ノウハウ

2019.01.30

DESは財務改善だけじゃない!中小企業M&Aでも役立つスキームかも

▼会社の財政状態を立て直す方法の1つとして、DESがあります。以下ではDESとは何か、DESのメリット・デメリット、DESの実施方法について、全部の株式について譲渡制限の定めを設けている中小企業を想定して解説していきます。最後までお読み頂けますと幸いです。

 

DESとは

 

DESという言葉をご存知でしょうか?Debt(デット=企業の債務のことです。)Equity(エクイティ=企業の資本のことです。) Swap(スワップ=交換することです。)の略です。

日本語でそのまま訳すと、企業の負債と資本を交換することになります。

簡単な設例を考えてみましょう。DES実行前に、

総資産が10億円、負債が12億円の会社があったとします。この会社は2億円の債務超過ということになります。

会社が金融機関から借入をしようとすると、金融機関は会社の試算表を見せてくれということを言ってきます。債務超過の会社でも借入は可能ですが、会社の返済能力が十分であるという判断はしてくれないので、会社が望む借入条件で借入をすることは難しいことが想定されます。

ここで、DESを実行して、負債3億円と資本金3億円を交換したとします。

すると、資産が10億円、負債が9億円と、1億円の資産超過の会社になります。つまり債務超過が解消されるのです。金融機関からの借入に関して、債務超過が解消されれば、債務超過である場合よりも有利に交渉できることでしょう。

債務者である会社にとっていいことずくめのように見えるDESですが、デメリットもあります。次の章では債務者にとってのDESのメリット、デメリットについて解説します。

 

DESのメリット、デメリット

 

2-1 メリット

以下ではメリットについて解説します。

・有利子負債の削減により財務内容の改善が図られる

前の章の設例で解説した通りです。

・資金繰り・キャッシュ・フローが改善する

借入金があると、返済スケジュールに従い、元金と利息を金融機関に支払う必要があります。債務超過の会社であれば、元金と利息支払いの負担が重く、資金繰りやキャッシュ・フローの悪化の要因になっていたりします。DESの実行により、借入金が減少すれば、資金繰りやキャッシュ・フローが改善します。

・デフォルトリスクが軽減される

デフォルトとは債務不履行のことを言います。DESの実行により、借入金が減少すれば、金融機関への毎月の返済金額が減少するはずなので、会社は支払いが楽になり、債務不履行のリスクが減少することになります。会社への資金提供者としては、金融機関以外に株主がいます。株主へは配当を支払う必要がありますが、会社法により規定され、算定することができる分配可能額の範囲内でしか配当を支払うことができません。分配可能額は会社の純資産が毀損しないような金額になるため、デフォルトリスクが軽減されます。

・債務者区分の上位遷移が可能である

金融機関は債務者を債務者の財務内容等により格付けしています。格付けが上位になればなるほど、融資を受けやすく、支払利息の利率も下がります。DES実行前と比較してDES実行後は会社の財務内容がよくなるので、債務者区分の順位が上がる可能性があります。

・債務消滅益が発生する場合、それに伴い損失処理を行うことができる

債務消滅益が発生することにより、当期純利益確保の余裕ができます。含み損のある資産を売却する、使ってない固定資産を除却するといったことが考えられます。

 

2-2 デメリット

デメリットは以下のようなものが挙げられます。

・債権者による経営への参加

DES実施に伴い、債権者が会社の株式を持つことになり、会社の最高意思決定機関である株主総会で議決権を持つことになります。そのため、これまでの債務者・債権者という関係でなく、会社経営に口を出すこともできるため、思うように経営ができなくなる可能性があります。

・配当負担の増加

新しく株式を発行して債権者に割り当てるわけですので、配当負担が増えます。

・債務消滅益の発生による課税のリスク

先ほどと同じで、資産が10億円、負債が12億円の会社があったとします。ここで、DESを実行しますが、負債2億円を株式と交換するとき、この負債2億円のうちの回収可能額が1億円だったとします。

この時に、債務者である会社は税務上、以下のような仕訳を切ることになります。

負債 2億円 / 資本金   1億円

/ 債務消滅益 1億円

この債務消滅益は税務上の益金となり、法人税が課税されることになります。

 

DES実行のための手続き

 

DESを実行するためには以下のような手続を取ります。

・債務を株式に転換することについての債務者と債権者の合意

・債務者の募集株式発行(第三者割当増資)についての株主総会決議

・債権者の会社法203条3項に規定する書面による申込み

・目的物の給付

・募集株式発行の効力発生

・変更登記

以下でそれぞれの手続の詳細について説明していきます。

 

