1995年に兵庫県で創業以降、わずか30年足らずで近畿圏を中心に約300店舗の調剤薬局を展開する「マリーングループ」。『地域密着型薬局』を目指し、M&Aにも積極的に取り組むマリーングループはこの度、バトンズを通じて青森県むつ市の「おき薬局」を譲り受けされました。
数年前からM&Aを駆使してダイナミックな全国展開を実現してきたグループの戦略や、今回のM&Aを決意した経緯について、同社の上席執行役員であり、西日本を中心としたM&Aを担当されている鈴木 直貴様にお話を伺いました。
譲渡企業 | |
---|---|
社名 | 有限会社おき薬局 |
業種 | 調剤薬局 |
拠点 | 青森県 |
譲渡理由 | 後継者不在 |
譲受企業 | |
---|---|
社名 | マリーングループ |
業種 | 薬局運営・薬局独立支援など |
拠点 | 京都府 |
譲受理由 | 新規エリアへの進出 |
【会社概要】
会社名:Marine Group(マリーングループ)
設立:1995年1月
社員数:1,400人
売上高:203億1700万円(2022年3月期)
HP:https://www.marinegroup.jp/
業界内におけるM&A活性化の潮流を的確に捉え、事業戦略として一気に加速
*厚生省(当時)が国立病院に対して医薬分業(院外処方箋受取率70%以上)を指示した1997年以降、病院の近くに「調剤薬局」と呼ばれる薬局の開業が加速。そのバブル期から約25年が経過した現在、1990年代に30〜40代で独立した経営者が60〜70代を迎え、事業承継を検討する時期を迎え始めました。
*参考URL:https://www.nichiyaku.or.jp/activities/division/about.html
マリーングループが本格的にM&A戦略を加速させたのは、今から5〜6年ほど前のこと。もともと新規開業をメインに事業拡大を行ってきたマリーングループでしたが、全国に約6万店あるとされる調剤薬局の市場は、既に飽和状態。潮流の変化を素早く捉え、既存店舗を譲り受けることによって、全国展開を加速させてきました。
マリーングループの「株式会社ミルキーファーマシー」で上席執行役員を務め、西日本を中心にM&Aを担当されている鈴木様は、M&Aによる事業拡大のメリットについて、以下のように話しています。
「もともと、薬局というのは新規出店の難易度が高い業種と言われています。なぜなら、事業の性質上どうしても近隣の医師とのコネクションが必要となるため、初めての場所で商売を始めるとなると、その関係性構築に時間がかかってしまうからです。
その点、既に医師との良好な関係性や一定の顧客を抱えている既存店を、事業承継という形でグループ化することは、全国展開を実現していくにあたって非常に合理的だったと言えます。
また、その地域に1店舗さえあれば、その後に新規出店をしようとした際、ゼロからの地域で始めるより効率的に進めることができます。そういった利点から、M&Aは私たちが全国に事業を広げるための重要なテーマとなっていったのです。」
加えて、薬剤師の資格が必要となる薬局という業態は、従業員の中から後継者を探すのが難しく、個人店であるほどその傾向は高いと言えます。マリーングループはそこに目をつけて、開拓が進んでいないエリアを中心にリストを作成し、積極的に交渉を重ねていきました。
結果として、現在グループが抱える約300店舗の調剤薬局のうち、3分の1以上がM&Aを通じて取得した個人店。そして、その大半が「オーナーが高齢で後継者不在の薬局」という、市場ニーズにマッチした戦略で着実にエリアを拡大していきました。
全国に散らばるラウンダーを武器に、黒船的な存在からの脱却を図る独自の手法
市場ニーズにマッチしているとはいえ、全国各地の個人店をマネジメントするのは簡単なことではありません。それぞれの地域的特徴や店舗の特徴もある中で、マリーングループはどのように事業を管理・マネジメントしているのでしょうか。
「それについては、本部一括ではなく店舗最適で進めるようにしています。業界全体が人不足になっているという問題がある中で、我々が急に我流で進めようとすると、当然それまで勤めてきた従業員の反発を受ける可能性があります。
