DDSは、経営状況が悪化したとき、資金繰りを改善するための手段の1つです。DESという類似ワードが存在することから、意味がわかりづらいと感じている方も多いのではないでしょうか。
今回はDDSとは何かがわかるように、意味や目的、メリット、DESとの違いなどについて解説します。手順や注意点にも触れているため、DDSの実施を検討するときにあわせて参考にしてみてください。
DDSとは
早速、DDSの意味や目的について解説します。
DDSの意味
DDSとは、Debt Debt Swapの略語であり、読み方はデット・デット・スワップです。
Debtは債務、Swapは交換という意味があるため、DDSは債務の種類を交換するという意味を持ちます。
具体的には、借入金を劣後ローンに交換します。劣後ローンとは、返済の優先順位が低い債務です。債権者にとっては、企業が債務超過となったときに返済されない可能性が高いことから、株主資本に近い金額として扱われます。
DDSの目的
DDSを実施しても、債務者は最終的に返済しなければなりません。なぜ、DDSによって借入金を劣後ローンに交換するのでしょうか。
劣後ローンであれば、返済期間に猶予が生まれることが大きな理由です。会社を立て直すための時間を確保できます。財務状態を改善できれば、事業を継続することも不可能ではありません。
したがって、DDSは会社再建の足がかりとして実施されるのが一般的です。
実際に埼玉りそな銀行では、取引先2社(金属処理加工業と木材加工・卸売業)が再生計画を実行していけるようにDDSを行ったといいます。
このようにDDSは、銀行が企業の事業再生を主導するときの手段としても採用されます。
DDSのメリット
ここまでDDSの概要をご説明しました。引き続きDDSの実施を判断するための材料として、主なメリットについて解説します。
新規融資が受けられる
資産より負債が上回っている状況では、融資を受けても返済できないリスクが高く、新規融資は困難です。
その点、DDSによって負債の一部をみなし資本にすることで、バランスシート(B/S)のイメージ上で負債を減らし、資産が負債を上回っているとみなしてもらえます。
銀行から債権者区分(返済能力の高さを示す区分)を正常先に変更してもらえる可能性があり、新規融資を受けやすくなるでしょう。
金利が安くなる
DDSは新規融資が受けやすくなるだけでなく、従前よりもよい条件で融資を受けやすくなる可能性があります。通常、再生局面の企業が借入するときの金利は、一般的な企業よりも高く設定されるケースが多いです。
その点、DDSが行われたときの借入金の金利は1%以下になるのが一般的であり、通常よりも金利が安くなる可能性があります。
キャッシュフローを改善させやすくなるため、落ち込んだ業績も回復しやすくなるでしょう。
DDSとDESとの違い
DDSと一文字だけアルファベットが異なるDESという言葉があり、違いが気になっている方もいるでしょう。DESの意味をおさらいしてDDSとの違いを解説します。
DESの意味
DESとは、Debt Equity Swapの略であり、読み方はデット・エクイティ・スワップです。
Equityは株式という意味であり、DESは債務を株式と交換するという意味を持ち、債務の株式化といわれています。
たとえば金融機関が、DESによって経営不振や過剰債務などに陥る企業に融資を現物出資する形で株式を取得して、債務超過や有利子負債を解消させます。債権者が株主になることで、経営に対する指導力を獲得できるのも特徴です。
大きな違いは負債が減るかどうか
DDSが債務と債務を交換するのに対して、DESは債務と株式を交換します。
DDSは債務を劣後ローンなどに変えるだけであることから、財務諸表の内容は変わりません。会計上の処理も変わるわけではなく負債が残ります。
その一方でDESは借入金が目減りするため、負債が減少します。借入金が目減りした分だけ元金と支払利息の返済もなくなり、収益とキャッシュフローが改善される仕組みです。
負債が減少して純資産が増加することにより、自己資本比率が向上して財務体質の安全性も高まります。ただ、法人住民税の均等割額の負担が増えたり、中小企業としての税制特例が受けられなくなったりする恐れがあります。
以上の点をふまえるとDDSとDESの大きな違いは、負債が減るかどうかだといえるでしょう。
