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多角化戦略とは?メリット・デメリット、成功ポイントや注意点など、専門家が詳しく解説

2023年07月27日

今回は、「多角化戦略とは?」について、解説します。

多角化戦略は、経営者のみならずビジネスパーソン全般に広く知られた戦略であり、企業全体の規模を拡大させるための重要メソッドになっています。

また、M&A戦略との関連性も高く、特に買収者側の方には、是非読んで頂きたい内容になっています。

【今回の内容】

①多角化戦略の意味
②多角化戦略の4つの種類
③多角化戦略のメリット
④多角化戦略のデメリット
⑤多角化戦略を成功させるポイント
⑥多角化戦略の注意点
⑦多角化戦略の成功事例
⑧多角化戦略のその他、好事例

 

※今回の記事のワンポイントアドバイスでは、「【買い手必見】多角化戦略で最も重要な事!」も解説していますので、是非、ご覧ください!

 


【監修者プロフィール】


合同会社アジュール総合研究所 / 代表社員
スモールM&Aアドバイザー/ M&A支援機関登録専門家
伊藤 圭一(いとう けいいち)

「小規模企業と個人事業の事業承継を助けたい!」そんな想いから、2019年7月に小規模事業専門のM&Aアドバイザー「スモールM&Aアドバイザー・合同会社アジュール総合研究所」を設立。
合同会社アジュール総合研究所」の紹介ページ

【必見!】巻末にスモールM&Aアドバイザー「合同会社アジュール総合研究所」代表伊藤氏より、M&A実務に即したワンポイントアドバイスや注意点も掲載しています!是非、最後までご刮目下さい!

 

多角化戦略の意味

多角化戦略とは、新たに関発する製品やサービスを、未開拓市場に投入し、これまで経営してきた事業とは別の領域に参入することで、企業の成長機会を開拓する成長戦略のことです。

多角化戦略を語るうえで、まずは米国の経営学者イゴール・アンゾフが提唱する「アンゾフの成長マトリクス」を、理解する必要があります。

図解すると以下のようになります。

【アンゾフの成長マトリクス】

既存商材(製品・サービス等) 新規商材(製品・サービス等)
既存市場 ①市場浸透戦略 ②新商材(製品・サービス)開発戦略
新規市場 ③新市場開拓戦略 ④多角化戦略

 

①~④の戦略を順に見ていきましょう。

 

①市場浸透戦略<既存市場×既存商材>

市場浸透戦略とは、既存市場に既存商材を投入する成長戦略のことです。

この戦略の主な目標は、既存商材の品質向上、リピート購入の促進、広告戦略を施すことで、既存市場のシェア拡大を狙うことあります。

 

②新商材(製品・サービス)開発戦略<既存市場×新商材>

新製品開発戦略とは、既存市場に新規商材を投入する成長戦略のことです。

この戦略の主な目標は、既存市場おける顧客ニーズを察知し、それにマッチする新規商材を開発・提供することで、競合他社との差別化を図り、自社の優位性をより発揮させることにあります。

 

③新市場開拓戦略<新規市場×既存商材>

新市場開拓戦略とは、新規市場に既存商材を投入する成長戦略のことです。

この戦略の主な目標は、未参入市場の調査を実施し、既存商材が顧客ニーズにマッチする場合は、販売リソースを投入することで、販売領域の拡大を狙うことにあります。

 

④多角化戦略<新規市場×新規商材>

多角化戦略とは、前述の通り、新たに関発する製品やサービスを未開拓市場に投入し、これまで経営してきた事業とは別の領域に参入することで、企業の成長機会を開拓する成長戦略のことです。

①~③の戦略は、参入市場・投入商材のいずれかに、「既存」が必ず含まれており、現状、企業内に保持する知見やノウハウを活用する戦略であり、まさに自社の主戦場をより有利に戦うための成長戦略と言えます。

一方、④の成長戦略においては、「既存」という概念が希薄です。未知の領域に未知の商材(製品・サービス等)を提供するという、戦略上、最も高度であり、上級者向けの戦略と言えるでしょう。

