新潟県上越市の手造り味噌屋として100年以上の歴史を持つ「山本味噌醸造場」。そこで4代目を務める山本幹雄様は、後継者不在に伴い事業承継を決断されました。山本様が、どんな想いをもって会社譲渡を選択するに至ったのか。譲渡先を決めるにあたり大切にしたこと、苦労点などについて、詳しくお伺いしてまいりました。
譲渡企業 | |
---|---|
社名 | 山本味噌醸造場 |
業種 | 食品(味噌) |
拠点 | 新潟県 |
譲渡理由 | 後継者不在 |
譲受企業 | |
---|---|
社名 | 株式会社PEAKS |
業種 | 食品関連事業 |
拠点 | 京都府 |
譲受理由 | 新規事業への参入 |
100年続く老舗味噌蔵元の4代目。30年先の未来へ事業を繋ぐべくM&Aを決断
日本でも有数の米所のひとつである新潟県は、味噌の産地としても有名な地域の一つ。中でも赤色で辛口の米味噌のひとつ「上越みそ」は根強いファンが多いことでも知られています。そんな上越地区で大正5年(1916年)に創業したのが、今回のM&Aの舞台となった老舗の味噌蔵元である山本味噌醸造場です。
看板商品である上越伝統の「浮き麹味噌」は地域系商品としても認定されており、地元の生活に深く根付きながら、長い年月をかけて成長・持続してきた事業といえます。
そんな輝かしい暖簾を山本様が受け継いだのは、弱冠23歳の頃。当時は、修行のために東京の味噌問屋にお勤めだったところから、お父様の急逝により若くして4代目の重責を背負うことになりました。
会社経営について右も左もわからない状態からのスタートだったという山本様ですが、それから30年近く、持ち前の勤勉さと誠実なお人柄をもって確実に事業を成長・継続させてきました。
そんな思い入れのある事業を、この度「会社譲渡」という大きな決断を下された山本様。まだ50歳という働きざかりの世代でもある山本様が、今のタイミングでM&Aを選択された理由については、今後を見据えて早めに決断した方がいいと考えてのご判断でした。
経営は家族、身内で行っており皆年をとり、自身も歳を重ねるうちに『いつ何が自分の身に起こるかわからない』と考えるようになりました。
確かに、今の年齢からすると少し早い決断なのかもしれません。ただ、確実に次世代に暖簾をつなげるためには、何かが起こってから動き出すのではなく、早めから入念な準備をしておきたいと思い、決断をしました。
大正時代から続く山本味噌は、本当に長いあいだ上越市民の生活に根付き、いろんな側面で貢献してきたと思っています。なので、30年後も残っていられるように体制を整えるのが、自分の使命だとも感じたんです。」
これまで家族経営で事業を存続させてきた山本味噌。現代の急速な市場変化に対応しながらこれからも事業を存続・成長させていくためには、外部から風を吹き込むことも必要だという考えもあったそうです。
新しい技術を積極的に取り入れながら、新商品の開発、新たな販路開拓をしていくためにも、山本様はM&Aで新たな経営者を迎え入れることによる、現体制からの脱却を計ります。
重要視したのは「地域を大切にしてくれるか」最終的には人柄に惹かれて決断
先祖代々、100年ものあいだ語り継いできた伝統ある味噌作り。その事業を譲る相手に、山本様はどのような方を望んだのでしょうか。承継先を選ぶにあたって大切にした条件や基準についてお伺いすると、地元やお客様に対する想いについてお話しくださいました。
「何よりも、これまで山本味噌を支えてくれてきた地元の皆さんや、山本味噌を買い続けてくれているお客さんを大事にしてくれるかどうかに重きを置いていました。
もちろん、積極的に他エリアに進出して販路を開拓していってくれることも期待していましたが、本拠地はこの上越市に置いたまま事業運営を行ってくれるかどうかは、必ず聞いていました。」
そんな山本様が最終的に選ばれたのは、京都にあるフードテクノロジー(発酵食品)関連のスタートアップ企業「株式会社PEAKS」の代表を務める金崎努様。金崎様を選ばれた理由については、事業に対する熱意を強く感じられたからだそうです。
