今回は、「スクイーズアウトとは?」について、解説します。
スクイーズアウトとは、少数株主より株式を強制的に取得する方法のことです。
譲渡企業側の株主が分散している場合よく活用される方法であり、スクイーズアウトを理解し上手く利用できればM&A成約にもぐっと近づくことになります。
今回の記事内容を閲覧することより、今後のM&A成約率も向上させることができるため、特に買い手側には、M&A初学者からストロングバイヤーまで幅広くお読みいただきたいところです。
今回のラインナップは、スクイーズアウトについての、
②スクイーズアウトの重要性
③スクイーズアウトのメリット
④スクイーズアウトの主な方法
⑤スクイーズアウトの手続きの流れ
となります。
【監修者プロフィール】
スモールM&Aアドバイザー/ M&A支援機関登録専門家
伊藤 圭一(いとう けいいち)
「小規模企業と個人事業の事業承継を助けたい!」そんな想いから、2019年7月に小規模事業専門のM&Aアドバイザー「スモールM&Aアドバイザー・合同会社アジュール総合研究所」を設立。
「合同会社アジュール総合研究所」の紹介ページ
スクイーズアウトの意味
スクイーズアウトとは、少数株主より株式を強制的に取得する方法のことです。また、少数株主とは、親会社に過半数以上の株式を保有されている子会社の中で、親会社以外の株式を保有している株主のことです。
中小企業のM&Aの場合、分散した株主を整理する目的で活用されることが多く、法律に則った方法で少数株主から株式を強制的に取得できるため、M&Aを円滑に実行させることが可能となります。
スクイーズアウトの重要性
中小企業のM&Aでは、M&Aスキームに株式譲渡が多く活用されます。その際、買い手は売り手より全株式を取得し、完全子会社にすることが一般的となっています。
しかし、少数株主がM&Aに反対、または遠隔地に在住のため株式譲渡に必要な書類を取得する事が難しい場合などは、完全子会社化を実現することはできません。
また、M&Aに反対である株主が存在したままM&Aを成約させることは買い手にとっての経営リスクともなり、M&Aの破談要因ともなりえます。
そこで、スクイーズアウトを活用し、強制的に株式を買い取ることで、経営の阻害となる少数株主を排除することが可能となるのです。
スクイーズアウトのメリット
スクイーズアウトのメリットは、以下5つです。
ひとつずつ解説していきましょう。
重要意思決定の迅速化が図れる
会社経営上、重要な意思決定は株主総会で決議しなければいけません。しかし、反対する少数株主が存在する場合、重要意思決定を決議することは難しくなり、時間だけが浪費されてしまいます。
そこで、スクイーズアウトであらかじめ反対勢力となる少数株主を排除しておくことで、株主総会決議が円滑に行われることが可能となり、重要意志決定の迅速化が図れることとなるのです。
事務処理の削減
株主総会を開催するには開催手続きが必要となります。ですが、少数株主が多く分散している場合などは、時間も手間もかかってしまいます。
しかし、スクイーズアウトによりあらかじめ株主の母数を少なくすることにより、株主総会の開催手続きも大幅に削減できます。中小企業の場合、完全親会社とさせることが通例であり、その場合、株主総会を開催せず書面の作成のみで株式総会を省略することも可能となります。(会社法第319条、第320条)
株式分散の防止
株式は相続財産です。もし株主が死亡した場合、相続人が新たな株主となりますが、ここでも株式は細分化され各相続人の手元に転がり込むことになります。その場合、遠い親戚又は、全く面識のない人間に株式が渡ってしまうこともあり、会社経営上のリスクも増大してしまいます。
上記のような、株式の分散防止のためにもスクイーズアウトで株式を集約しておくべきなのです。
訴訟リスクの排除
少数株主が存在し、その株主が主要株主の反対勢力となっている場合、重要意志決定の妨げになると言うことは前述の通りですが、会社運営を行っている取締役も常に株主代表訴訟を受けるリスクに晒されています。
このような状況下で、会社の健全経営ができるかといえば当然そうではなく、会社経営自体が危ぶまれてしまいます。ここでもやはりスクイーズアウトにより少数株主を除外し、彼らからの訴訟リスクをなくすことが可能となるのです。
税制上のメリット
完全親・子会社の場合、連結納税制度が選択できるようになります。例えば、子会社が赤字であった場合、親会社の利益と通算でき、その分節税ができます。