多角化戦略は、資本力のある企業が規模の経済で押込み、未開拓のマーケットを可及的速やかに圧倒する際に好んでとられる戦略です。

他方、中小企業においては、市場内の主要ニーズにターゲットを絞り、それにピンポイントでマッチする商材を提供し、得意領域でより競争優位性を高めていく集中戦略が好まれる傾向にあります。

なぜならば、資本力のある企業に比べ、中小企業は各リソース(資金、人員、時間、資産、ノウハウ、知的財産など)に限りがあり、一点集中することの方が、資本効率をうまく回転させることが可能となるからです。

そういう面でも、未開拓事業へ果敢に切り込む「多角化戦略」は、既存をより深堀する「集中戦略」とは、真逆の戦略と言えます。

アンゾフの成長マトリクスで、多角化戦略のポジションを理解いただけたことと思いますが、多角化戦略はさらに4つの戦略に分けられます。

次のセクションで解説しましょう。

 

多角化戦略の4つの種類

多角化戦略の4つの種類を整理すると以下のような図になります。

【多角化戦略図】

多角化戦略 既存事業 新規事業
類似市場 ①水平型多角化戦略 ②垂直型多角化戦略
新規市場 ③集中型多角化戦略 ④集成型多角化戦略

 

多角化戦略の各種類について順を追ってみていきましょう。

 

①水平型多角化戦略

水平型多角化戦略とは、企業が保有する技術やノウハウ、生産ラインなどの経営リソースを活用して開発した新商材を、既存事業と類似市場に投入する戦略のことです。

既存事業の経営リソースを生かした新規事業を展開することとなるので、スピード感を持った実装と、参入リスクも低く抑えることが可能であり、既存事業とのシナジー効果を出しやすい戦略です。

例)飲食店がケータリングサービス事業に参入

 

②垂直型多角化戦略

垂直型多角化戦略とは、既存事業の川上または川下の事業に参入する戦略であり、川上から川下までの流通・生産ラインなどを、自社で一部または完結させることを目的とします。

類似市場への参入となるため、業界知識もあり、流通・生産ライン上、ボトルネックとなっていた問題の解消などが期待できる一方、同一業界内での事業拡大を目的とするため、業界全体が斜陽化すると、それに比例して企業全体の業績も悪化する傾向にあります。

例)農作物を生産(第一次産業)し、お弁当などの食品加工(第二次産業)を行い、道の駅で販売(第三次産業)を、1つの企業内で完結させる、いわゆる第六次産業の展開

 

③集中型多角化戦略

集中型多角化戦略とは、自社が保有する特殊技術やノウハウ、知的財産などを活用した商材を新規市場に投入し、事業の多角化を狙う戦略のことです。

競合他社にない自社独自の強み、ブランド力、差別化ポイント(USP-ユニークセリングプロポジション)をリソースとして活用するため市場浸透力も高く、新規市場でも盤石な基盤を築くことが期待できます。

例)酒造メーカーが、消毒用アルコールや酵母を利用した化粧品の製造・販売に参入

 

④集成型多角化戦略(コングロマリット型多角化戦略)

集成型多角化戦略とは、既存の市場・商材とは全く関連性のない、新領域へ事業展開する戦略のことです。

既存事業業界の業績が悪化または衰退しても、新規事業が成功すれば赤字を帳消しにし、黒字に転換させることも可能であり、極端な話、企業の主力事業(本業)自体が変わることもあり得ます。

企業の経営リスクを分散させることを目的として採用される戦略ではありますが、既存の市場・商材とは全く関連性のない、新領域へ事業展開することになるため、シナジー効果は得られにくく、経営リソースの初期投資も大きくなり、失敗した場合、本業自体に甚大な被害を及ぼす可能性もあります。

まさにハイリスク・ハイリターンな多角化戦略と言えます。

(例)IT企業が飲食事業に参入

 

多角化戦略のメリット

ここからは、多角化戦略で期待されるメリットについて説明していきます。

 

シナジー効果の創出

多角化戦略最大のメリットは、複数事業を展開することで、事業間のシナジー効果の創出が期待できることです。

期待できるシナジー効果には、

①生産シナジー
既存事業と新規事業間で、生産設備や生産ラインを共有したコストダウン
②販売シナジー
既存の販路やマーケティング手法を新規事業にも転用し、販売費用を抑える
③流通シナジー
既存のサプライチェーンを新規事業にも転用し、新規市場開拓や流通コストを抑える
④管理シナジー
複数事業の管理部門を統一することによる管理業務の効率化とコストダウン

