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創業170年のきものメーカー、小売業のM&Aで築く一気通貫体制

2026年10月19日

着物の生地製造、染色、商品企画、卸売など川上を担う企業として発展してきた江一株式会社。さらなる成長に向け、川下である小売業を展開する株式会社夢花を譲り受けました。創業170年以上続く老舗企業の新たな挑戦を先導する江一の常務取締役かつ夢花の新代表を務める宮本真樹様に、M&Aの経緯や今後の展望についてお話を伺いました。


 

譲渡企業
社名 株式会社夢花
業種 小売業
拠点 東京都
譲渡理由 後継者不在

 


 

譲受企業
社名 江一株式会社
業種 製造・卸売業
拠点 滋賀県
譲受理由 既存商品・サービスの強化

 企業概要 

江一株式会社
HP:https://www.kouichi.co.jp/

1852年創業。蚊帳の製造から始まり、1901年にシルク事業へ進出してブラジルや中国から原糸の輸入を開始。1970年代頃から染めもの分野を開始し、留袖、振袖、喪服、一般呉服、小物までを手がける総合メーカーへと成長。その後、小売業にも幅を広げ、現在はシルク原糸の調達から生地製造、染色、商品企画、卸売までを一貫して提供。近年はインバウンド向け事業や着物レンタル事業も展開し、和文化の継承と発展に取り組んでいる。

 

原糸から小売まで。170年以上続く老舗企業の道のり

——貴社の事業内容について教えてください。

当社はシルク原糸の調達から生地製造、染色、商品企画、卸売と、きもの業界の川上から川下までワンストップで提供しています。これらの工程を一貫して対応できる企業は、業界でも当社だけだと自負しています。

私が入社した1990年代頃は、本当に着物がよく売れていました。問屋から電話一本で注文が入り、営業が必死に動かなくても売上が立つような時代。そのころは、主に問屋向けの販売が中心でした。

ところが市場が徐々に縮小する中で、お客様に選ばれるためには企画力や提案力が求められるようになりました。実際に全国の展示会を回る中で、お客様のニーズを知ることの重要性を強く感じるようになったのです。

当社は製造や卸には強みがありましたが、お客様と接する川下の領域はありませんでした。以前から「お客様の声を直接聞ける仕組みを持ちたい」という想いがあったので、小売業への進出は必要不可欠と考えるようになりました。

 

過去に挑戦した小売業。M&Aで再チャレンジ

——夢花とのM&Aの経緯を教えてください。

お客様のニーズを直接得る仕組みがほしいと考えていた中で、小売機能を持つ夢花のM&A相談がありました。夢花とのM&Aは、お互いの弱みを補い、強みを伸ばせるだけでなく、川上から川下まで業界でも数少ない一気通貫型の企業になれると考えたのです。

——そのほかに、夢花を選ばれた理由はありましたか?

一番の理由は、長年の信頼関係を築いてきた前社長の柳浦様から「我が社の事業を引き継いでもらえないだろうか」と声をかけていただいたことです。柳浦前社長とは、私が若手営業社員だった頃からお付き合いさせていただいていて、もう25年以上のお付き合いになります。

一般的なM&Aでは、資料や数字を見ながら相手企業を理解していくことになると思いますが、夢花の場合は社員も財務状況も理解していましたし、相手側も私のことをよく分かってくれていました。そのため事業承継の相談を受けた時も、自然と前向きに検討することができました。

当社は過去に独自で小売業に挑戦したことが何度かありますが、正直どれも成功とは言えない結果でした。店舗、人材、立地、それらを一から揃える難しさを経験していたからこそ、既に立地のいい場所に2店舗を持っていた夢花とのM&Aは大きな価値があると感じました。

——M&Aの交渉を進める上で、バトンズや専門家のサポートはいかがでしたか?

