群馬県沼田市に店舗を構え、自家焙煎コーヒーや珈琲豆を提供する「珈琲倶楽部 沼田店」。新潟を中心に全国30店舗を展開するコーヒーチェーン「珈琲倶楽部」の創業者である加藤様からこの店舗を譲り受けされたのは、製造業に長年勤務されていた荒井学様です。
珈琲倶楽部沼田店は、群馬県とバトンズの連携により開設した特設サイト「ミライマッチング」に掲載された事業で、今回が初のご成約となります。サラリーマンから個人M&Aで独立を実現された荒井様に、バトンズを利用した経緯や、今後の事業構想についてお話を伺いました。
譲渡事業 | |
---|---|
社名 | 珈琲倶楽部 沼田店 |
業種 | 飲食店(カフェ) |
拠点 | 群馬県 |
譲渡理由 | 後継者不在 |
譲受側 | |
---|---|
区分 | 個人 |
業種 | 製造業 |
拠点 | 群馬県 |
譲受理由 | 起業 |
「自分の手で何かを手掛けたい」漠然と抱いていた野心をM&Aで実現
製造業で長らくサラリーマンとして勤務されていた荒井様。複数企業で管理職を経験し、直近は50人規模の金属加工会社の事業部長も担当されるなど、経営に近いポジションで従事されていました。仕事にやりがいを感じる一方で、荒井様自身の興味は接客業にあったと言います。
「週末は結婚式場のホールスタッフを手伝ったり、秋には自分で焼き芋屋を開いたりと、副業という形で接客業に携わってきました。漠然と『自分で何かを手掛けたい』という想いを抱いてはいたのですが、なかなか一歩を踏み出せずにいました。
転機となったのは、 群馬県商工会連合会が主催する創業セミナーに参加するようになったことでした。そのセミナーで事業承継について詳しく勉強をし、自分にもできるかもしれないと感じたことがきっかけで、M&Aに対する関心が強くなっていきました。」
ゼロからの起業も視野に入れていた荒井様ですが、なかなか一歩を踏み出せずにいた中で、M&Aであれば失敗のリスクも最小限に抑えられる、かつ知識や技術も譲り受けられることに魅力と可能性を感じ、具体的に検討をし始めました。
群馬県事業承継・引継ぎ支援センターやM&Aプラットフォームに登録をして案件探しを始めた荒井様。多くの案件の中から、荒井様はどのような条件で探していたのでしょうか。
「事業の売上や設備を詳しく拝見して、譲り受け後も自己資金の範囲内で運営を続けていけそうかどうか、という点を重視していました。定期的にバトンズサイトを見る中で、自宅近辺で良い案件をいくつか見つけられたのですが、どこか決め手に欠ける部分が自分の中にあり、面談までは進みませんでした。今思い返すと、どの案件も譲り受け後の経営イメージが湧かなかったのだと思います。」
決め手は、96歳の店主が長年築いてきたブランド力とノウハウ
荒井様が引継ぎされた珈琲倶楽部沼田店は、群馬県とバトンズで開設した群馬県特設サイト「ミライマッチング」に掲載された店舗のひとつ。取材記事と写真で、事業の歴史や経営者の想い、あとつぎに託したいことや募集要件などをオープンネームで掲載しているサイトになります。荒井様が本店舗の引継ぎを検討するにあたり、どのような点が決め手となったのでしょうか。
「一番はやはり、他の店舗と差別化できるような強みがあるかどうか、という点でした。前オーナーは目の前で珈琲豆を煎って提供するスタイルを確立したり、大型の焙煎機ではなく扱いやすい小型の焙煎機を開発して特許を得たりと、本格的な珈琲を楽しめるお店として他のお店とは一線を画した喫茶店を運営されてきました。
また珈琲倶楽部は新潟県に25店舗、群馬県に2店舗あるので、すでにネームバリューがありブランドが確立されている点も魅力的でした。フランチャイズの実績もあり、多店舗展開しているブランド力を持つ店名をそのまま引き継ぐことができるのは、大きなメリットだと感じていました。