 

の4つがあります。

期待されるシナジー効果は、多角化戦略の目的や展開によって様々であり、事業計画の綿密な策定をすることが重要となります。

 

リスク分散

事業を多角化することで、外部環境の変化に対するリスク分散が期待できます。

自社の既存事業に関わる法令等の規制強化、地政学、強力な競合の出現など、企業は常に経営リスクにさらされており、外部環境から受ける影響は常時、注視しなければいけません。

そこで主力となる事業に経営リソースを集中するのではなく、複数事業を展開することで、外部環境の変化に対応することことが可能となります。

 

プロダクトライフサイクル(PLC)の短縮化に対応可能

テクノロジーの飛躍的進歩や消費者のニーズの多様化により、プロダクトライフサイクル(PLC)の短縮化が進んでいます。

プロダクトライフサイクル(PLC)とは、市場投入した商材の寿命のことであり、

①開発期 ⇒ ②導入期 ⇒ ③成長期 ⇒ ④成熟期 ⇒ ⑤衰退期

 

の5つのサイクルで形成されます。

多角化戦略をとることで、主力事業の商材が衰退期に入っても、別事業の新たな商材を市場投入し続けることで、常にテクノロジーの飛躍的進歩や消費者のニーズの多様化に対応できる環境を構築することが可能となります。

 

多角化戦略のデメリット

次は、多角化戦略によってもたらされるデメリットについて説明していきます。

 

財務リスクを引き起こす可能性

新規事業を立ち上げるには、新規市場のマーケティング調査、新商材の開発などのコストだけではなく、時間や労力もかかります。

大規模な新規事業を計画する場合、大きな経営リソースを費やすことになるため、既存事業の利益率や資本効率を低下させ、一時的に財務リスクを引き起こしてしまう可能性が発生します。

また、多角化戦略の目論見が必ずしも当たるとは限らず失敗した場合は、さらに財務リスクを拡大させてしまう可能性が大きくなることも注意が必要です。

 

経営の非効率化

展開している事業が少なければ少ないほど、内部統制や経営管理はコントロールしやすく生産性の高い経営が可能ですが、複数事業を展開することで、管理体制が集約化できず、経営の非効率化を招く恐れがあります。

そのため、多角化戦略の計画には新規事業の立ち上げ後、どのような管理体制を敷くかまで盛り込む必要があることに留意しておいてください。

 

ブランド力の低下

既存事業において確立したブランド力は、多角化戦略をとることによって低下してしまう恐れがあります。

既存事業と新規事業はシナジー効果以前に、事業同士の相性を考えることが重要です。高級志向の商材を提供していた企業が、安価な商材を提供するようになれば、当然、ブランドイメージは低下し、価値は毀損してしまいます。

この点、既存事業で培ってきた顧客からのイメージなど数字からは見えてこない部分を再度調査することが重要となるのです。

 

多角化戦略を成功させるポイント

ここからは多角化戦略を成功させるポイントについて見てきましょう。

 

経営理念・経営ビジョンから逸脱しない

経営理念とは、経営者の志や哲学に基づき、企業の経営方針を明文化したものであり、経営ビジョンは、経営理念を遂行するための経営指針を明文化したものです。

経営理念も経営ビジョンも全社員だけではなく、社会全体にも広く示すものであり、これから逸脱した多角化戦略を実行すると、企業自体の目的も道筋も不明確となり、混乱を招くこととなります。結果、目指すべきゴールが分からなくなり、多角化戦略の失敗だけではなく、企業経営自体、危機にさらされてしまうのです。

多角化戦略は、経営理念・経営ビジョンをブレることなく実行する事が最重要であると言うことを覚えておいてください。

 

既存事業と関連性を考える

多角化戦略をとるにしても、初めから既存事業とかけ離れすぎた新規事業を展開する事は推奨されません。まずは、既存事業との関連性を考え、それと近しい事業から新規で立ち上げることが最もセーフティーです。

起業当初を思い出して下さい。軌道に乗せるまで苦労もされてきたことでしょう。

しかし、今は既存事業を軌道に乗せ、今後の成長も見込める状況であれば、なおさら今まで構築してきた経営ノウハウを生かせる事業から始めるべきではないでしょうか?