当社は過去にM&Aの経験がありますが、私自身としては初めてのM&Aだったので、財務内容の確認やデューデリジェンス、契約面の整理など、分からない部分が多くありました。そのような状況で専門家が間に入ってくれることで安心感がありましたし、お互いに公平な立場で話を進めることができました。また、専門家に伴走していただいたことで、自分たちは事業の将来像を考えることに集中できたと思います。

着物の伝統文化を守るために、製造と小売の両輪が重要

——着物という伝統文化を守っていくために、貴社が取り組んでいることがあれば教えてください。

当社は「久米島紬株式会社」を2005年にM&Aで譲り受けていますが、これは私が沖縄を営業で回っていたときに「久米島で経営が厳しい工場があるので助けてもらえないか?」と相談を受けたことがきっかけです。

採算面だけを考えれば非常に厳しい事業でしたが、「この業界の未来のためにも、久米島の伝統文化を残さなければ」という使命感が芽生え、当時の上層部に相談して実現に至りました。

この業界では職人の高齢化が進んでおり、本当に素晴らしい技術を持っている人たちが生活のために業界を離れていく姿をたくさん見てきました。彼らの商品に込める想いを聞けば聞くほど、「本物の技術をなくしてはいけない」という想いは強まるばかりです。

最近では、『蝋結染め』という希少な染色技法の経験を持つ職人のために、秩父で工房を立ち上げました。その方は業界を離れようとしていたのですが、「私たちがサポートするから、その技術を後世に残してほしい」とお願いして一緒に取り組んでいます。将来的には、このような熟練職人が若い世代へ技術を伝えられる環境を整備していくことが使命だと考えています。

一方で、職人だけを守ろうとしてもビジネスは成立しません。商品を売る場所がなければ、結局その技術は続いていきません。「売る場だけがあってもダメ、作る人だけがいてもダメ」だという前提で、その適正なバランスを日々意識しています。

このM&Aが日本の伝統や職人技術をつなぐための大きな一歩に

——今後、夢花をどのような会社にしていきたいですか?

「着物なら夢花」と言っていただけるような存在にしていきたいと思っています。着物は価格も分かりづらく、どこへ行けばいいのか分からないという方が少なくありません。そういったお客様から信頼されるお店になりたいですね。

江一という170年以上続く老舗メーカーのグループ会社になったからこそ、品質やメンテナンス、アフターサービスも含めて安心感を提供できるはずだと思っています。まずは現在の2店舗をしっかり成長させることが目標ですが、将来的には主要都市への展開も視野に入れています。

写真)左から3番目:宮本様、4番目:夢花 柳浦様、5番目:江一 代表取締役 樋口様

——最後に、江一の今後の展望をお聞かせください。

今回のM&Aによって、念願だったお客様の声を直接聞ける環境が整いました。その声をモノづくりに反映し、利益を生み出し、その利益を社員や職人に還元していく。そうした循環を作っていきたいと思っています。

また、私たちの企業理念は「和のライフスタイルを提案する企業」です。将来的には着物だけにとどまらず、日本文化、飲食、建築、テキスタイルなど、「和」を軸にした事業展開にも取り組んでいきたいですね。

着物文化を守るだけではなく、日本の伝統や職人の技を次世代へつないでいく。そのための基盤づくりとして、今回のM&Aは非常に大きな一歩だったと感じています。

「成約を支援したバトンズ担当者のコメント」

ご紹介元のベンチャーサポート様を通じて、本ご成約をサポートさせていただきました。

もともとお知り合いだった両社はスムーズに進まれるかと思いましたが、補助金申請の急な制度変更が重なり、長期間の待機を余儀なくされました。その期間に譲渡企業様の業績に変動があるなどで交渉が難航する中、局面を打開したのは「自分が社長になって引き継ぐ」と社内を粘り強く説得した、江一の宮本様の強い覚悟です。

また、売り手様を親身にサポートいただいたベンチャーサポートの青柳様の存在も、大きな後押しとなりました。このご成約が実現できたのは、当事者同士の確かな信頼関係と宮本様の熱意及び青柳様の支援があったからこそだと感じています。

両社が手を取り合う新たな門出と、今後の更なるご発展を心よりお祈り申し上げます。

株式会社バトンズ
鈴木安夫

誰でも会社を売買できる時代に、テレビで話題急増中

成約事例 既存商品・サービスの強化 滋賀 製造・卸売業(日用品) 買い手

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