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2019.08.02

M&Aの時に活用するEBITDAの計算ってどうやるの?気を付けたいポイントまとめ

EBITDAは、M&Aの検討の際に注目されることの多い財務指標です。あまり耳にしない言葉なので難しく感じる人もいるかもしれませんが、一度理解してしまえば、比較的単純で分かりやすい指標です。企業の財務分析に活用できるよう、何を表す指標でどのように算出すればいいのかを見ていきましょう。

 

おさらい:EBITDAが意味すること

 

EBITDAというのは、「Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation and Amortization」という英語の頭文字をとったものです。日本語に訳すと「利払い前・税引き前・減価償却前利益」という意味になることからわかるように、EBITDAは企業の利益に関する指標となっています。

なぜ、EBITDAで表された利益に注目する必要があるのでしょうか。

業績を表す数字として一般的によく使われるものに、「営業利益」があります。営業利益とは企業が本業で稼いだ利益のことですが、企業が実際に営業利益のすべてを手にしているわけではありません。なぜなら営業利益というのは、企業の保有する固定資産の減価償却費を差し引いた帳簿上の利益だからです。

減価償却は、帳簿上では費用として利益から減算されますが、実際に現金が支出されているわけではありません。そのため、例えば企業が積極的に設備投資を行っていて減価償却費が大きいような場合、減価償却費を差し引いた帳簿上での利益は小さく見えてしまいます。

そこで役に立つのがEBITDAです。“減価償却前”利益という日本語の意味から読み取れるように、減価償却を考慮せず本当に動いた現金だけを算出した値のことをいいます。そのため、EBITDAは企業の現金利益を表す「営業キャッシュフロー」の近似値として利用されることも多く、企業の本業における現金収入というイメージで捉えてもいいかもしれません。

参考記事:EBITDAで会社の何を知る?意味や特徴を解説

EBITDAは現金の動きを考慮した利益ですが、企業が自由に使えるものとして手元に残るお金、「フリーキャッシュフロー」とは異なります。フリーキャッシュフローは、EBITDAからさらに運転資金や設備投資、税金の支払いなども考慮し、最終的に残ったお金を表す数字です。

その点、EBITDAは、“利払い前・税引き前・減価償却前”利益なので、ここから設備投資を考慮したり利息や税金の支払いをしたりしないといけないということに注意しましょう。

 

EBITDAの計算方法

 

EBITDAはどのように計算したらよいのでしょうか。方法はいくつかありますが、厳密に算出する場合は以下の計算式になります。

EBITDA=税引前当期純利益+特別損益+支払利息+減価償却費

しかし、実際はこれよりも簡易的な計算方法が活用されることもよくあります。今回は、上記のような厳密な計算式ではなく、より分かりやすい2種類の計算方法について詳しく見てみましょう。

 

1. 営業利益からEBITDAを算出!

 

1つ目は営業利益を用いてEBITDAを算出する方法で、次のような計算式になります。

EBITDA=営業利益+減価償却費

営業利益は利息や税金を差引する前の数値なので、ここに減価償却費を加えることでEBITDAのおおまかな値を求めることができます。

 

2. 経常利益からEBITDAを算出!

 

2つ目は経常利益を用いてEBITDAを算出する方法で、次のような計算式になります。

EBITDA=経常利益+支払利息+減価償却費

利息を差引した後の経常利益に減価償却と利息を足し戻すことでも、大まかなEBITDAの数値が計算できます。

この2種類の計算式は厳密なEBITDAとは若干異なります。しかし、簡単に計算することができるため、一般的によく用いられている算出方法です。どちらの計算式を用いてもおおよそ同じ数字となり、どちらも簡単に計算できますね。ただし、EBITDA同士を比較する場合は、同じ算出方法で求めた数値を比べるように気を付けましょう。

 

EBITDAを使うメリット

 

利益を表す指標の一種であるEBITDAを利用すると、企業がどれくらいの収益をあげているのかを知ることができます。EBITDAを利用するメリットは、2点あります。

 

1. 設備投資に左右されずに企業利益を比較できる

 

1つ目は、設備投資に左右されずに企業の利益を比較することができるという点です。営業利益のみを用いて企業利益を比較しようとすると、積極的に設備投資をしている、あるいは大きな設備投資をした企業の利益が、そうでない企業の利益よりも小さく見えてしまう、というデメリットがあります。EBITDAを利用することで、設備投資のタイミングに左右されずに業績を比較することができます。

 

2. 異なる国でも企業同士を比較することが出来る

 

2つ目は、異なる国の企業を比較することができるという点です。国により、会計基準や法人税、金利水準などが異なります。しかし、EBITDAはそういった違いが出てくる前の段階の利益なので、異なる国で経営している企業の収益力をよりフラットに比較することができるのです。そのため、外国企業や多国籍企業のM&Aを検討するときに、EBITDAが企業を評価するための一つの指標としてよく活用されます。

また他には、M&Aを検討する際は、EBITDAそのものの数値を比較するだけでなく、EBITDAを活用した別の指標を利用することもあります。次は、そのような応用的な指標を見てみましょう。

 

企業価値を計る他の指標1:  EV/EBITDA倍率

 

EV/EBITDA倍率とは、「企業価値(EV)がEBITDAの何倍であるのか」を表す指標のことです。計算式で表すと次のようになります。

EV/EBITDA倍率=(時価総額+有利子負債-現預金)÷EBITDA
※100を掛けてパーセンテージで表すこともあります。

ここで「時価総額+有利子負債-現預金」で表されている企業価値とは、企業を買収するために必要なお金です。そのためEV/EBITDA倍率は、企業の本業における現金収入で買収額の元を取るには、何年かかるのかを示していると考えることができます。

なお、企業価値の評価方法は上記以外にもいくつかあり、よく知られているのは将来の不確実性を考慮した上で現在の企業価値を算出するDCF法です。これは幅広く使われている企業価値の評価方法ですが、EV/EBITDA倍率の計算で利用する企業価値とは異なるものなので注意してください。

 

企業価値を計る他の指標2:  EBITDA有利子負債倍率で負債を計る

 

EBITDAを活用したほかの指標には、企業の有利子負債の多さを分析するためのEBITDA有利子負債倍率(DEBT/EBITDA倍率)というものがあります。計算式は次のとおりです。

EBITDA有利子負債倍率=(有利子負債-現預金)÷EBITDA
※100を掛けてパーセンテージで表すこともあります。

これは、企業の持つ有利子負債を、本業における現金収入で返済するには何年かかるかを示す指標と捉えることができます。つまり、借入金の返済能力を表しているのです。EBITDA有利子負債倍率は企業の健全性を測る指標であり、M&Aを検討する際の財務分析では、EV/EBITDA倍率と共によく利用されています。

 

EBITDAを活用して企業価値を計ろう

 

EBITDAは財務諸表から簡単に計算することができるため、M&Aの業界では広く知られている指標です。国際的に幅広く用いられていることもあり、設備投資に左右されない利益を比較したり、ほかの国の企業と比較する場合には特に有効です。

初めは難しく思えるかもしれませんが、理解してしまえば企業の財務分析に便利な指標のひとつなので、ぜひ覚えて活用してみてください。