全くの新規事業は、上級者向きで高度な技術も必要となります。多角化戦略としての初動は、既存事業と、それに類似した事業を展開していけばいいのです。新規事業への参入は、それからでも遅くはないはずです。

まずは足元を固めることに注力することが、成功への近道なのです。

 

まずは小さく始める

多角化戦略をとるには、経営リソースをかなり消費します。

はじめから大規模な新規事業を立ち上げてしまうと、投入する資金・人員・その他の経営リソースの消費も激しく、ハイリスクな戦略となってしまいます。

しかし、小規模に多角化戦略を行えば、当然投入する経営リソースも小さくなり、リスクも低下します。それだけに、失敗した時の撤退の判断も早期に下すことが可能となり、傷も浅くすみます。

中小企業の場合、まずはお試し感覚でもいいのです。はじめから社運を賭けるような多角化戦略ではなく、小さく始めることが手堅い多角化戦略となるのです。

 

M&A戦略を意識する

多角化戦略をとる上で、M&A戦略も意識する事は非常に重要と言えます。

なぜならば、M&A戦略は、企業や事業をそのまま買収することとなるので、多角化戦略の弱点ともいえる

・イチからノウハウを構築しなければいけない
・新規事業計画から立上げ、実行までの時間がかかる
・新規事業に投入する人材の確保

 

などの諸問題を解消してくれる可能性大だからです。

また、企業や事業を買収することによるシナジー効果も見込め、多角化戦略を検討する上では、必ず視野に入れておきたい戦略です。

特に近年では、小規模M&A市場が活況であり、多角化戦略を成功させるための重要なカードの1枚になっていると言う事を覚えていて下さい。

【関連記事】

 

 

多角化戦略の成功事例

多角化戦略の成功事例を2つご紹介します。

 

コンビニがより便利に!セブンイレブンの成功事例

株式会社セブン-イレブン・ジャパンは、日本における最大手コンビニエンストアチェーンであり、多様な商品を提供する店舗を国内に20,000店舗以上展開しています。

1974年に日本で最初のセブン-イレブンがオープンして以来、急速に成長し、現在では国内のコンビニエンストア市場において圧倒的な存在となっています。

セブン-イレブンでは、店舗での食品や日用品の販売だけではなく、郵便物や荷物の発送、コンビニ受け取り可能なネット通販など利便性の向上を常に意識した経営を行っているだけではなく、プライベートブランド(PB)商品の展開や物流システムの強みを生かした高品質・低価格の商品提供にも成功しています。

さらに、銀行業務にも事業領域を拡大し、店舗に設置されたセブン銀行ATMでは、現金の入出金や振込など手続きが可能です。

多角化戦略により、コンビニ=買い物をする場所からコンビニ=なんでもできる場所へと事業領域を拡大させることに成功した代表的な事例といえるでしょう。

 

関連性の強い事業を次々展開!オリックス株式会社

オリックス株式会社は、1964年にリース事業からスタートし、既存事業と関連性の強い経営リソースを活かせる事業への多角化戦略を展開することにより事業領域を拡大させてきました。

今では、主力のリース事業をはじめ、不動産事業、環境エネルギー事業、保険事業、銀行・クレジット事業、輸送機器事業など、隣接事業に進出することを意識した事業展開を行っています。

独自のノウハウを転用できる領域内での多角化戦略に成功した代表的な事例と言えるでしょう。

 

多角化戦略のその他好事例

多角化戦略のその他、好事例を2つご紹介します。

 

社会情勢の影響を乗り越えた好事例!株式会社AOKIホールディンクス

株式会社AOKIホールディングスは、メンズ・レディススーツを中心に、衣料品販売を主力事業としており、ビジネスパーソンには馴染みのある「AOKI」や「ORIHICA」などのブランドを展開しています。

主力事業以外では、カラオケやネットカフェ、フィットネスジムなどのエンターテインメント事業、結婚式場及び披露宴会場運営などのアニヴェルセル・ブライダル事業など、他業種への多角化戦略を行っています。

