SEOに特化したWebマーケティング企業の「株式会社メディアグロース」はこの度、オンライン講座の“アガルートアカデミー”を始めとする教育サービスを中心に事業を展開する「株式会社アガルート」に会社譲渡を実現されました。今回、メディアグロースの創業者である舟崎友貴様に、M&Aを検討するようになった背景や、譲渡先を選ぶ際に重視されたポイント、今後の事業展開などについてお話を伺いました。
譲渡企業 | |
---|---|
社名 | 株式会社メディアグロース |
業種 | IT |
事業内容 | SEOコンサルティング、宅配買取 M&A相談窓口 ※関連会社で運営 |
拠点 | 東京都 |
譲渡理由 | 経営基盤の強化 |
譲受企業 | |
---|---|
社名 | 株式会社アガルート |
業種 | 教育サービス |
事業内容 | 難関資格の通信講座事業 など |
拠点 | 東京都 |
譲受理由 | 集客力の強化 |
SEOに特化したコンサルティングで事業拡大
メディアグロースの創業者である舟崎様は、大学卒業後に地元企業へ就職。その後、成長機会を求めてコンサルティングファームへと転職をします。その間、会社員1年目からスキル獲得を目的に副業でブログやサイト運営に取り組まれていた舟崎様は、そこで培ったスキルを活かし、Webメディア事業にて独立を果たします。
その後、立ち上げたメディア事業を売却した舟崎様は、その後も複数回の事業売却を経験したのち、2018年にメディアグロースを設立します。SEO領域で豊富な経験を積まれた舟崎様は、メディアグロースの特徴について、以下のように解説します。
「メディアグロースの強みは、私たち自身が複数の自社メディアを運営していることです。通常、Webマーケの会社は他社メディアのコンサルティングに特化して業務を行っています。この場合、施策の提案が理論に偏ったものになりやすく、机上の空論で終わってしまうケースも散見されます。
自社メディアを運営するメリットは、自社の検証結果を活用したデータなどを基に、施策の提案ができることです。アップデートやアルゴリズム変更が活発なSEOにおいては、数ヶ月前の施策が通用しなくなることも大いに考えられます。そんな中でも、自社メディアをもつことで現実的で再現性の高いコンサルティングを行うことができると考えています。
2点目は、SEOに特化したコンサルティングを行っている点です。弊社は、総合的なWebマーケティングのご提案ではなく、私たちが最も得意とするSEOに絞ってコンサルティングを提供しています。それによって、クライアント企業は費用対効果の高い施策を実行しやすくなります。」
不安定な経営環境から脱却するため、M&Aを検討
「SEOコンサルティング事業」と「Webメディア事業」の両輪で収益を上げてきたメディアグロースですが、安定経営という観点では課題がありました。SEOはGoogleによる依存度が高く、アルゴリズムアップデートによって検索順位が変動するため、アクセス数や収益が大きく増減することがあります。現在の収益状況が数年後も続くかは分からないというSEO事業がもつ課題は、メディアグロースにとっても不安要素だったといいます。
「Webメディア事業では、複数のメディアを運営していましたが、大半は広告収益型でした。これは、メディア内に掲載されている広告や記事を読んだユーザーを、広告主サイトに誘導することでマネタイズするビジネスモデルです。
LTVの概念がないCPA型の広告メディア事業は、Googleのアルゴリズム変動に大きな影響を受け、売上が大きく増減する可能性と隣り合わせです。この経営環境を解消するためには、自社の商品やサービスをもつ必要があり、ひとつの選択肢として事業会社への譲渡を考えるようになりました。」
自社の商品やサービスを提供する企業のSEO戦略では、集客したユーザーがそのまま見込客となり、リピートも発生する可能性もあるため、一度の送客で複数回の売上が立つ可能性があります。このようなタイプの企業にメディアグロースを譲渡することが実現すれば、Googleの影響は限定的となります。