つまり、親子間の損益通算が可能となり税制上のメリットも生まれます。節税という点でもスクイーズアウトの恩恵を享受できるというわけですね。
スクイーズアウトの主な方法
スクイーズアウトの主な方法は、以下4つです。
これもひとつずつ解説していきましょう。
株主等売渡請求
総議決権の90%以上を持つ株主(または株主グループ)を特別支配株主と言います。株主等売渡請求とは、特別支配株主が子会社の承認を得たうえで、少数株主より株式を強制的に取得することです。
これのメリットは、株主総会の決議が不要であり、財源規制も勘案する必要がない点にあります。子会社の承認は、特別支配株主からの株式売渡請求の通知(取得日や譲渡価格を記載)を受けたことにより、取締役会設置会社であれば取締役会決議、取締役会非設置会社であれば取締役の過半数の合意を得ればよく、この点もメリットと言えます。
全部取得条項付種類株式
全部取得条項種類株式とは、株主総会特別決議により株式を強制的に買い取ることができる株式のことです。
この方法では、一度すべての発行済株式を全部取得条項付種類株式に変更し少数株主の端株を大株主または子会社が強制的に買い取りスクイーズアウトを完了させ、その後、再度普通株式に変更します。
株式併合
株式併合とは、複数の株式を1つの株式にまとめることです。株式併合を実行するためには、株主総会の特別決議が必要となります。
株式併合により株式の単位が切り下げられることとなるため1株に満たない、いわゆる端株が生じます。
少数株主が保有している株式が端株となると株主としての権利は行使できなくなり、まずはスクイーズアウトの目的自体は達成されます。その後、少数株主より端株を買い取りスクイーズアウトは完了されるわけです。
株式交換
株式交換とは、主に親会社が子会社を完全子会社化する目的で用いられ、子会社の株主に親会社の株式を交付し子会社の株式を取得する方法のことです。
これにより少数株主を排除することは達成されますが、今度は親会社の株主となってしまいます。そのため、株式交換の対価を現金とするか、株式交換後に端株を買い取る必要があるので注意しましょう。
スクイーズアウトの手続きの流れ
ここでは、株式併合におけるスクイーズアウトの流れを解説します。
それでは順を追って解説していきましょう。
取締役会の開催
まずは、取締役会を開催し、株式併合の決議と株主総会招集の決議を行う必要があります。
取締役会の招集は、取締役会の日の1週間前までに、各取締役および各監査役に対して、通知する必要もあるので併せて覚えておきましょう。(会社法368条1項)
参考:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=417AC0000000086
取締役会の決議後は、株式の併合に関する決議内容を議事録にし、最終年度の財務関係書類などを会社本店に据え置き、株主総会開催の2週間前(もしくは株主への通知・公告の日のいずれか早い日)から6ヶ月間の開示も必要となります。
株主総会招集通知発送
株主総会開催の2週間前までに、株主に対して株主総会招集の通知を発送します。(会社法299条1項)
株主総会の実施
株式合併は、株主総会の特別決議で承認されます。(会社法309条2項4号、180条2項)
つまり、出席した株主の議決権数の2/3以上の賛成を得て、株式併合が承認されるわけです。
株主への個別通知
上記株主総会の承認を受け、株主に対し個別の通知を行います。
通知方法は、株式併合の効力が発生する日の20日前までに、全株主に対して株式併合に関する詳細を記載した通知書を送付することで通知します。(会社法181条1項、182条の4第3項)
裁判所への売却許可申し立て
通常、株式併合により端株が発生します。
これを買い取るために、裁判所に売却許可の申し立てを行います。
株式併合の効力発生・株式の買い取り
株式併合の効力は、株主総会で決議された効力発生日が到来した日をもって発生します。裁判所から売却を許可されている場合は、端株を会社が買い取ります。
以上をもって、少数株主のスクイーズアウトは完了となります。
まとめ
以上、「スクイーズアウトとは?」を、解説しました。
今回の内容を、おさらいしましょう。
①スクイーズアウトの意味
・スクイーズアウトとは、少数株主より株式を強制的に取得する方法のこと。
・中小企業のM&Aの場合、分散した株主を整理する目的で活用されることが多く、法律に則った方法で少数株主から株式を強制的に取得できるため、M&Aを円滑に実行させることが可能となる。