しかし、近年の新型コロナウイルスの影響により多角化戦略が思い通りにいかず、経営危機に立たされました。

ただ、これに対する打つ手も早く、ネットカフェをシェアオフィスへ転用、カラオケ事業にサブスク導入など、環境下に対応した措置を取り、多角化戦略を図った事業を立て直しています。

このケースは、多角化戦略は展開する事業が増えれば増えるほど、社会情勢の影響を受ける確率が高まるという事が顕著となった事例で、それに対し、迅速な対応を施したことで、事業を復活させた好事例ともいえるでしょう。

 

多角化戦略は見切りの速さも重要!株式会社ファーストリテイリング

株式会社ファーストリテイリングは、「ユニクロ」「GU」など、今では日本人だけではなく、世界各国の人々にも愛用されるファストファッションブランドを展開する企業です。

世間ではあまり知られていませんが、同社は2002年に生鮮野菜の生産・販売事業に進出したことがあります。

しかし、新規事業は軌道に乗らず、1年半程で手を引く結果となりました。

それからは、圧倒的な強みを持つファッションブランドの領域内での多角化戦略に切り替え、国内のみならず海外からも高い評価を得ています。

このケースは、多角化戦略で始めた事業が芳しくない場合は早期に撤退し、強みのある主力事業に関連した事業へ集中し、コンセプトの異なるブランド展開に切り替え事業を拡大させた好事例といえるでしょう。

 

まとめ

以上、「多角化戦略」を、解説しました。
今回の内容を、おさらいしましょう。

 

①多角化戦略の意味の意味

・多角化戦略とは、新たに関発する製品やサービスを、未開拓市場に投入し、これまで経営してきた事業とは別の領域に参入することで、企業の成長機会を開拓する成長戦略のこと。

多角化戦略を語るうえで、まずは米国の経営学者イゴール・アンゾフが提唱する「アンゾフの成長マトリクス」を、理解する必要がある。

 

【アンゾフの成長マトリクス】

既存商材(製品・サービス等) 新規商材(製品・サービス等)
既存市場 ①市場浸透戦略 ②新商材(製品・サービス)開発戦略
新規市場 ③新市場開拓戦略 ④多角化戦略

 

市場浸透戦略とは、既存市場に既存商材を投入する成長戦略のこと

新製品開発戦略とは、既存市場に新規商材を投入する成長戦略のこと

新市場開拓戦略とは、新規市場に既存商材を投入する成長戦略のこと

多角化戦略とは、新たに関発する製品やサービスを、未開拓市場に投入し、これまで経営してきた事業とは別の領域に参入することで、企業の成長機会を開拓する成長戦略のこと

 

 

②多角化戦略の4つの種類

【多角化戦略図】

多角化戦略 既存事業 新規事業
類似市場 ①水平型多角化戦略 ②垂直型多角化戦略
新規市場 ③集中型多角化戦略 ④集成型多角化戦略

 

水平型多角化戦略とは、企業が保有する技術やノウハウ、生産ラインなどの経営リソースを活用して開発した新商材を、既存事業と類似市場に投入する戦略のこと

垂直型多角化戦略とは、既存事業の川上または川下の事業に参入する戦略であり、川上から川下までの流通・生産ラインなどを、自社で一部または完結させること

集中型多角化戦略とは、自社が保有する特殊技術やノウハウ、知的財産などを活用した商材を新規市場に投入し、事業の多角化を狙う戦略のこと

集成型多角化戦略とは、既存の市場・商材とは全く関連性のない、新領域へ事業展開する戦略のこと

 

 

③多角化戦略のメリット

メリット

・シナジー効果の創出
多角化戦略最大のメリットは、複数事業を展開することで、事業間のシナジー効果の創出が期待できること。シナジー効果には、生産シナジー、販売シナジー、流通シナジー、管理シナジーの4種類がある。

・リスク分散
主力となる事業に経営リソースを集中するのではなく、複数事業を展開することで、外部環境の変化に対応する事が可能となる。

・プロダクトライフサイクル(PLC)の短縮化に対応可能
主力事業の商材が衰退期に入っても、別事業の新たな商材を市場投入し続けることで、常にテクノロジーの飛躍的進歩や消費者のニーズの多様化に対応できる環境を構築する事が可能となる。

