55歳で会社を退職されてから、学習塾のフランチャイズオーナーとして8年間経営された菊池正樹様は、バトンズを通じて事業譲渡を実施し、経営者としてのキャリアを終えられました。
神奈川県横浜市に校舎を構える学習塾は、高校受験を控える中学生が主体で、公立高校の入試合格に注力する地元密着型のスタイルで実績を上げてきました。塾長兼オーナーとしてご活動されてきた菊池様は、どのような経緯で本校の開業に至り、そして事業譲渡という決断を下したのか、詳しくお話を伺いました。
譲渡企業 | |
---|---|
スキーム | 事業譲渡 |
業種 | 学習塾 |
拠点 | 神奈川県 |
譲渡理由 | イグジット |
譲受企業 | |
---|---|
区分 | 法人 |
業種 | 会計・コンサルティング業 |
拠点 | 神奈川県 |
譲受理由 | 新規事業への参入 |
55歳で会社を辞め、一念発起して始めたフランチャイズの学習塾
某外資系企業に勤められていた菊池様は、55歳を迎えるタイミングで職務を終えられ、次なる活躍のステージを学習塾のオーナーに定めました。
フランチャイズという形式を選択したのは、これまで全く教育とは関係のない領域で働いてきたため、知名度がありサポートが充実していたブランドある加盟店の力を借りたいと思ったからとのこと。全面が窓張りの開放感あふれる物件をおさえ、一念発起して人生の新たなスタートを切られたのでした。
それから8年。歩み始めた塾オーナーの道は、苦労という言葉を超えた、修行の連続だったと言います。
「学習塾というビジネスモデルは、顧客が継続的に積み上がっていかない構造になっています。どんなに手厚く対応して、手塩にかけて育てても、受験が終われば大半の生徒が塾を卒業していきます。つまり、継続期間は最大で3年なんです。
それは同時に、中学1年生の入塾がうまくいかなければ、その後3年間にわたって影響が出続けるということを意味します。そのため、常に新規の塾生を獲得していく必要があるのですが、これが本当に難しくて。
フランチャイズというブランドはあれども、多くの学習塾が濫立する中で、圧倒的な差別化ポイントを生み出すことは簡単ではなく、試行錯誤の連続でした。」
他の塾との差別化、サービス向上を目指し、さまざまな施策に取り組んできた菊池様。オンライン講座を始めたり、設備投資をしてみたり、広告宣伝費を増やしてみたりなど、試行錯誤を繰り返してきたものの、成功方式と言えるようなものは得られませんでした。
一方で、店舗ビジネスである学習塾は、個人にとっては負担の大きい固定費を背負うことになります。なんとかコストを抑えて利益を捻出しなければならない中で、自己責任で対応していく日々は、疲労困憊だったと振り返ります。
そんな中、2020年にはコロナ禍が到来。先行きの見えない学習塾の運営は、ますます厳しくなるばかりで、このまま継続していけるのかという迷いが生じる中、とある契機が訪れたのでした。
新規獲得の状況から2年後の業績を先読みし、「事業譲渡」という選択肢へ
今から2年ほど前。新規入塾生の獲得合戦は、コロナ禍の影響も相まって厳しさを増しており、この年の中学1年生の入塾が必要生徒数に達しませんでした。そしてこのことは、業績に大きな影響をもたらす受験生(中学3年生)の数が、2年後に不足することを意味していました。
「最低でも10名の中学3年生がいないと経営が成り立たない計算なのですが、2年後はその水準に到達できないことが見えていました。一方、私も60歳を過ぎ、気力的にも体力的にも限界がきている中で、ここから盛り返してやろうという気持ちになれませんでした。」
そこで、フランチャイズ本部のスーパーバイザーに相談してみたところ、スモールM&Aという存在と、バトンズというM&Aマッチングサイトを紹介されたのだそう。
「事業譲渡を考え始めたのは、昨年の11月ごろ。バトンズに登録してからは、トントン拍子に話が進んでいきました。4月にバトンズに連絡をして、色々あって本格的にスタートしたのは6月だったんですが、最初の1ヶ月で30件以上の問い合わせがきました。
その中から、買い取り条件にフランチャイズ契約の解消が含まれていない候補者3名に絞り込んでいき、最終的には近隣に在住している会計コンサルの方にお譲りしました。
彼らは3人で事業を回していて、それぞれが経営、教育指導、マーケティングという得意分野をお持ちであり、塾も共同経営という形で運営されていくとのことでした。
私はこの8年間を通じて、たった独りで学習塾を切り盛りする難しさを痛感していました。そのため、共同経営という体制はリスクもやることも分担できて良いと感じ、彼らならお任せできると思いました。
また、冷やかしに近い、引き継ぐ意思が感じられないような問い合わせもある中で、近隣ということで何度も足を運んでくださったり、いつでも即レスで真摯に対応してくださったりしたところにも好感が持てたので、彼らに譲ることを決めました。」
こうして、菊池様の譲渡先探しは、本格始動から2ヶ月後には候補者の絞り込みを終え、さらに2ヶ月後には調印を終えるという、ご希望通りのスケジュールで完了したのでした。
人生観を変えた、個人事業主としての8年間。M&Aで勝ち取った前向きな再出発
そんな菊池様に、M&Aを無事に終えられた感想と、今の心境を最後にお伺いしました。
「ようやく学習塾の運営から手を離れることができて、安堵しています。実は、たとえ譲渡先が見つからなかったとしても、3月には塾を閉じようと思っていました。
ですが、こうして無事に引継ぎ先に出会えたことで、今塾に通っている生徒さんも塾を変えなくてよいですし、わずかですが売却益も手元に残すことができました。
もしかしたら、自分が塾経営を始める時にもM&Aという形でスタートしていたら、何か変わったのかもしれないと思うこともあります。それでも、個人事業主として一から塾経営に挑戦したことは後悔していません。なぜなら、ゼロベースで自ら事業を回してみて初めて気づいたこと、学んだことがたくさんあったからです。
実際に自分の手でやってみたからこそ、生半可な気持ちでは続けていけないということが分かりました。当時は、毎日毎日業績のことばかり考えていましたし、街を歩いていても潰れたお店が視界に飛び込んでくるようになっていました。それだけ、プレッシャーを感じて『苦しい、けれど抜け出せない』という気持ちを抱えながら日々を送っていました。
そんな私が、事業譲渡という選択肢を知り、M&Aという機会に恵まれて前向きに再出発を切ることができたので、関係者の皆さんには本当に感謝しています。
今後は、再就職という形で社会に関わろうと考えているのですが、これは以前の私だったら選ばなかった選択肢だと思っています。この8年を通じて、私の中の人生観そのものが変わったんです。次の会社でも、こうして働けることに感謝しながら、精一杯頑張っていきたいと思います。」
8年という経営人生に幕を下ろした菊池様は、これまで抱えていた重い肩の荷を下ろせたことが伝わってくるかのような、とても晴れやかな表情で締めくくってくださいました。
菊池様の今後の更なるご活躍を、バトンズ一同、心より応援しております!
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