福岡市内で教育をテーマにした会社を設立された鈴木様(仮名)は、2024年8月に同市の個別指導のA塾を譲受されました。鈴木様は大手メーカーに在籍中、海外事業を担う部門でM&Aに携わった経歴をお持ちです。大手企業を退職して学習塾を引き継ぐに至った背景や、会社在籍時と独立後のM&Aを経験し、実体験を通じてのアドバイスなどについて伺いました。
譲渡側 | |
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業種 | 設教育サービス(学習塾) |
拠点 | 福岡県 |
譲渡理由 | 事業の存続・成長 |
譲受側 | |
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業種 | 設備工事・設計 |
拠点 | 福岡県 |
譲受理由 | 起業 |
大手メーカーの海外事業部門で培ったM&A経験
鈴木様がM&AでA塾を引き継ぎ、代表に就任されたのは2024年8月のこと。その前月まで勤められていた大手メーカーの管理職を辞め、現在は学習塾のオーナーとして新たなチャレンジに邁進されています。
鈴木様がM&Aを決断したのは、同年1月のこと。バトンズに登録して事業を探し始めてからは、約4カ月の間に退職、M&A契約、代表就任という運びとなりました。プロジェクトを進めるこのスピード感は、前職での経験が大きく影響していると鈴木様は言います。
「私は大手メーカーの海外事業を担う部門で、工場建設などの新規事業やM&Aに関わってきました。業務の進捗スピードを比べると、日本よりも海外の方が圧倒的に早い。海外事業を通して『仕事を成功させるうえでスピード感が重要』であることを学んだので、自分が独立起業をする際にもスピード感をもって進めました。」
鈴木様が大手企業の安定を捨ててでも、独立起業を決意された理由は、子どもの教育に対する強い想いがあったからでした。
「私は大学で教育学部を専攻していたので、もともと子どもの教育に興味がありました。就職時は教職ではなく一般企業を選択しましたが、働きながら学童野球の監督をするなど、子どもたちとの関わりはもっていました。
その中で、子どもたちと教育面で深く関わりたいという想いが強くなりました。具体的には、子どもたちが人生を充実させるために、思考力や実行力をしっかり身につけてほしい。そのためにもっと子どもたちに寄与したいという想いです。しかし、勤務していた大手メーカーでは副業禁止などの制約があります。二足のわらじを履くのは現実的に難しいため、会社を辞めて起業することを決断しました。」
M&Aを選んだ理由は、事業を軌道に乗せるまでの時間短縮
鈴木様が独立起業を考えるようになったのは、5年以上前のこと。独立する方法としてM&Aを選択した背景には、前職の海外事業での経験があったそうです。
「私は海外事業を担う部門のメンバーとして、M&Aと新規立ち上げの両方を経験しました。それぞれにメリット・デメリットがありますが、新規立ち上げのデメリットは、事業を軌道に載せるまでに時間を要することです。
逆に、M&Aは事業を軌道に乗せるまでの時間を短縮することができる。一方で、従業員に理念を浸透させるのに時間がかかるというデメリットがあります。しかし、社員が少ない小規模の事業であれば、理念を浸透させるのにそれほど時間がかからないと判断し、M&Aを選択しました。」
複数のM&Aプラットフォームを比較した末、バトンズの登録を決められたという鈴木様ですが、バトンズに登録された多くの学習塾の中で、鈴木様の選定基準に合う塾は限られていました。鈴木様は、どのような基準を設定して譲渡案件を吟味されていたのでしょうか。
「塾を選ぶ際に基準としていた1つ目は、個別指導塾であること。2つ目は、家庭教師や英会話の機能を備えていること。そして、3つ目は、小学生向けに国語や算数などの基本となる教科を教える機能があることです。
これらの基準にほぼ適合したのが今回、引き継いだA塾でした。A塾の前代表者との初回面談では、企画書を持参し、『このように改善したら、さらにA塾の魅力がさらに高まる』と改善案をプレゼンさせていただきました。」
改善提案を受け、鈴木様の熱量と本気度を感じた前代表者は、その後のM&A交渉をスピーディーに進めていきました。A塾は、生徒の中心が中学生から高校生の個別指導塾で、講師の大半が国立大学生であり、将来を見据えて計画を立てるサービスも提供しています。
リスクも念頭に入れたうえで実行することが重要
先述の通り、鈴木様は前職の大手企業でM&Aに携わった経験があります。これまでのM&A経験と、今回の個人でのM&A経験を基に、これからM&Aを検討している方へのアドバイスをお願いしました。
「第1のポイントは、対象企業の理念や存在意義に着目すること。ご自身の根本的な考え方と、相手先の理念がズレていると、上手くいかない確率が高くなります。なぜなら、この部分でズレがあると、引き継いだ後に従業員やスタッフに理念を伝えても浸透しにくいからです。
第2のポイントは、経費をしっかり把握すること。一定規模の企業をM&Aする場合は、当然ながらデューデリジェンスが実施されます。しかし、小規模のM&Aの場合、経営者が正確な経費を把握できていなかったり、経理のシステム上、リアルタイムの経費が分からなかったりすることもあります。
だからこそ、契約前に丁寧なヒアリングをする必要がある一方で、それでも限界はあります。そのため、『把握できていない経費があるかもしれない』というリスクも念頭に入れた上で、それも許容できる範囲でM&Aを実行した方がよいと思います。」
そして、鈴木様は第3のポイントとして、M&Aの初心者にとって、仲介会社の手数料や財務状況の事前確認が重要であると述べています。
「一般的な国内のM&Aでは、売り手側に仲介会社が付いている場合、M&Aが成約した際に買い手側も手数料を負担することになります。そのため、この手数料を含めた譲渡価格で譲受の妥当性を判断することが必要になります。
また、財務状況のチェックにおいては、表面上の数字で見るのではなく、その中身を詳細に確認することが欠かせません。例えば、対象企業が利益を計上している場合、その中に労務費が含まれているかどうかを確認する必要があります。労務費が含まれていない場合、表記されている利益よりも実際には少なかったり、赤字であったりする可能性もあります。」
一人ひとりの子どもが目標を見つけ、それを達成するためのサポートを
今回、鈴木様がバトンズをご利用になった感想では、ご不満な点と良かった点の両方があったそうです。また、バトンズを利用して良かった点について、鈴木様は以下のように述べます。
「バトンズのおかげで、自分が求める塾を引き継ぐことができました。この点については、感謝しています。私自身がA塾の存在意義を忘れなければ、しっかりと利益を伸ばしながら運営していけると思っています。」
M&A成約から約1カ月の間に、鈴木様はまず教室の内装修繕や清掃、不要品の処分などを精力的に取り組みました。また、受け入れ可能な生徒数に余裕があるため、時代と地域に合った集客の施策も進められています。今後の展望について、鈴木様は「今回のM&Aを皮切りに、さまざまな側面から子どもたちの教育サポートに関わっていきたい」と話しています。
「当塾が目指しているのは、一人ひとりの子どもが人生の目標を見つけ、それを達成するために、しっかりとサポートすることです。新たにスタートしたA塾では、勉強に加えて、将来の目標を見つけるためのサポートも行います。
弊社全体の展開については、A塾のノウハウを基に、地域内に複数の学習塾を立ち上げていきたいと考えています。また、子どもたちの将来の選択肢を増やすための場として、プログラミングやeスポーツなどをテーマにした教室も展開していく予定です。」
鈴木様の今後の更なるご活躍を、バトンズ一同、心より応援いたしております!
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