3-1 債務を株式に転換することについての債務者と債権者の合意

DES実行にあたって最初の手続になります。DESを実行しなければ、債権者は債務者から現金を回収することができます。DES実行になれば、債権者は、債務者が中小企業であれば簡単に譲渡できない株式を現金の代わりに入手することになるため、慎重になるのが通常です。債務者は受け渡す株式を配当優先株式にするなど、債権者にメリットを十分説明して、何とか合意を得なければなりません。

 

3-2 債務者の募集株式発行(第三者割当増資)についての株主総会決議

株式会社が募集株式を発行(株式の発行または自己株式の処分を指します。)する場合、以下の事項(募集事項)を決定します(会社法199条1項)。

・募集株式の数・種類(種類株式発行会社の場合)

発行すべき募集株式の数は、発行可能株式総数は、発行可能株式総数(会社法113条1項)の範囲内であることが必要です。

・募集株式の払込金額またはその算定方法

募集株式は公正な価額(時価)で発行するのが原則です。株式引受人に「特に有利な金額」で募集株式を発行する場合には、取締役は、株主総会において、当該払込金額でその者の募集をすることを必要とする理由を説明しなければなりません(会社法199条3項)。

ここで、「特に有利な金額」について、一般的には、公正な払込金額(通常は時価)を基準として、1割程度低くても特に有利とはいえないと言われています。

・現物出資に関する事項

金銭以外の財産を出資の目的とする場合、その旨、当該財産の内容およびその価額を決定する必要があります(会社法199条1項3号)。DESでは、債権者が、債務者に対する債権を出資の目的とすることにより当該債務者の株式を取得することになります。

・払込みまたは給付の期日(期間)

募集株式と引き換えにする金銭の払込みまたは現物出資の対象となる財産を給付すべき期日または期間を定める必要があります(会社法199条1項4号)。

・増加する資本金および資本準備金に関する事項

募集株式の発行に際して株式(新株)を発行する場合、増加する資本金および資本準備金に関する事項を定める必要があります(会社法199条1項5号)

 

そして、これらの事項に関して、株主総会の特別決議により決定します(会社法199条2項、309条2項5号)。株式引受人に「有利な金額」で発行する場合、取締役は、有利な金額でその者を募集する理由を株主総会で説明する必要があります。

 

3-3 債権者の会社法203条3項に規定する書面による申込み

株式の申込みは、会社が株式引受人に対して法定の事項を通知し(会社法203条1項)、株式引受人が氏名または名称および住所、引き受けようとする募集株式の数を記載した書面を発行会社に交付する形で行います(会社法203条2項)。

会社は、株式引受人が提出した書面に基づき募集株式の割当先、割り当てる株式数を決定します(会社法204条1項)。そして、取締役会の決議により、割当先、割り当てる株式数を決定する必要があります(会社法204条2項)。

 

3-4 目的物の給付

株式引受人は、払込期日または払込期間内に、引き受けた株式について、払込金額の全額の払込みを行います(会社法208条1項)。

DESでは、債権者は、給付期日(期間を定めた場合、期間の末日)までに、債務者に対して、債務者に対する債権の給付を行う必要があります。債権者と債務者の間で、債権譲渡契約または確認書、合意書を締結し、債権証書等の書類の交付を行います。

 

3-5 募集株式の効力発生

募集株式発行は、払込みまたは給付期日から、現実に払込み・給付のあった募集株式につき効力を生じます(会社法209条)。

 

3-6 変更登記

募集株式発行により変更が生じる発行済株式総数、種類、種類ごとの数、資本金等の額については、本店所在地において2週間以内に変更登記を行う必要があります(会社法915条1項、911条3項5号・9号)。

 

中小企業M&AにおけるDESスキーム

 

最後にM&Aにおいて、DESを利用するケースをご紹介します。

中小企業においては、社長=オーナーで、唯一のつまり100%株主であることが多くあります。また、社長が運転資金などとして個人の私財を投じていたり、役員報酬を多めに設定してしまい、報酬を全額とれなかったりして、社長からの役員借入金があることがあります。

このような会社のM&Aを行うときに、譲渡対価の一部を役員借入金の返済として支払うことがあります。債務の返済であれば税金がかからないというメリットがあるからです。しかし、この役員借入金が多額になると、会社にある現預金では返済しきれないこともあります。このようなときに、DESで資本に組み入れてから、株式譲渡を行うというスキームも考えられます。

このように、DESの手続きとメリット・デメリットさえ覚えておけば、役に立つこともあるかもしれないの、です。