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創業90年の歴史をもつ柴田屋、香川県の小さな酒店を引継ぎ。「街の酒屋文化の火を灯し続けたい」

2025年05月08日

業務用酒販事業を中核とした11社を統括する株式会社柴田屋ホールディングス。同社の傘下であり、企業グループの中心である株式会社柴田屋酒店は、酒類卸売業を主軸に創業90年を迎える老舗企業です。柴田屋ホールディングスは経営の多角化を進める中で、2018年から本格的にM&Aを実行。地方への展開も精力的に進める中で、2024年10月に合同会社松田酒店とのM&Aが成立しました。規制緩和等で競争激化が進む酒販業界において、柴田屋ホールディングスはM&Aを駆使してどのような経営ビジョンを描いているのか。同社の取締役であり、数々のM&Aを手掛けてきた小林治様にお話を伺いました。


 

譲渡企業
社名 合同会社松田酒店
業種 小売業(酒類)
拠点 香川県
譲渡理由 後継者不在

 


 

譲受企業
社名 株式会社柴田屋ホールディングス
業種 製造・卸・小売業など(酒類)
拠点 東京都
譲受理由 新規エリアへの進出

 


酒販業界の規制緩和から、多角化経営へ向けて舵取り

柴田屋ホールディングスは、現在11社(国内8社・海外3社)で構成された、SAKEに特化した事業を展開する企業グループです。国内事業では、飲食店やクラフトビール醸造所の運営を手掛けるSAKE-YA JAPAN、酒類の輸入販売を手掛けるSELESTA、倉庫管理・物流を担うSKLなど、お酒の醸造・流通・販売まで一貫して手掛けているのが特徴のひとつです。

また、地方の酒店として群馬県の増村酒販、広島県のミシマ酒販をM&Aでグループの傘下としており、ヨーロッパやアジアなど海外にも複数の拠点を有しています。

グループの中心である株式会社柴田屋酒店は、1935年から創業90年の歴史を持つ老舗企業。もともとは家庭用の酒販をメインに事業を行っていましたが、酒販業界が規制緩和の波にさらされ、従来の小売事業を展開していた企業は苦境に立たされます。この変化について柴田屋ホールディングス取締役である小林治様は次のように説明します。

「創業時から、柴田屋酒店は家庭向けの小売業を営んでいました。サザエさんに登場する酒屋の三河屋さんのようなイメージですね。90年代後半から酒販小売免許の緩和が進み、私たちも事業の方向性の見直しを迫られました。スーパーやコンビニでもお酒が買えるようになると、酒屋の事業が縮小するのは目に見えていましたので。

そこで、業務用酒販事業へのシフトを試みますが、そこにはライバルとなる大手事業者が仕入力を武器に立ちはだかっています。同じ土俵で戦うと価格競争に巻き込まれてしまい、資金力では到底勝てません。差別化を図り、別の強みを持たなくては生き残れないため、経営戦略として事業の多角化を進める必要があったのです。」

酒販業界は仕入力を武器にした大手企業が台頭したことで、規模の小さな小売事業者の経営は苦戦を強いられています。柴田屋酒店も例に漏れず苦境となることが想定されたため、生き残りのために家庭用小売から業務用酒販へ事業をシフト。さらに、酒販事業だけではない多角化経営の道も模索し始めます。そこで目をつけたのが、飲食店事業でした。

2011年には、本社ビル1階にワインバーを出店。2018年にはクラフトビール醸造と店舗事業を展開していた「ビール工房」をM&Aでグループ化します。現在は醸造・酒販・飲食サービスを融合させた「SAKE-YA(サカヤ)」を含め、10店舗の運営を行なっています。

「従来の酒販と比べて、飲食店事業は粗利がとれるのが魅力です。柴田屋酒店で扱ってきた商品を提供していくこともできますし、『ビール工房』が行なっているクラフトビールの醸造は当時としては珍しく、話題にもなっていました。

多角化経営を考える際に、自分たちで立ち上げるのではなくM&Aを選択したのは、やはり時間と人材の両面で最適だと思ったからです。また、将来的に醸造というモノづくりを見据えていたこともあります。」

地方酒販店の販路開拓。地域に根付いた事業の広がりで大企業と差別化

写真) 株式会社柴田屋ホールディングス 代表取締役社長:柴泰宏様

その後、同社はM&Aによる酒販事業の拡大を積極的に進めていきます。2023年に広島県広島市のミシマ(現・ミシマ酒販)を、2024年は群馬県高崎市の増村酒店(現・増村酒販)のM&Aを実行。その背景について、小林様は以下のように述べています。

「柴田屋酒店では、差別化商品としてワインを提供しており、2015年から直輸入のワインも取り扱ってきました。日本酒も市販品だけでなく、酒蔵さんと協力したオリジナル商品の販売を行なっています。これらの商品を大都市圏だけではなく、地方の酒販店ルートで販売していくことを視野に入れていきました。