 

 

④多角化戦略のデメリット

 デメリット 

・財務リスクを引き起こす可能性
大規模な新規事業を計画する場合、大きな経営リソースを費やすことになるため、既存事業の利益率や資本効率を低下させ一時的に財務リスクを引き起こしてしまう可能性が発生する。

・経営の非効率化
展開している事業が少なければ少ないほど、内部統制や経営管理はコントロールしやすく生産性の高い経営が可能ですが、複数事業を展開することで、管理体制が集約化できず、経営の非効率化を招く恐れがある。

・ブランド力の低下
高級志向の商材を提供していた企業が、安価な商材を提供するようになれば、当然、ブランドイメージは低下し、価値が毀損してしまう恐れがある。

 

 

⑤多角化戦略を成功させるポイント

・経営理念・経営ビジョンから逸脱しない
多角化戦略は、経営理念・経営ビジョンがブレることなく実行する事が最重要である。

・既存事業と関連性を考える
初めから既存事業とかけ離れすぎた新規事業を展開する事は推奨されず、まずは、既存事業との関連性を考え、それと近しい事業から新規で立ち上げることが最もセフティな多角化戦略と言える。

・まずは小さく始める
はじめから社運を賭けるような多角化戦略ではなく、小さく始めることが手堅い多角化戦略となる。

・M&A戦略を意識する
M&A戦略は、企業や事業をそのまま買収する事となるので、多角化戦略の弱点ともいえる

〇イチからノウハウを構築しなければいけない
〇新規事業計画から立上げ、実行までの時間がかかる
〇新規事業に投入する人材の確保

 

などの諸問題を解消してくれる可能性が大きいため、多角化戦略を検討する上では、必ず視野に入れておきたい戦略である。

 

⑥多角化戦略の成功事例

・コンビニがより便利に!セブンイレブンの成功事例
コンビニ=買い物をする場所からコンビニ=なんでもできる場所へと事業領域を拡大させることに成功した代表的な事例

・関連性の強い事業を次々展開!オリックス株式会社
独自のノウハウを転用できる領域内での多角化戦略に成功した代表的な事例

 

⑦多角化戦略のその他好事例

・社会情勢の影響を乗り越えた好事例!株式会社AOKIホールディンクス
多角化戦略は展開する事業が増えれば増えるほど、社会情勢の影響を受ける確率が高まるという事が顕著となった事例で、それに対し、迅速な対応を施したことで、事業を復活させた好事例

・多角化戦略は見切りの速さも重要!株式会社ファーストリテイリング
多角化戦略で始めた事業が芳しくない場合は早期に撤退し、強みのある主力事業に関連した事業へ集中し、コンセプトの異なるブランド展開に切り替え事業を拡大させた好事例

多角化戦略をとることは、企業の成長を一気に加速させる可能性が高くなる反面、失敗した時のリスクも大きいという側面があります。

それだけに、しっかりとした多角化戦略の計画策定が必要であると言う事を覚えてい手ください。

※買収ニーズの検討・考察方法のご相談を受け付けてくれるM&A専門家もいます。
気になる方は、下記URLより専門家に依頼しましょう!

【M&Aアドバイザーについてはこちらから】

 

 

【スモールM&Aアドバイザー・合同会社アジュール総合研究所 伊藤氏からのワンポイントアドバイス!】

こんにちは!この記事を監修させて頂きました、スモールM&Aアドバイザー「合同会社アジュール総合研究所」代表の伊藤と申します。

ここからは、スモールM&A専門家である、わたくし伊藤が、M&A実務に即した、成約に大きく前進するためのアドバイスと注意点などを、なるべくわかりやすく(そして、くだけた感じで?)スモールM&Aの現場の経験をもとに解説していますので、是非、ご刮目下さい!

 


はいっ!

今回は、「多角化戦略」について解説しました。

多角化戦略は有名な戦略ですし、前段階でご説明した「アンゾフの成長マトリクス」なんかもご存じの方はたくさんいらっしゃったのではないですかね?