買収される側からすれば、私たちは黒船的な存在ですので、軌道に乗るまでは赤字も許容する覚悟で、現場のやり方を踏襲することも少なくありません。一方で、事業としてずっとその状態を続けるわけにもいかないので、そのバランスがM&Aにおいて重要だと感じています。
我々の強みとしては、止むを得ず欠員が出てしまった場合でも、ラウンダーと呼ばれる全国転勤が可能な社員を数多く抱えているので、彼らでシフトの穴を埋めながら採用による体制強化を図れるところにあります。
これまでオーナー・従業員の方々が大切にしてきたことを遵守しつつ、無理のないスピード感で私たちのやり方を少しずつ取り入れていく、ノウハウを重ねていくことで、最善の形を見つける努力をしています。友好的に、従業員が残って仕事を続けていただける環境にすることを前提に、事業をよりよい形にしていくことを目指しています。」
これまで鈴木様が手掛けてこられたM&A案件は全部で10件。それら全てが後継者不在かつ授業員を引き継ぐケースだったとのことで、実体験からくるM&Aの在り方をお話しいただきました。
「こんなに一般薬品が多いのは初」判断に迷いながらも、最後は事業価値を評価
この度マリーングループが譲り受けた調剤薬局は、青森県むつ市にお店を構えるおき薬局。鈴木様は、事業を選定する上でどのような点に着目しているのでしょうか。
「おき薬局は、OTCと呼ばれる一般薬品の取り扱いが非常に多いのが特長で、その顧客対応のために通常の倍ほどの従業員を抱えていました。ここまでOTCの比率が高く、従業員の数が多い薬局は初めてだったので、当初は非常に判断に迷いました。
しかし、社長の人柄や経営哲学に好感が持てましたし、従業員を手厚く待遇しながらも、厳しいことも伝えているので、現場のスタッフがしっかり機能しているところも素晴らしいと思いました。お客様からも多くの支持を得ており、薬局としての完成度が高いので、引き継いだ後も大丈夫だろうと確信できたことが、最後の決め手となりました。
青森は距離的に遠かったので、何度も足を運ぶのは大変でしたが、社長と対面でお話をして、店舗が運営されている様子を自分の目で見ることで、この事業の価値を実感することができました。青森県はこれが2店舗目になるのですが、東北は今後の戦略エリアなので、これを機に店舗展開を加速させていきたいと考えています。」
点で散らばった店舗を線で繋ぐ。今後もM&Aを活用してエリア拡大を目指す
バトンズを通じたご成約は、今回が2度目となる鈴木様。バトンズを活用するメリットについて、以下のように話します。
「多くのM&Aアドバイザーが乱立している中で、バトンズさんのようなプラットフォーマーを通じて交渉を進めることは、セカンドオピニオン的存在になります。正直なところ、全てのアドバイザーが信頼できる相手であるわけではないというのが本音です。そのため、バトンズさんを介することで、その不安感を少しでも軽減できることは、プラスに感じている部分です。
また、M&Aの価額というのは明確な数字のロジックがあるわけではなく、ある程度言い値で決まってしまうところがあります。バトンズさんのような存在が、適正価格の水準を作っていってもらえるとありがたいなと思っています。」
今後も積極的にM&Aを推進していくというマリーングループ。鈴木様は、まだ店舗の少ない東北エリアを中心に、エリア拡大を行っていくと話します。
「現在は、M&Aによって獲得した店舗が点で散らばっている状態なので、これをきちんと線で繋いでいくことで、ドミナント戦略を基軸とした効率的な事業拡大を目指していきたいと考えています。私の主担当は東北と関西なのですが、特に東北はまだまだ開拓の余地があるので、今後も注力していくつもりです。」
全体人口の高齢化が進み、薬局の在り方が多様化していく中、かかりつけ薬局という存在はますます重要になっていきます。その誇りと責任を自覚し、他の事業部とも連携しながら地域包括ケアの一端を担っていくことが、マリーングループのビジョンであると鈴木様は話します。
そのビジョン実現に向けて、店舗展開の速度を上げると当時に、1店舗1店舗を大切に育てていきたいと、力強いお言葉でおっしゃっておられました。
マリーングループの今後の更なるご活躍を、バトンズ一同、心より応援いたしております!
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