開発が、A社の中でできるようになります。このようにM&Aを使って弱みを解消し、より強固な企業に成長することができます。
売り手にとってのメリット
M&Aは買い手・売り手の双方にメリットがある時に成り立ちます。ここでは売り手にとってどのようなメリットがあるかご紹介します。
- 後継者問題の解決
中小企業では後継者不足が謳われています。相応しい後継者が現れなければ、コツコツ積み上げてきた独自の技術やノウハウを継承できなくなってしまいます。せっかく積み上げてきた会社のリソースを失わず、従業員の雇用を守るためには後継者を見つける必要があります。少子化社会によって身内への承継が難しくなっており、また社内の人材から適任の後継者が見つかるとも限りません。このように後継者問題に悩んでいる場合には、M&Aを活用した事業承継が有効です。
- 廃業コストがかからない
後継者が見つからない場合、廃業の検討も視野に入れなければなりません。しかしこれには大きな負担が伴います。現在働いている従業員のことを考えると心情的に苦しい思いをしますし、取引先にも迷惑がかかってしまいます。なにより、廃業コストは事業を続けるよりも資金がかかります。自社の技術を託せる企業に任せることで、廃業コストを削減することができます。
- 売却益を得られる
M&Aによって事業を売却することにより、創業者利益を確定し現金を手に入れることができます。交渉次第ではありますが、創業者はこれからの生活資金を得ることができ、負債からも解放されるため、心理的に安定した生活を送ることができます。
M&Aのデメリット
これまでM&Aのメリットをお伝えしてきましたが、メリットだけでなく、いくつかあるデメリットも把握しておかなければいけません。両方を知った上で、適切な判断を行いましょう。
買い手にとってのデメリット
- 企業文化が融合しない
企業それぞれには社風があり、待遇面も完全に一致することはありません。M&Aによって合併や買収されることで、従業員は新しい社風や待遇に慣れるまで時間がかかったり、馴染めずに反発が起きる可能性もあります。
- 人材流出
企業文化の違いにより、これまでの労働条件や立場が変わってしまうこともあります。これに不満を覚えた優秀な人材が流出する可能性があります。そのため、これまでエースとして活躍していた優秀な人材には、事前に買収後の待遇や将来的なポジションなどについて話し合いの場を設けるなど、ソフト面でのフォローが必要です。
- 債務で揉めるケースも
買収が決まったあとに新たな債務が発覚し、揉めることもあります。例えば、近年ではシャープ株式会社がホンハイ精密工業を買収しようした時に「偶発債務」の行方が問題となりました。そのため、M&Aを行う場合には事前に買収予定の企業の財務状況を把握しておかなければなりません。このように、買収予定の企業の財務状況を把握するうえで行う審査のことを「デューデリジェンス」と言います。デューデリジェンスについては以下の記事に詳しく記載しておりますので、詳しい解説はこちらをご覧ください。
売り手にとってのデメリット
- 高い価格では売れない
M &Aの市場において、一番大事な点は買収先の企業を買収したことにより「将来的にどれだけの収益を見込めるか」です。現在は順調な事業でも、今後の将来性を考えた時に高値で売却するのが難しい場合もあり、売り手が想定していた価格では売れないケースもあります。売り手側も売却を考えているのであれば、今後の成長に繋がる提案や設備投資を進めるのも一つの手です。
- 従業員の反発
買収や合併が起きた場合、売り手側は買い手側の条件に従うのが一般的です。そのため、これまでの労働条件が変わることで、従業員が反発したり、社内に派閥ができ争いが起きたりすることも少なくありません。M&Aを行う場合に従業員の退職や反発が起きないよう、統合プロセスには気を配る必要があります。
- 取引先との関係
買収によって担当者が変わった場合、これまでの関係に溝が入り取引先の機嫌を損ねてしまい契約を打ち切られてしまうケースも少なくありません。これからM&Aを行う場合には事前に取引先とも今後のことをきちんと話し合い、会社が合併や統合されたあとも円滑に取引が行えるようにしておくことが必須です。
M&Aのメリットをしっかり把握して、有効的に活用しよう
M&Aを行うことによって生じるメリット・デメリットを売り手と買い手側の両面から解説しました。買い手側には「今後の事業拡大の将来性」や「経営拡大までの時間や労力を大幅にカットできる」というメリット。そして売り手側には「後継者問題の解決」や「今後の資金確保」などのメリットがあります。
その反面、双方にデメリットもあります。リスクもあることをあらかじめ把握したうえで適切な企業とM&Aを行うことが双方にとっても重要なことです。そのため、M&Aの仲介会社を活用し、プロのアドバイスを受けた上で慎重に検討することを推奨します。
こういった仲介会社はM&Aの成功例やこれまでの経験に基づいたアドバイスをしてくれます。是非、活用を検討してみてはいかがでしょうか?
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