②スクイーズアウトの重要性
・中小企業のM&Aでは、買い手は売り手より全株式を取得し、完全子会社にすることが一般的。
しかし、少数株主がM&Aに反対、または遠隔地に在住のため株式譲渡に必要な書類を取得する事が難しい場合などは、完全子会社化を実現不可。
そこで、スクイーズアウトを活用し、強制的に株式を買い取ることで、経営の阻害となる少数株主を排除する事が可能となる。
③スクイーズアウトのメリット
・重要意思決定の迅速化が図れる
スクイーズアウトであらかじめ反対勢力となる少数株主を排除しておくことで、株主総会決議が円滑に行われることが可能となり、重要意志決定の迅速化が図れることとなる。
・事務処理の削減
株主総会を開催するには開催手続きが必要だが、少数株主が多く分散している場合などは、時間も手間もかかってしまう。
しかし、スクイーズアウトによりあらかじめ株主の母数を少なくすることにより、株主総会の開催手続きも大幅に削減できる。
・株式分散の防止
株式は相続財産であり、もし株主が死亡した場合、相続人が新たな株主となる。これにより株式は細分化され各相続人の手元に転がり込むこととなる。株式の分散防止のためにもスクイーズアウトで株式を集約しておくべき。
・訴訟リスクの排除
少数株主が存在し、その株主が主要株主の反対勢力となっている場合、重要意志決定の妨げになる。会社運営を行っている取締役も常に株主代表訴訟を受けるリスクに晒されている。
ここでもやはりスクイーズアウトにより少数株主を除外し、彼らからの訴訟リスクを回避することが可能となる。
・税制上のメリット
完全親・子会社の場合、連結納税制度が選択でき、親子間の損益通算が可能となり税制上のメリットも生まれる。
④スクイーズアウトの主な方法
・株主等売渡請求
総議決権の90%以上を持つ株主(または株主グループ)を特別支配株主と言い、特別支配株主が子会社の承認を得たうえで、少数株主より株式を強制的に取得することが可能。(株主等売渡請求)
これは、株主総会の決議が不要であり、財源規制も勘案する必要がない。
・全部取得条項付種類株式
全部取得条項種類株式とは、株主総会特別決議により株式を強制的に買い取ることができる株式のことであり、この方法では、一度すべての発行済株式を全部取得条項付種類株式に変更し少数株主の端株を大株主または子会社が強制的に買い取りスクイーズアウトを完了させ、その後、再度普通株式に変更する。
・株式併合
株式併合とは、複数の株式を1つの株式にまとめること。
これにより、少数株主が保有している株式が端株となると株主としての権利は行使できなくなり、まずはスクイーズアウトの目的自体は達成される。
・株式交換
株式交換とは、主に親会社が子会社を完全子会社化する目的で用いられ、子会社の株主に親会社の株式を交付し子会社の株式を取得する方法のことであり、これにより少数株主を排除することは達成される、しかし、今度は親会社の株主となってしまう。
そのため、株式交換の対価を現金とするか、株式交換後に端株を買い取る必要がある。
⑤スクイーズアウトの手続きの流れ
・取締役会の開催
取締役会の招集は、取締役会の日の1週間前までに、各取締役および各監査役に対して、通知。
・株主総会招集通知発送
株主総会開催の2週間前までに、株主に対して株主総会招集の通知を発送。
・株主総会の実施
株主総会の特別決議で承認。
・株主への個別通知
株式併合の効力が発生する日の20日前までに、全株主に対して株式併合に関する詳細を記載した通知書を送付。
・裁判所への売却許可申し立て
株式併合により端株が発生。これを買い取るために、裁判所に売却許可の申し立てを行う。
・株式併合の効力発生・株式の買い取り
株式併合の効力は、株主総会で決議された効力発生日が到来した日をもって発生。裁判所から売却を許可されている場合は、端株を会社が買い取り。
以上をもって、少数株主のスクイーズアウトは完了。
冒頭でも触れましたが、スクイーズアウトは、譲渡企業側の株主が分散している場合よく活用される方法であり、これを理解し上手く利用できればM&A成約にもぐっと近づくことになります。
大企業、中小企業のM&Aだけではなく、小規模M&Aでも活用できる方法ですので、今回の記事をよく理解いただき、M&A成約へ大きく前進していただけましたら幸いです。
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