会社を経営する上で、基本中の基本となる内容でしたね。

経営者って会社を運営していると必ずどこかで行き詰るものなんですけど、今回の内容みたいな話って読み返してみると、初心に戻って考えられるところもあるので、何かヒント的なものが思い浮かぶこともありますよね。(正直、執筆している本人もそう感じちゃったんですけどね・・・)

今回の内容に限らず、何かの壁にぶち当たった時こそ、基本に立ち返ることがブレイクスルーする方法のひとつってことは、覚えておいてくださいね。

あままあ、前置きはこのくらいにして・・・

自社における多角化戦略を検討・考察する上で、「最も」重要なことって何ですかね?

それは、

「新規で立ち上げる事業のことをより深く調査・研究すること」

・・・ではありません。

イヤイヤ、これももちろん重要なんですよ。でもでも、「最も」重要なことです。

「最も」重要な事とは、

自社の状況を正確に把握しているか?

です!

なぜならば、多角化戦略をとる上で、自前で立ち上げるかM&Aで他社を買収するかに限らず、まずは自社の状況を正確に把握しておかなければ、新規事業を立ち上げた(またはM&Aをした)際、既存事業とのシナジー効果を思うように創出できず、失敗に終わってしまうリスクが高くなってしまうからなんですね。

文中でも軽く触れましたが、中小企業の経営リソースって大企業に比べるととても小さいんですね。

経営者として何か新しい事業を始めたいのは分かりますが、自社にどのくらいの余剰戦力があるか把握してますか?
ご自分のモチベーションやお金の話だけではなくて、社員たちに余裕はありますかね?
モチベーションは高いですか?

そういった数字に表れない部分も、勘定に入れておかなければいけませんよ。

ではでは、自社の状況を正確に把握するためには何をすればいいのでしょうか?

そこで、今回のワンポイントアドバイスは「【買い手必見】多角化戦略で最も重要な事!」を解説していきます!

 

「【買い手必見】多角化戦略で最も重要な事!」

ではでは、多角化戦略で最も重要な事について解説していきましょう!

今回解説するポイントは以下の5つです!

  1. 3C分析
  2. 4P分析
  3. SWOT分析
  4. USP
  5. その他、定性分析

 

これら見たことある方も多いですよね。

そう、ビジネスフレームワークです!それでは順に、ご説明しましょう!

まずは、3C分析からいってみましょう!

 

①3C分析

3C分析とは、Customer(市場・顧客)」、「Company(自社)」、「Competitor(競合他社)」にスポットを当てて分析する、重要なフレームワークのひとつです。

自社の業界における立ち位置を把握するには持って来いのフレームワークですね。マーケットにおける現在の自社のポジションが分かるので、どっちの方向に進むべきかの地図にもなりますよね。

 

②4P分析

4Pとは、Product(製品・サービス)Price(価格)Place(販売場所・提供方法)Promotion(販促活動)の頭文字で、その会社や事業の内容、活動、方針、施策などの要素を抽出し分析する事です。

自社で取り扱っている商材にスポットを当てているので、自社商材の良い面、悪い面、足りてないな~っていうところがよくわかりますし、消費者ニーズにマッチしているかの再確認にもなります。

文中でも解説しましたが、消費者ニーズって移り変わりが早いんですね。その点、4P分析は定期的に分析して消費者ニーズを常に察知しておくといいですよ。

 

③SWOT分析

SWOT分析とは、会社や事業の「Strength(強み)」「Weakness(弱み)」「Opportunity(機会)」「Threat(脅威)」をプラス要因・マイナス要因、外部環境・内部環境に分類し、自社の状況を分析することです。

3C分析、4P分析を実施すると自ずとわかってくる部分ですよね。自論ですが、SWOT分析って立った4つの分類を埋めるだけで、かなりの情報を整理できるので、結構重宝しています。

3Cと4Pに関連づけて作成すると早いし精度も上がりますよ!

 

④USP

USPとは、ユニーク・セリング・プロポジション(Unique Selling Proposition)の略で、その本質とは「自社のみが提供できる価値や確立した地位」です。

USPは単に「自社製品・サービスの強み」という意味合いではなく、上記SWOT分析の「強み」よりも、更に強調すべきものなんですね。

具体的には、代替品がなく希少性が高い商材やノウハウ、知的財産などがこれにあたりますね。

ですが、

いや~うちにはUSPなんてないわ~
って、なった時はどうしたらいいでしょうね?