最終的には、前オーナーが何十年もかけて築き上げてきた技術をこの先も受け継いでいきたいという気持ちが強くなり、その気持ちに突き動かされて決断しました。週末になる度にお店に足を運んで前オーナーと話をして、お店に注いできた愛情や熱い想いを聞いていました。誰も引き継がずになくなってしまうのは悲しいと感情移入してしまうくらい、私もこのお店に惚れ込んでいましたね。」
前オーナーが創業当時に考案・設計した独自焙煎機で焙煎された珈琲豆は、長年にわたり多くのお客様に愛され続けてきました。70年以上磨いてきた店主独自の技術を今後も絶やすことなく受け継いでいきたいと、真っ直ぐな目で力強くお話しいただきました。一方で、引継ぎをされるまでは苦労されたところもあったと言います。
「今回のM&Aで苦労したのは、収支管理の面で情報がかなり少なかったので、経営状況をキャッチアップすることが難しかった点です。最終的には前オーナーの娘さんに間に入っていただき、1ヶ月のおおよその売り上げや固定費、家賃、水道光熱費などの支出をお伺いしました。
ただ、あくまで想定の計算なので、正確なものは経営を引き継いで1ヶ月ほど経った今、色々なところから届く請求書を見てやっと数値感を掴めてきたところです。これからM&Aをご検討される方は、ご成約前に帳簿がきちんと管理されているかどうかの確認を怠らないことをオススメします。」
珈琲店としての枠を超えた、幅広い利用ができる場に
珈琲倶楽部独自の珈琲豆の焙煎技術や、ブランド力が魅力でM&Aの決断に至った荒井様。すでに前オーナーから珈琲についての知識や焙煎技術などを一通り教えてもらい、美味しい珈琲を入れるノウハウは引き継ぐことができたそうです。
引継ぎから1ヶ月ほど経ち、すでに店舗もお一人で回している荒井様は、今後の取り組みや展望について、以下のように話します。
「おかげさまで、多くのお客様にご来店いただいています。地元新聞でも一面で取り上げていただき『新聞を見て来ました』という方もいらっしゃって、とても嬉しいですね。
今後はこれまでと同じクオリティで美味しい珈琲を提供することはもちろんですが、新しい取り組みも進めていきたいと思っています。前オーナーからは『喫茶店ではあるけれど、珈琲倶楽部の看板を残してくれるのであれば何をやってもいいよ。』と言っていただいているので、珈琲という枠組みを超えた、面白い取り組みを手掛けていきたいです。
たとえば、お店が一部鏡張りになっていて内装も綺麗なので、レンタルスペースとしても貸し出しをできるようにしてお誕生日や趣味、ビジネスシーン、イベント等の貸し切りスペースとしても利用いただけるようにできないかと考えています。
また、飲食業に興味がある方が、自分の料理を実験的に提供できる体験の場としての活用も考えています。お店を開いてみたいと考えている人の中には、まずはお客様に提供して反応を見てみたいという方がいらっしゃると思います。そのような方にとって、うちのお店がチャレンジの場になればいいなと考えています。
すでに進めている施策もあります。前オーナーが提供していなかった、スパゲティやカレーライスなどのメニューを始めました。珈琲だけを楽しめるお店というイメージから、ご飯も食べられるお店にして新しいお客様も増やしていきたいです。」
珈琲という枠組みを超えて、幅広い事業展開の未来を描く荒井様。珈琲倶楽部沼田店がこれまで培ってきた珈琲の専門性や技術を受け継ぎながら、更にオリジナリティや付加価値を付けたお店にするべく、荒井様のチャレンジがこれから始まります。
荒井様と、珈琲倶楽部沼田店の今後のさらなるご発展を、バトンズ一同、心より応援しております!
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