また、酒販は地域差が大きく、東京などの大都市圏では大手事業者が多数いるため、価格競争にさらされます。一方、売上の見込みが少ない地方には大手事業者もなかなか手を出さないので、競合が少なく、無理な安売りをしなくても需要が見込めるという状況もあります。自社の競争優位性を確保するためにも、大都市圏を避けた展開を進めました。」

柴田屋ホールディングスが香川県丸亀市にある松田酒店(現・松田酒販)に白羽の矢を立てたのは、2024年春頃のこと。松田酒店は丸亀市で根づいた酒販のルートを保有しており、また県内最大都市である高松市への商圏拡大も見込めます。小売事業も展開しており、同社の地域展開に合致した事業でした。

「BATONZのサイトでさまざまな情報をキャッチする中で、松田酒店さんの掲載を目にしました。もともと当社には広島県のミシマさんがグループに加わっていたため、広島と香川の距離であれば一緒に管理ができると考えました。また、丸亀市は競争も少ないですし、高松市という香川県内の大都市エリアが近く、商圏拡大も見込めるので具体的に話を進めさせていただきました。」

社名を残し、従業員の雇用も継続。決断には売り手社長の存在が大きかった

写真) 松田酒店の内装(現:松田酒販)

2024年の春頃に、柴田屋ホールディングスは香川県の松田酒店に訪問。そこで松田酒店の代表である松田様と話をしながら、手ごたえをつかんだと言います。

「M&Aでは、駆け引きや交渉が色々と行われるのはよくある話ですが、何よりも相手の人柄や情熱が大切だと私は思っています。松田さんと話をした際には、本当にエネルギッシュな方だと感じました。立地的な問題で、今すぐ丸亀市に常駐する人間を配置することはできなかったので、松田さんがいる安心感によって、私たちのグループで共に事業を進めていける確信をもつことができました。」

その後も、お互いに仲介会社を入れることなく直接話し合いながら交渉を進行。双方で話を進めることで、お互いの信頼関係を構築することにつながり、後々の事業推進に好影響を及ぼす副次的効果も生まれたと小林様は話します。

小林様はもともと、柴田屋ホールディングスに参画する前から食品会社で卸会社のM&Aを複数経験した実績をもっています。そのため、M&Aにおいて注意すべき点は一定熟知しており、その中で「在庫と取引先についてはしっかり確認するようにしている」と述べます。

「松田酒店さんもそうですが、私たちは社名を残し、従業員もそのまま雇用を継続することを前提としてM&Aに取り組んでいます。松田さんにおいても、今も現場で活躍いただいています。逆に、松田さんがM&A後すぐに現場を離れる条件であれば、この話はなかったかもしれません。それくらい、人柄含め松田さんの存在も大きな決断要素でした。」

M&Aに取り組む目的のひとつに、「酒屋文化を地方に残したい」という思い

松田酒店は2024年10月より柴田屋グループの一員となり、松田酒販と名を改め事業を再開しています。従来扱っていた商品ラインナップに柴田屋酒店のオリジナル商品が加わり、日々の業務は松田酒店から松田さんを含めた従業員5名が引き続き担当。また、広島のミシマ酒販で代表を務める杉村拓海様が、松田酒販の代表も兼任。広島と香川を行き来しながら2社の運営をしていきます。

今後の松田酒販の方針として、丸亀市から約1時間の近距離に位置する高松市へ週2回の配送を行い、新規の販路開拓に力を入れていきたいと商圏拡大に向けて意気込みを述べます。

地方への販路開拓は、今後も精力的に進めていく方針とのことで、その方向性は「酒屋文化を地方に残していく」という同社の理念に基づいています。M&A戦略含めた柴田屋ホールディングスの今後の展望について、小林様は以下のように話します。

「できれば、東北や北海道で私たちのワイン・日本酒を販売できるルートを構築していきたいですね。東京以外の大都市圏である名古屋、大阪、博多などは協力会社と一緒に展開していますが、やはり競争が激しくなるエリアなので、大手と棲み分けをしながらエリア拡大をしていければと思います。

事業承継を考えている後継者不在の企業・店舗はまだまだ多くいらっしゃると思います。私たちのM&Aの基本スタンスは、社名を残し、従業員の雇用も引き継ぐことです。私たちとしては、その街から酒屋がなくなってしまうことが大きな問題として捉えていて、酒屋という文化を地元にしっかり残していきたいという思いです。

丸亀市も、もし松田酒店がなくなってしまうと、スーパーなどの量販店やコンビニだけになってしまう地域です。住んでいる方にとっても、それでは情趣がないでしょう。私たちが事業を承継することで、その地域の方々に喜んでもらえればと思います。また、日本の飲食業界を応援する酒屋になるために、各地域の酒屋さんを積極的に応援することにもチャレンジしていきます。」

株式会社柴田屋ホールディングス様のこれからのご発展を、バトンズ一同、心より応援しております!

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