答えは簡単!

USPを創ろう!

って、考えればいいんです!

ここで、重要な事は、USPが自社にあるか(またはUSPと呼べるような独自性になっているか?)ないかを把握することなんですね。

あれば、その要素を多角化戦略に活用して更に尖らせればいいし、ないならば、どうやったら他社の追随を許さない、USPを手に入れることができるのか?を、考えなくてはいけないという事実が判明するわけですよね。

ってことは、自社の正確な状況把握に一歩近づいたことになりませんか?

USPを創出するってかなり難しい事ですし(みんなできたら苦労しない)、獲得するためには相当な努力が必要ですが、諦めずに頑張りましょう!(最後、精神論になってすみません<m(__)m>)

 

その他、定性分析

①~④までで、だいぶ自社状況が分かってきましたね。あとは、細かい部分です。

例を挙げると

・単純に多角化戦略に割く時間があるか?
・社員のモチベーションは高いか?
・時期的にいつやるのか?(または、いつやれるのか?)
・どのくらいの規模で行えるのか?
・余剰資金でやるのか?社運を賭けるのか?
・撤退するとすれば、どのレベルで?

 

などなど、枚挙にいとまはないですが、定性的な部分も分析しなければいけませんよ。

分析と呼べるような代物ではありませんが、多角化戦略の準備段階では必ず把握しておく必要がありますよね。

この点、おろそかになると、多角化戦略の準備不足にもなりますし、目的や方向性もあやふやになっちゃいます。

 

また、この段階で、

こりゃ多角化戦略厳しいわ~ムリ!

って、なった場合は、「多角化戦略をしない」という、判断もできるわけですよね。

これが分かるだけでも経営者として二重丸ですよ!
なにもしてないので、無傷で済みましたよね!

案外、ビジネス的な分析よりも、もっと手元の部分の状況把握が一番大事だったりするんですよね。

 

今回記事の「まとめ」の「マトメ」

以上、「【買い手必見】多角化戦略で最も重要な事!」を解説しました。

多角化戦略を実行する上で、自前で立ち上げるかM&A戦略をとるかにかかわらず、新規事業や売却案件の分析って必ずやりますよね。

ちょっと厳しいことを申し上げると、自社の分析も満足にできない経営者が、事業や企業の精度の高い分析ができますか?

私は、できないと思うんですよね。逆に言うと、自社の正確な把握ができる経営者は、自分が次に取るべきアクションを正確にわかってたりするんですね。

ですので、多角化戦略を考える前に、まずは自社を正確に把握することで、分析の練習をして欲しいんですね。

こういった部分をしっかりできていると、立ち上げるべき新規事業、買収すべき企業(買収ニーズ)も明確になってきますし、M&Aであれば、ビジネスデューデリジェンスPMIにも役立ってきます

ビジネスフレームワークには、その他にも

・クロスSWOT分析(これは多角化戦略で使って欲しい!)

・フォース分析

・PEST分析

・STP分析

・AIDMA、AISAS

 

などなど、たくさんありますが、最低でも3C、4P、SWOT、USPだけはやっておいてください。これだけでも自社状況の把握はかなりできます。

孫子でも書かれている通り、

「彼を知り己を知れば百戦殆からず」
(敵や味方の情勢をしっかり把握していれば、幾度戦っても敗れることはない)

 

これに尽きるのです!

今回のワンポイントアドバイスでは、「【買い手必見】多角化戦略で最も重要な事!」について解説しましたが、今後もM&A実務に即したネタをご紹介しますので、これからもご覧いただけますと幸いです。

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最後に、みなさまのM&Aが、安全にご成約されることを心よりお祈り申し上げます。

また次の記事でお会いしましょう!

それでは!

 


【監修者プロフィール】


合同会社アジュール総合研究所 / 代表社員
スモールM&Aアドバイザー/ M&A支援機関登録専門家
伊藤 圭一(いとう けいいち)

「小規模企業と個人事業の事業承継を助けたい!」そんな想いから、2019年7月に小規模事業専門のM&Aアドバイザー「スモールM&Aアドバイザー・合同会社アジュール総合研究所」を設立。
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