「金崎さんはとにかく真剣で、情熱的だったんです。リモート面談をする前から、お忍びでうちのお店にも来てくださって、実際に商品を買ってくれたりもして。当時はまだコロナ禍にあったので、県またぎの移動は決して簡単ではなかったと思うのですが、京都から足繁く通ってくださったのが非常に印象的でした。
他の候補者の方々が 『コロナだから新潟まで行けないのは当たり前』、『何でもメールで済ますのが当たり前』という雰囲気の中、対面でのコミュニケーションを大切にしてくださり、相互理解に努めてくださいました。その姿を見て、この方なら安心してお任せできると思ったんです。」
終わってみれば、トップ面談の数は7〜8件にものぼったそうですが、経営者としての厳しさや正確さと、人間味あふれる柔らかさを併せ持っていたという金崎様が「一番心を惹かれた」と山本様は言います。
こうして理想の後継者に出会い、無事に会社譲渡を終えられた山本様。その後も山本味噌醸造場には残られるそうで、今後は「金崎様のやりたいことを全力で応援・サポートしたい。今までと変わらず、地元に根ざして地域に貢献していきたいです」と笑顔でお話しいただきました。
人生初となるM&A。最も苦労したのは、譲渡のために必要だった株式会社化
これまで味噌造り一筋で老舗の看板を守ってきた山本様にとって、今回のM&Aは人生初のご経験。一連のプロセスを終えてみて、印象に残っていることや苦労されたことについてお伺いすると、老舗企業ならではの苦労点があったと言います。
「うちはもともと合資会社だったのですが、会社譲渡をするにあたり株式会社に変更する必要がありました。ところが、これが思っていたよりも大変だったんです。
まずは、司法書士に依頼して段取りを組んでもらった後、全ての取引先から承認を得て、株主にも連絡して、法務局にも通って。有限会社ならもっとシンプルだったんですが、株式会社になるとこんなに労力がかかるとは予想していませんでした。
しかも、通常の業務をやりながらそれらの手続きを処理していかなければならなかったので、それが一番大変でしたかね。」
予想外の苦労に見舞われた山本様でしたが、M&Aそのものについては、思ったよりも簡単だったという印象をもったとも言います。
「実際にM&Aに取り組んでみるまでは、もっと濃密に打ち合わせを重ねていくものだと思っていました。バトンズさんの所在地である東京にも何度か出向くことを想定していたのですが、意外とメールやzoomで済ませられることが多くて。
実際、メールの方がこれまでのやり取りが残るので、後で確認するのが楽だったり安心だったりしましたし、オンラインならではの良さも感じるようになり、最後の方はリアルとネットを使い分けて進めていました。」
バトンズに登録後、M&A自体はスムーズに進み、売り手様として歴史ある事業の承継に成功された山本様。最後に、今後M&Aを考えられている売り手様に向けてアドバイスをいただきました。
「私が言うのもおこがましいのですが、会社譲渡を迷っているようであれば、まずは試しに登録してみた方がよいと思います。時間が経てば経つほどマッチングの可能性は低くなっていきますし、チャンスを逃してしまうかもしれませんので。
二の足を踏んでしまう気持ちも理解できるのですが、『思い立ったが吉日』というように、一気に進めてしまった方が道は開けると思います。とくに、バトンズさんは色々と丁寧にサポートいただけるので、深く考えすぎずにまずは検討してみるのがいいんじゃないでしょうか。」
これまで続けてきた歴史ある事業を、次世代に紡いだ山本様。新たな経営者のもと、山本味噌醸造場の新たな旅が始まります。
山本様と山本味噌醸造場の今後の更なるご活躍を、バトンズ一同、心より応援いたしております!
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