対象企業や手続きの難易度も違う
DESは金融機関が株式を保有するため、主に大企業に適用されることが多いです。その一方でDDSは中小企業に適用されやすくなっています。
DESは新株発行などの法的手続きが必要です。手続き面ではDDSのほうが実施しやすいといえるでしょう。
DDSとDESの比較表
DDSとDESの違いをまとめた比較表は下記の通りです。
比較項目 | DDS | DES |
---|---|---|
名称 | デット・デット・スワップ | デット・エクイティ・スワップ |
交換の対象 | 債務と債務 | 債務と株式 |
財務体質の変化 | 負債が残る | 純資産が増加 |
主な適用企業 | 中小企業 | 大企業 |
手続き | 複雑 | 簡単 |
このようにDDSとDESにはさまざま違いがあります。違いを押さえて会社の実情に相応しい手段を検討することが大切です。
DDSの一般的な手順
DDSとDESの違いがわかり、DDSの実施を検討し始めた方もいるのではないでしょうか。
実施のイメージを湧かせるために一般的な手順も把握しておきましょう。
DDSの手順は下記の通りです。
【ステップ1:会計の専門家に相談】
まずは会計の専門家にDDSを実施する妥当性について相談しましょう。相談先の例としては顧問税理士や公認会計士などが挙げられます。
会計の専門家はDDSについて専門的な見解を持っているため、意味やメリット、デメリット、DESとの違いなど、不明点があれば解消しておきましょう。
【ステップ2:銀行などの金融機関にDDSを申請する】
DDSを実施するには、金融機関などの債権者から同意を得なければなりません。借入をしている金融機関に出向いてDDSを申請します。
【ステップ3:審査を実施してもらう】
申し込み後に提示された必要書類を作成して、金融機関に審査してもらいます。決算書や事業計画書などをもとに、金融機関が定める財務指標の水準に到達しているか、チェックされます。
【ステップ4:債務の種類を変更してもらう】
審査に通過すると、借入金が劣後ローンなどに変更してもらえます。債務の種類を変更してもらうためには、合理的な事業計画の作成と粘り強い交渉が必要となる点については理解しておきましょう。
DDSの注意点
DDSを実施するうえでいくつか気をつけなければならないことがあります。押さえておくべき注意点について解説します。
特約事項が取り決められることがある
DDSを実施しても企業再生がうまくいくとは限りません。失敗すれば貸し手はお金を回収できない恐れがあります。
そのため、DDSでは特約事項が設けられ、資金繰り表の提出や赤字決算の回避などが求められることがあります。達成できない場合は、借入金の即時一括返済を要求されることもあるようです。
個人保証や個人資産が求められることがある
貸し手は債務不履行の事態を避けるために、経営者に個人保証を求めることがあります。応じた場合、経営者個人が企業の代わりに負債を返済しなければなりません。保証人の責任として個人資産の提供を求められることもあります。
そのほか、経営責任が問われて経営者の退任が求められるリスクもあります。DDSには経営者に大きな負担がかかりやすい点は把握しておきましょう。
参考:経営者保証(中小企業庁)
まとめ
今回は、DDSの意味や目的、メリット、手続きの流れなどを中心に解説しました。
DDSは、借入金を劣後ローンなどの債務に変更する方法です。実施によって、債務の返済を遅らせたり、新たな融資を受けたりできる可能性があります。そのため、企業が自社を再建したい場合や、金融機関が企業再生を主導する場合などに用いられるのが一般的です。
類似用語のDESは、債務を劣後ローンではなく株式に交換する手法です。DDSと違って負債を減少させられるため、純資産を増やせます。ただし、税金が増えたり、税制特例が受けられなくなったりする恐れがあります。
DDSとDESはメリット・デメリットが異なるため、顧問税理士や公認会計士に相談して、自社に適した方法を選んで実施することが重要です。実施を決めた場合は金融機関に申請して審査を受けなければなりません。合理的な事業計画を作成したうえで、粘り強く交渉をしましょう。
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