日本と中国で約10年、飲食店経営の経験をもつ鈴木友紀様は2024年1月、東京で十数店舗の飲食店を経営する「株式会社ヒューマックス」より、焼き魚をメインとした飲食店一店舗を譲り受けました。直近は会社勤めをしていた鈴木様は、「もう一度飲食店を始めたい」という思いからM&Aを検討。譲り受けてから1年近くが経過している現在、売上は順調に推移しています。ゼロからの開業経験を持ちながら、今回M&Aによる起業も経験された鈴木様に、M&A交渉時のことや現在のご状況についてお話を伺いました。
譲渡企業 | |
---|---|
社名 | 株式会社ヒューマックス |
業種 | 飲食業 |
拠点 | 東京都 |
譲渡理由 | 選択と集中 |
譲受企業 | |
---|---|
社名 | 個人 |
業種 | 飲食業 |
拠点 | 東京都 |
譲受理由 | 起業 |
家庭と仕事のバランスを考え、M&Aでの再挑戦
鈴木様が初めて飲食店の開業に踏み切ったのは、27歳の頃。飲食業界で経験を積み、渋谷で小料理屋として初の開業に至りました。その後、上海に渡り一時的に会社員として勤務したのち、上海でも和食店を開業。結婚と出産を機にその店舗を売却して帰国した後は、家庭と仕事の両立を考え、飲食や宿泊業を営む企業に勤めていました。
しばらく起業勤めをしていた鈴木様ですが、「また自分でお店を持ちたい」という想いが再燃。一方で、二度の起業経験からその大変さも身をもって経験している鈴木様は、家庭との両立をしながら、新たにゼロからお店を始めることに躊躇いを感じていました。
そんな中、既存の店舗を引き継ぐM&Aという手段は、準備金や運営リスクを考慮した時に現実的ではないかと考えた鈴木様は、バトンズの譲渡案件に目を通すようになります。仕事と並行して家族と過ごす時間も大切にしたい鈴木様は「お昼はテイクアウトができて、夜にちょっとした飲み屋さんのように運営できる店舗」が理想だと考えていました。そんな時に、偶然目にしたのが今回譲り受けたお店の譲渡案件だったそうです。
「焼き魚専門店という業態に最初からピンときていたわけではなかったのですが、店内飲食とテイクアウトを両立しているのはすごく理想的だなと。このお店なら、家庭とのバランスを保ちながら無理なく経営できるのではないかと思い、『やってみよう』と半ば勢いで決断しました。
家庭のことを考えると『安定した経営基盤があること』は譲れない条件でしたので、今回は『こういうお店がやりたい』というお店の理想を優先するよりも、まずは飲食店経営で生計が立てられることを目標にしました。その点でも、M&Aによる開業であれば過去の売上も把握でき、ゼロから立ち上げるよりもリスクを抑えられると考えました。」
設備面のチェックは店舗を引き継ぐ前に確認しておくべき
譲渡先であるヒューマックスとの交渉は、オンラインをベースに進んでいきました。初回面談は、これまでの経歴や適性を確認するような質問など「お互いに合うかどうか」を探り合う、顔合わせのような時間だったと鈴木様は振り返ります。
「信用できる相手なのかどうかを、お互いに気にしながら質問をしていたと思います。私も、丁寧に引き継いでくれそうか、フォローもちゃんとやってくれそうかなどを確認しながら話した記憶があります。」
交渉時に相手の信頼度合いを確認しつつ、金額や譲渡条件に関する交渉はメールでやり取りすることが多かったと話す鈴木様。また、事前にお客様として来店して客入りなどを把握することで、共有された情報と乖離がないかのチェックも行なっていたそうです。最終的には、情報の信用性と梶川様の人柄にも好印象をもち、契約へと進みました。
一方、契約前の建物や設備のチェック、細かな条件の擦り合わせなど、事前に把握しておくべき事項を入念に擦り合わせができていなかったことから、譲受後に発覚した問題もあったと話しています。