今回の譲渡先であるアガルートは、オンライン講座を開発・販売する企業であり、まさに舟崎様がイメージされていた「自社サービスを提供する会社」へのM&Aが実現したということになります。
譲渡先の選定で重視したのは、事業シナジーと雇用環境
今回M&Aを検討するにあたり、舟崎様はサイト売買の仲介を手掛ける株式会社サイトストックに相談。代表取締役ともともと懇意にしていたという経緯があり、その中で同社の担当者経由でバトンズにも掲載されたという背景がありました。
バトンズ以外のM&Aプラットフォームも活用し、何十社という企業から問い合わせが殺到。最終的な譲渡先候補は数社に絞られ、その中からアガルートへ譲渡する運びとなりました。譲渡先をアガルートに決めた理由について、舟崎様は同社が「教育サービスを展開する企業」であることと「M&A後の雇用環境」を挙げています。
「アガルートに譲渡を決めた理由は、メディアグロースの知見を生かしやすい領域でサービスを展開していたことがひとつです。アガルートの主要事業である教育領域は、SEOにおいて過当競争が少ない業界です。そのため、メディアグロースがグループに加わることで高いシナジーが期待できると判断しました。
もう1つの理由は、従業員の雇用環境が整備されていることです。アガルートは、これまで複数企業をグループ化していますが、譲渡企業の従業員の方々がグループに加わった後も心地よく働いていることを社長の岩崎様から伺い、これが安心材料となりました。」
舟崎様が社員向けにM&Aの発表をした際、従業員からはネガティブな反応は一切なく、「規模の大きい会社であるアガルートなら安心して働ける」というようなポジティブな声が聞かれたそうです。
M&A交渉過程で苦労した、本業とDD対応の両立
アガルートの代表取締役である岩崎様は、メディアグロースを譲受した理由について「SEOの知見を評価した結果」とおっしゃっています。この評価について、舟崎様は以下のように答えています。
「私たちは、SEOというテーマを突き詰めて取り組んできましたので、この分野に関してはかなり自信を持っています。その部分を評価していただけたことは、とても嬉しいですね。
Webマーケティングにおけるチャネルは多様化していますが、SEOは依然として重要なチャネルであると感じています。SEOを活用して、アガルートやグループ企業の集客に貢献していきたいと考えています。」
また、M&A交渉を振り返ってみて、舟崎様が一番大変だったと印象に残っていることについて伺うと、「デューデリジェンス(以下、DD)対応と本業の両立」を挙げられました。
「アガルートのDDの質問項目は一般的な内容だったと思いますし、メディアグロースの財務内容もある程度整理されていました。それでも、DDの対応と本業を両立するのは大変でした。DDでは多くの質問項目がありますが、限られた時間の中でその一つ一つの質問に適切に答えていくのは予想以上に大変でしたね。」
自社の強みを活かし、グループ企業とシナジーが生まれる
写真)左:舟崎様、左から二番目:岩崎様
今後は、舟崎様が引き続きメディアグロースの業務に関わっていくことが決定しています。取材時点でメディアグロースがアガルートに譲渡されてから約4カ月が経過していますが、今後どのような形でグループに貢献していく予定でしょうか。
「現時点では、新しいメディアの立ち上げや、グループ企業のSEOコンサルティングなどに関わっています。新メディアの立ち上げについては、弊社が中心になってグループの収益に結びつくメディアを構築中です。今後、このメディアをグループ企業と連携して運営していく予定です。また、SEOのコンサルティング業務も、アガルートグループ全体の集客改善に取り組んでいます。」
M&A後、アガルートやグループ企業との具体的なシナジーが徐々に生まれ始めているようです。M&A後のシナジーについては、アガルート代表取締役の岩崎様のインタビューでも伺っていますので、ご興味のある方はこちらもご参照下さい。
株式会社アガルート、株式会社メディアグロースの今後の更なるご活躍を、バトンズ一同、心より応援いたしております!
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