「設備の老朽化やメンテナンスについては、事前にもっと細かく条件を詰めておくべきだったかもしれません。M&A完了後に、エアコン等の設備の故障で追加の出費が発生してしまったので。すでに運営している店舗を引き継ぐ場合、早めに現地に足を運んで設備や運営状況をよく確認することが大切だと思いました。」
既存の店舗を引き継ぐメリットと難しさ
譲受した初日から利用顧客が店舗に押し寄せ、決算書の通りの売上がすぐに上がったと話す鈴木様。一方で、譲渡直前まで経営していた本店舗を短期の引継ぎ期間で譲り受けたため、契約後の半年間は目も回るような忙しさだったと振り返ります。
今回のM&Aで鈴木様は、新規顧客を少しずつ積み上げていく開業とは違い、「完成された店舗を引き継ぐ」というM&A特有の難しさを実感したとのこと。この経験を踏まえ、引継ぎの準備期間の重要性を次のように語っていただきました。
「飲食店では、業務の流れを把握してお客様に迅速に対応できるスキルが求められます。私の場合、準備期間が一ヶ月では不十分だったと感じています。既存店舗を引き継ぐ場合は、可能な限り準備期間を設ける方が安心かなと思います。」
忙しさで半年ほどは現場に慣れることで精一杯だったと話す鈴木様ですが、業務に慣れてきている現在、既に確立されていた店の雰囲気を保ちつつも、少しずつ自分の色を加えるための工夫を模索し始めているといいます。
そのひとつが、メニューの改善。当初は前オーナーが提供していたメニューやスタイルをそのまま踏襲していたのですが、品質や独自性の向上を図るために、少しずつ手を加えていっているそうです。
「多店舗展開している企業が経営するお店だったので、メニューがマニュアル化されていました。効率を考えれば当然のことだと思いますが、個人で引き継いだからこそ、お客様に喜ばれるための改良は積極的にやるべきだと。
そこで、従来は既製品で提供していたメニューの一部を手作りに切り替えるなどの変更を少しずつ行いました。その効果かどうかはわかりませんが、現在では引き継いだ当初よりもお昼の売上が向上しています。」
お昼の営業だけでは内容や売上UPに限界があるため、今後は「夜の営業も視野に入れたい」と話す鈴木様。夜にお酒の提供を検討している一方で、昼の営業だけでも非常にハードであるため、夜の時間帯を任せられる新たな人材雇用も同時に検討中だそうです。
今後は別ジャンルの店舗展開へもチャレンジしたい
夜の営業を検討している鈴木様ですが、将来的には現在の店舗を集客の基盤としながら、異なる業態へ店舗展開していく願望についてもお話しいただきました。
「以前に経営していた小料理屋さんのようなお店を、またできたらいいなという思いも持っています。オーナーとして、さまざまなジャンルの飲食店を多店舗展開できるのが夢であり理想ですね。ただ、家庭とのバランスも考えなくてはいけないので、無理のない範囲で事業を広げていくことができればと思っています。」
ゼロからの開業とM&Aによる開業、両方を経験した鈴木様。最後にM&Aで飲食店を始めるという選択肢の可能性と注意点についてお話しいただきました。
「飲食業での独立を考えている方にとって、安定した事業をM&Aで引き継ぐのは選択としてありだと思います。経営に自信がない方であったり、何から始めていいか分からないという方にはお勧めしたいです。また、私のように家庭と仕事のバランスを求める場合、収益がある程度計算できることも魅力的です。
ただし、引き継ぐ際には設備や売上の実態をしっかり確認することは大事なので、できるだけ早めに現場を訪れた方がいいと思います。特に設備面は、思っている以上に費用や手間がかかることもあるので、慎重に進めることをおすすめします。」
鈴木様の今後のさらなるご活躍を、バトンズ一同、心より応援しております!
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